ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

おひとりさま時代の死に方

井上治代 講談社 2025.8.5
読書日:2025.12.30

無縁社会になり、死の際には家族や親戚には頼れない状況のなか、どうすれば無事に死後の処理ができるのかを述べた本。

わしは、つい数ヶ月前に、実家の墓じまいを行って、祖父母と両親の遺骨を永代供養の寺に預けたばかりである。

わしが死んだらお墓を守る者もいなくなるので、どこかでこのような決断をしなくてはいけなかったのだが、なかなか決断ができなかった。しかし、不幸中の幸いというか、地元でかなり大きな地震があって墓が崩れるという事件があり、墓を再建するよりも墓じまいをするという決断をすることになった次第である。

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さて、先祖のお墓のことは処分したとして、自分が死んだときの場合はどうすればいいのか、ちょっと気になっていた。妻はカトリックに入信していて、亡くなったら教会にお願いするという。しかし、わしはキリスト者ではないし、キリスト教の信仰も絶対に無理だ。何しろイエスが神の子だと聞いただけで、そんなわけないでしょう、と笑ってしまうタイプだ。(なぜかキリスト教について、わしのほうが妻より詳しい(笑))。

自分用の墓を作るのもありえなくはないが、わしはそもそもそういう物を作ることに興味を覚えない。しかし、亡くなったあと遺骨について何らかの処分をしなくてはいけないのは確かだ。

でも、どうやって? この本に書かれているように、死んでから自分でお墓まで歩いていくわけにはいかないのだ。というわけで、死ぬ前に、しかも認知症で判断力がなくなる前に何らかの処理をしておかなくてはいけないのである。

では、死んだら何をしなければいけないのだろう、そしてどんな方法があるのだろう。

まず自分を法律的に死んだ状態にしなければいけないということがある。つまり役所への届け出だ。

これが、じつは、法律の縛りで大変難しいということが分かってびっくりした。日本の戸籍に関する法律は明治以来、家を中心に行うことになっていて、親戚なら簡単にできることでも、赤の他人が行うには非常に制限があるのだ。

戸籍法第87条では、届出義務のあるのは「同居の親族、家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人」だけだそうで、一人住まい、かつ持ち家だった場合は届け出る人がいなくなる。しかし近年、第2項が加わって、届出ができる人に「同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者」が加わったという。

後見人、保佐人、補助人は裁判所が決めるので、本人の意志が反映されない。一方、任意後見人(任意後見受任者も同じ。契約者が認知症になる前の呼び名)には自分の意志を反映させることができるので、実質的にこの方法が取られることになる。つまり、親戚でない赤の他人が役所への届け人になるためには、後見人を選んでおいて、死後のことをお願いする必要がある。そのためにはきちんとした契約書を作成しておく必要がある。

ただし、いつ契約するかは微妙だ。

弁護士と任意後見契約を結ぶと、後見契約と別に委任契約を結ぶ場合が多いという。この委任契約では、毎月依頼者の様子を確認するという内容が盛り込まれる。そして認知症などで判断力がなくなったら後見契約に移行するというタイプだ。この場合、委任契約で毎月数万円を払う必要があるという。死ぬまでに数10年あると、1000万円程度支払う場合もあるようだ。余裕がある人は別にして、いつ契約を結ぶかは、慎重に考えなければいけないということになる。

届出人に関しては、上記のように、大家さん(家屋管理人)が借家人の死亡届を出すことが可能だ。これを拡大解釈して、亡くなった私立病院の院長が届けることがあるそうだ。また介護老人ホームの施設長が届け出ることもある。

なお、公設所(公立病院や警察など)の長には届出義務があるので、他に届出人がいない場合には、届けてくれるそうだ。

その他、葬儀などの祭事や埋葬などについても委任契約をすることができる。ちなみに、委任契約をしないで親族以外が葬儀などの祭事を執り行うことはできないので、ゲイのカップルなどでは事前に契約を済ませておくことが必要だ。

ところが、せっかく委任契約を結んでも、ひとりで亡くなったあと、亡くなった方の身元確認ができない場合があるのだそうだ。これも親戚なら、ひと目見て本人ですと言えばすむが、普段付き合いのある人でも第三者の証言では確認したことにならないのだそうだ。もし契約者本人と確認できなければ、委任契約の実行のしようがなくなる。たとえば、葬儀や埋葬ができなくなる。

そういう場合、亡くなった人の歯科医を探し出して、歯型で本人を確認する場合があるそうだ。したがって、こういう場合のために、後見人に歯科医などのかかりつけ医を事前に知らせておくなど、対策が必要である。

つまり、死後、自分の希望通りに処理してもらうためには、事前にいろいろ準備が必要だということだ。一人で死ぬのも、なかなか大変だなあ。

なお、遺骨に関してだが、別に埋葬する義務はないのだそうだ。節度を持ってすればどのような処理でもオーケーらしい。ただし、勝手に何でもやると死体遺棄になる可能性がある。散骨する場合でも、遺骨の形のままでは死体遺棄に問われる可能性があるので、一般的には粉砕処理するらしい。もちろん、勝手にそのへんに捨てると死体遺棄になる可能性がある。

わしは自分の遺骨を捨てられてもべつに気にしないけど、後々問題にならないように、やはり埋葬についても事前にきちんと決めておいたほうが良さそうだ。散骨や樹木葬もいいけど、気分的には宇宙葬の方がいいかしら。

なお、後見人については弁護士などの士業だけでなく、著者がやっているエンディングセンターのようなNPO法人と契約する方法もある。こっちのほうがいいような気がするなあ。弁護士の場合、いろいろ高くつきそうだ。

ところで、亡くなるまでにもいろいろ問題がある。亡くなるまで大変なのが、病院に入院する際の連帯保証人をどうするかという問題だ。じつは法律的には、入院の際の連帯保証人は必要ないのだそうだ。しかし実際には保証人を求められる。そこで病院では「極度額(限度額)」を定めることが義務付けられており、連帯保証人になってもそれ以上求められることはないのだそうだ。

今後、おひとりさまの死がますます増えていくだろう。そうすると、それに対応して法律も変わっていく可能性が高い。この辺の情報のアップデートも必要になるだろう。というか、そういうサービスがたくさん出てくるのではないか。

死んだらどうするかをきちんと決めると、心配がなくなり、気分が晴れて、その後の人生が楽になるのだそうだ。なるほど。わしも実家の墓の処理が終わるまでは悶々としてしまったからなあ。

では、みなさん、よい死を。

★★★★☆

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