グレッグ・イーガン「順列都市」の<塵理論>について

塵理論グレッグ・イーガン順列都市に出てくる、<コピー>たちが永遠の命を得るための要となる理論です。なのに、なんだかいまいちよく分かりません。それで、頭の中に???が飛び交う状態で読み続けることになり、読んでいる間は隔靴掻痒な感じです。他の人も同じらしく、WEB上には地理理論に関する、結構な数の解説のようなものが載っています。(検索してみてください)

ここでは、それらの意見を参考にしつつも、自分なりの言葉で、たぶんこういうことが言いたいんじゃないか、ということをまとめました。

塵理論の塵とは、十分な数の数列のことのようです。コンピュータによるデジタル計算結果は、なんらかの数字の数列として出てきます。したがって、十分な数の乱数列があれば、計算結果と同じ数列は、その乱数列のどこかに存在するはずです。

例えば、シミュレーションを行うと、1ステップずつ行いますが、ステップごとにその計算結果は、乱数列のどこかに存在します。

逆に言うと、この乱数列は、ステップがばらばらの計算結果が、無秩序に並んでいる状態と言えます。

ここで、意識の流れを1ステップ1秒で計算するとします。普通は、1秒目、2秒目、と順番に計算すれば、つまり1ステップごとに計算すれば意識の流れが計算できるでしょう。

しかし、もしも、順番通りに計算せず、5秒目、1秒目、3秒目、とランダムな順序で計算しても、意識の流れが、コンピューターの中の人間にとっては、主観的になんの変化もないとしたらどうでしょうか。

もしそうなら、十分に大きな乱数列は、すでに無限ステップ分の計算結果を、順不同に並べたものかもしれないのです。すでに無限ステップ分の計算結果が出ているとしたら、それは無限時間にいたる意識の流れを表し、つまりここに不死が実現された、というわけです。

ここからが微妙で、もしかしたら間違っているのかもしれませんが、次のようなことなのだと思います。

ここで、セル・オートマトンのソフトウェアがあって、その計算結果を得るのに、この乱数列を参照するようにしてあるとします。すると、このソフトを走らせた瞬間に、無限ステップの計算が完了したのと同じである、と言えないでしょうか。(すでに全ステップの計算結果がここにあるから)。

リアルな存在のマリアやポールは、ソフトを走らせた瞬間にコンピュータの外に実際に存在しています。一方、そのソフトの中にいる<コピー>のマリアたちは、そのソフトを走らせた一瞬の中に、無限の時間を実感しているのではないでしょうか?

実時間での一瞬の中に無限の時間を閉じ込める。これがこの作品で不死を与えるパラドックスというか、アイディアの飛躍なのではないかという気がします。

もちろん、そのセル・オートマトンが自己増幅すると設定されていて、つまりメモリと計算能力が自走的に増えるような設定になっていてもいっこうに構いません。その無限大の計算量になったその計算結果も、この乱数列の中にあると考えられるのです。

したがって、それがいったん<発進>さえすれば、その内部では無限の計算力を使って、何でもありの世界になります。(ただしリアルとの世界とはまったく隔絶された、別世界、別宇宙となります)。

本当でしょうか? 

<コピー>となってその世界に入ってみないと、きっと実感できないでしょうね。

 

(補足)
ここで、セル・オートマトンを計算に使っていることが、ひとつのミソになっているように思います。つまり、微分方程式を使ったシミュレーションは通常、端数を丸める作業をし、誤差が累積していくので、ステップの順序を変えることができません。ステップ1、2、3と順番に行うよりほかないのです。

しかし、セル・オートマトンの計算にはそういう端数を丸める作業がなく、ある初期条件を設定すると、いつでも必ず同じ結果が得られます。つまり可能なら(どうやるのかは知りませんが)、例えばいきなり1000ステップ目を計算してもよいことになります。つまりどんな順番で計算してもいいのです。


順列都市〔上〕


順列都市〔下〕

 

 

「宇宙戦艦ヤマト」の真実 (祥伝社新書)

豊田有恒 祥伝社 2017年10月1日
読書日:2019年1月22日

別の作品を探していて、なんとなく気になって読んだ本。

そう言えば、豊田在恒はヤマトの設定に関わっていたなあ、と思い出しました。ちなみに、ヤマトは好きですが、TV版の一番最初のやつだけ。当時、TV放送を毎回楽しみに観てました。(つまりわしはそういう世代です)

さらば宇宙戦艦ヤマト」を映画館で観たとき、最後の特攻シーンで、映画館のみんなが涙を流しながら、ささきいさおと一緒に歌うのを見て、ドン引きしたことがあります。そんなわけで付いていけず、「さらば」以降はなかったことにしております。

半分、豊田在恒のアニメとのかかわりの話になっており、この人がアニメから仕事を始めたことを初めて知りました。しかも、高視聴率をとる脚本家だったのですね。鉄腕アトムの脚本から始めたので、20代後半にはアニメ脚本家の中で大ベテランになっていたとか。最初からいたのでは、そうなりますね。

その後、SF作家家業の方が忙しくなったけど、プロデューサーの西崎義展に口説かれて、宇宙SFの原案の仕事をすることになる。

西崎は人たらし的な人物で、懲りて何度も関係を断とうとしてきたが、アニメ好きでもあるから、結局、完結編まで付き合うことになる。

西崎のよくないところは、クリエーターを大切にしないところだという。まともなギャラも払わずに、こき使ったので、誰も付いていかなくなった。ヤマトの「おおよそ」の原作者である松本霊士氏すら、まともなギャラをもらっていなかった。(自分はヨットを買ったり、大変なぜいたくをして、お金を食いつぶした)。

西崎はクリエーターの素質が全くなく、自身が前面に出た作品はことごとく外したという。クリエーターに寄生して生きてきたのだという。クリエーターはどこにでもいると考えていたふしがあるという。

最後はダイビングで水死したらしいが、当時は車いすだったらしいので、相当不可解な死になっている。

それにしても豊田在恒、ヤマトの反対番組の「サルの軍団」も手伝っていて、ビデオがなかったから、ヤマトではなくサルの軍団の方を見ていたそうだ。あれま。じつは検索していたのは、豊田在恒の「モンゴルの残光」です。歴史改変物の古典で傑作とか。読んでみようと思っているので、そのうち感想を書くでしょう。

ご承知のようにヤマトはまだ続いています。ブランドの力はすごいねえ。

★★★★★

 


「宇宙戦艦ヤマト」の真実――いかに誕生し、進化したか (祥伝社新書)

順列都市(上下)

1999 早川書房 グレッグ イーガン, Greg Egan, 山岸 真
読書日:2019年1月21日

 *****ネタバレあり。注意*****

2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)が起こり、AIが人間を越える知性を持つとか、人間の意識を機械にアップロードし、肉体を捨ててコンピューター上で人間が生きるようになると言われている。もしも人間の意識をアップロードできれば、それは事実上、人間は不死となる。

人間が不死の存在となり、機械の中で過ごすとはどういうことなのだろうか。この状況を想像し、実感するのは今の科学をもってしても、説明が難しい。このような問題を考えるには、想像力豊かな作家の出番となる。SF作家は、これまでも、通常では理解できない感覚を説得力ある物語で読者に認識させてきた。

グレッグ・イーガンは本作でリアルなコンピューター内で暮らす人間たちを描写している。この作品を発表したのは実に1994年であり、いまから30以上年も前のことである。驚くべき感性である。

ただし、この作品はそういうコンピューター人間の話を描くことが目的ではなく、それは単に話の端緒に過ぎない。実際には、無限ともいえる数学空間を設定し、そこに移り住むことで、宇宙の寿命すら越える「永遠」の命を得ようとする話である。そして意外な結末の話でもある。

時代はくしくも、シンギュラリティを唱えたカーツワイルが設定した2045年ごろになっている。話の初めでは、すでにコンピュータへのアップロード技術は完了しており、大金持ちたちは死を乗り越えて、<コピー>としてコンピュータの世界にいる。この計算には莫大な計算力が必要であるから、金持ちしかこの技術の恩恵にあずかることはできない。あまり金持ちでない人間は、クラウド上の安い計算力を求めて世界中をさ迷っている。

ここでの<コピー>たちの描写が素晴らしい。その時代でも、技術的な限界により、人間の意識をシミュレーションするのに、人間と同じ実時間では再現できない。<コピー>の時間は、実時間の17分の1しかない。なので、コンピューターの外の人間とコミュニケーションするときには大変だ。まるで火星にいる人間とやり取りするような間の抜けたものになる。

<コピー>の話は17倍の時間がかかって、外の人間に伝えられる。いっぽう、外の人間の言葉は、17倍に引き伸ばされて、再生される。こうしたやり取りの中でも、<コピー>たちはなんとか自分の財産を増やし、どんどん金持ちになっている。

彼らは基本的に閉ざされた部屋の中にいる。町の中で暮らすことができない。なぜなら町をシミュレーションするのは非常に大きな計算力が必要になり、それを確保するのは難しいからだ。それどころか、部屋の中だけでも、意識が集中した部分以外のシミュレーションは簡略化されている。

<コピー>たちの意識は人間と変わらないので、しばしば自分が本当に<コピー>なのかどうか分からなくなるが、こうした簡略化された周囲の環境を見ると、自分が<コピー>であることを思い出す。さらには、ある呪文を唱えると、インターフェースが空中に出現するので、そこが仮想空間であることをしみじみと納得することになっている。

そしてしばしば自分が閉じ込められていることに耐えられなくなり、発狂したり、自殺を試みたりする。

と、この辺までで、まだプロローグ。もうこれだけで、シンギュラリティの世界を覗くには十分な感じ(^^;。ですが、ここからが本題なわけで、その後の話を短く伝えると。

5年後の2050年、マリアはオートヴァースという環境で、生物の進化が自発的に起きる条件の実験をしていて、それに成功する。すると、プロローグでコンピュータ内の生活を体験していたポール・ダラムという研究者が、何10億年分計算すれば何らかの知的生命に発展するであろう、生命の種を作ることをマリアに依頼する。

ポール・ダラムは自らの<コピー>実験を通じて、永遠の命を得る方法を思いつく。その永遠とは宇宙が滅んでも続くという文字通りの永遠。<コピー>たちは、ダラムに金を出し、そのプロジェクトを推進させる。またその永遠の世界に、マリアの種を備え付け、生命誕生のプロセスを進める。まさしく、生命までも作り出し、神になろうというのだ。

そして<コピー>たちや生物の種を載せて、その世界は<発進>する。

4千年後、ポール・ダラムの作った世界はエリュシオンと呼ばれ、無限の計算力を使い、市民は自由な生活を送っている。しかし、マリアの作ったランバート人たちは、知的生命に進化し、ついには自分たちの世界がオートマトンの上に作られていることを発見する。その世界が不完全であると考えた、ランバート人は、オートマトンの世界に干渉を始める。エリュシオンが崩壊し始め、エリュシオン人たちはランバート人のいない新しい世界を作り、そこに逃げ込み、<再発進>する。

という、なんとも壮大なストーリーとなっています。

ここで、肝心の永遠の命を得るアイディアですが、「塵理論」と呼ばれ、エリュシオンでは無限に計算力が複製されるといいます。正直、なんのこっちゃという感じです。ここがアイディアの肝だと思うのですが、何かふわふわしたもので、そういうものだと納得しないといけないもののようです。このへんがちょっと残念。

塵理論」については、別のページにて、考察します。

www.hetareyan.com

★★★★★


順列都市〔上〕


順列都市〔下〕

 

韓国は崩壊するか? 韓国関係の本を読んで考えた

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韓国でいま、興味深いことが進んでいます。

GDP世界11位の経済大国で、世界屈指のIT先進国の韓国が崩壊するかもしれません。

え、韓国が? 北朝鮮じゃなくて?

ええ、韓国が、です。

ベネズエラカンボジアのような内部崩壊が、韓国で起きるかもしれないのです。

これまで崩壊した国家の多くは、共産主義独裁国家の国です。資本主義国で民主国家が崩壊した例はほとんどありません。

もしも実際に崩壊するとすると、大変珍しい例になるでしょう。

 

韓国が崩壊する理由

韓国が崩壊するのは、ムン・ジェイン政権が北朝鮮と統合を進めようとしているからです。北朝鮮核兵器を廃棄していれば、この統合は祝福されるかもしれません。しかしおそらく核兵器は廃棄されないでしょう。

にもかかわらず、韓国が米国や日本の忠告を無視して、一方的に北朝鮮との統合(仮にこの国を朝鮮連邦とする)を進める可能性があります。

韓国と米国は同盟を結んでいます。この同盟は北朝鮮から韓国を守るためのものですから、統合されれば、事実上、米韓同盟が終了することになります。

誕生した朝鮮連邦はおそらく西側の国からは認められません。

朝鮮連邦は北朝鮮と同じ扱いを受けるでしょうから、韓国の企業は、ドル決済ができなくなり、この結果、韓国の経済は崩壊します。

しかし、それ以前に、米韓同盟が終了することが間違いないと世界が信じた時点で、韓国に投資した外国の資金が引き上げられ、韓国経済は破綻すると思います。

つまり、
米韓同盟の終了=韓国の崩壊
ということになります。

でも、韓国ではなく、北朝鮮が崩壊するということはないのでしょうか? 国の場合、軍隊を掌握している方が強いのです。韓国軍と北朝鮮軍を比べると、圧倒的に北朝鮮軍の方が強いので、朝鮮連邦は実質、北朝鮮の国になります。それに何より北朝鮮は核を持っているのですから、北朝鮮が中心になるのは自明です。

参考:米韓同盟消滅(新潮新書)

韓国は自国が崩壊してもよいのか

韓国のムン・ジェイン政権は、北朝鮮との統合を目指している政権です。

ここで問題なのは、ムン・ジェイン政権が北朝鮮の思想、主体(チュチェ)思想を信じている人たちで構成されていることです。この人たちをチュサパと言います。

現在の北朝鮮が素晴らしいと信じている人たちですから、逆に言うと、現在の経済発展した韓国の姿自体が間違っていると考えています。

つまり、今の韓国を破壊したいと考えている人たちが政権を取っています。

反米、反日どころか、反韓(自己否定)なのです。

このように国を破壊する意思を持っている人たちが権力を握ると、簡単に国は崩壊への道を進んでしまいます。

チュチェ思想共産主義の亜流です。結局、共産主義に心酔すると、現実的な対応ができずに崩壊に道を歩むという過去の崩壊のパターンは、変わっていないわけです。

参考:韓国は消滅への道にある  韓国壊乱 文在寅政権に何が起きているのか (PHP新書)

日本にどのようなインパクトがあるか

では、韓国が崩壊して、日本にどんなインパクトがあるでしょう。

韓国はこれまで日本から部品を大量に買っていただいたお客さんですが、韓国よりも中国の影響の方が大きいので、あまり影響は実感できないのではないでしょうか。逆に日本から購入できなくなるものがあると(例えば、シリコンウェハとか)、韓国の産業は甚大な影響を受けるでしょう。

一方、韓国から買わなければいけないものには、たとえばシェアの3/4を占めるDRAMや4割をしめるNANDフラッシュメモリー、100%の有機ELパネルが思い当たりますが、こういうものは制裁の例外とすることになるでしょう。韓国も積極的に売ってくるでしょうから問題はないでしょう。逆にこれぐらいしか影響がないというのが驚きです。

1997年に韓国経済が崩壊したときも、日本にはほとんど影響がなかったことを思い起こすといいかもしれません。経済的な影響は限定的です。

経済以上に、目の前に敵対的国家が誕生するという、地政学上のインパクトの方が大きいのではないでしょうか。これは大変なストレスになりますし、今の5兆円ほどの国防省の予算では足りなくなることは明らかです。すくなくとも倍の10兆円は必要になるのではないでしょうか。海上自衛隊航空自衛隊、サイバー自衛隊の増強が行われるでしょう。

また韓国から大量の難民が日本に来る可能性があります。国民の5%が来ると仮定すると、250万人になります。金持ちはアメリカやカナダに逃げるでしょうから、日本に来るのはあまりお金のない人たちばかりでしょうね。

こういうことがあったとしても、日本に対する戦争が起きないなら、韓国崩壊の日本への影響は意外に少ないような気がします。したがって、日本人は、非常に興味深く、韓国の行く末を観察することができそうです。

北朝鮮が崩壊する方にかける人たち

もちろん、崩壊するのは韓国ではなく、北朝鮮であると考えている人たちはいます。例えば、冒険投資家で有名なジム・ロジャーズは、近々北朝鮮が崩壊し、韓国企業による北朝鮮への投資ブームが起きると考えています。そのため、例えば大韓航空に投資をしているそうです。(こちら

私も通常ならば、北朝鮮の方が崩壊すると考えるでしょう。韓国が正常な普通の国家なら、ですが。

ジム・ロジャーズの楽観的な考えが正しければ、それに越したことはないと思います。

韓国経済はどの程度崩壊しやすいか

韓国経済はかなりもろいようです。

外貨準備は40兆円程度あることになっていますが、すぐに使える分は10兆円程度くらいのようです。なのでちょっとした衝撃で、外貨が不足してしまう可能性があります。(こちら

そもそも韓国はいま、銀行に信用がなく、単独でドル決済ができないようです。ドル決済に必要な信用は日本の銀行がカバーしているそうです。したがって、日本が信用を与えることをやめれば、ただちに経済は破綻します。(こちら

また家計の借金が150兆円を超え、GDPを越えているので、金利を上げると破綻者が続出し、社会不安になりかねません。したがって、ウォン安が起きても利上げは難しいのです。(こちら)。韓国政府は借金を棒引きにする徳政令を行いましたが、全体の借金の増加の歯止めにはなっていないようです。

ムン・ジェイン政権は経済音痴の人が多いと言います。外国に頼らなくても、チュチェ思想の自主独立路線で大丈夫だと思っているのかもしれません。そうでないと、日本やアメリカが韓国経済の生殺与奪を握っているのに、あれだけ傲慢な態度をとれることが、理解できません。

まとめ

・韓国が無理に北朝鮮との統合を進め、米韓同盟が終了すると、韓国は崩壊する。

・韓国は、自ら望んで崩壊の道を歩んでいる。

・日本への影響は、経済的なインパクトよりも、地政学的なインパクトの方が大きい。

北朝鮮の方が崩壊すると信じている人もおり、韓国に投資しているが、お勧めできない。

・韓国経済は単独の信用がなく、米国、日本がいないと容易に崩壊する。

 

韓国は消滅への道にある

李度二 草思社 2017年9月14日
読書日:2017年12月17日

この本に書かれてあることは本当なんだろうか。

韓国の現大統領の文在寅を始め、公務員、裁判官、マスコミ、教員、労働組合キリスト教の司祭たちに北朝鮮の息のかかった者たちがほぼ独占しているというのだ。

とくに私が問題と思ったのは、学校で北朝鮮を礼賛する教育が行われ、北朝鮮の歴史や主体思想が教えられている一方、反米、反日はもちろん、母国の韓国に対してさえ敵対するような反韓思想が教えられ、そうした教育を受けた国民がすでに大多数になっているということだ。

そして、マスコミにおいては完全に左派の制圧下にあり、金ジョンウンのニュースは毎日流され、左派のデモはニュースになっている一方、保守派のデモはまったく無視され、左派の思うがままになっている状況だという。

こんな調子では、どんなに韓国と慰安婦問題で合意してもすぐに反故にされるのは当然だし、アメリカとの同盟関係をさらに強力にしようという気が起きないのも当然だ。

しかし、韓国は仮にもIT強国で、日本人よりもよほど英語に堪能な国民も多く、世界中のニュースや考え方に自由にアクセスでき、サムスンのような超グローバル企業もあるような自由経済の恩恵をフルに受けている国なのに、本当に共産主義というかほとんど専制ファシストと言っていいような北朝鮮という国にシンパシーを感じるというのか?そうだとすればまったく理解に苦しむ。

このへんが本当なのかとどうかがいまいち分からないところなのだが、もしも本当ならば、韓国は自ら消滅の道を歩んでいるという主張も、あながち間違っているとは思えない。

ドイツはみずから民主主義を放棄してナチスを選んだが、もしかしたら韓国はアジアでそれを行う途上にあるのだろうか。

朝鮮半島で何かがあると、負けた方は日本に逃げてきたという歴史がある。韓国が北朝鮮に飲み込まれると、著者が警告するように本当に日本に大量の難民が押し寄せるかもしれず、激動の歴史がもうすぐ始まるのかもしれない。

★★★★☆

 


韓国は消滅への道にある

韓国壊乱 文在寅政権に何が起きているのか (PHP新書)

櫻井 よしこ, 洪 ヒョン PHP研究所 2018年12月14日
読書日:2019年1月11日

いま韓国が米韓同盟を解消し、北朝鮮との統合を進めようとしているが、では、韓国の文在寅ムン・ジェイン)政権がどのような政権なのか。韓国はいまどういう状況なのか。

この本を読む限りにおいては、ムン・ジェイン政権が統合を加速することはあっても、後戻りはあり得ないことが分かる。

ムン・ジェイン政権のメンバーは、北朝鮮の主体(チュチェ)思想を信じるチュサパと呼ばれる人々である。つまりムン・ジェイン政権は北朝鮮が数十年にわたって韓国に介入してきた成果なのである。

チュサパの人々は民主主義、資本主義、法治国家という考え方を認めない。また、金大中盧泰愚以外の成果を認めない。したがって、現在の韓国をすべて破壊しようとしている。

さらには、どうも、知識や教養ということも信じていないようなのだ。

この本の中で何度も唱えられているように、まるでカンボジアポルポト政権のように、知識社会の全てを破壊し、原始に帰ることを目指しているかのようである。

ムン・ジェイン政権は、政府機関、司法機関、軍の要職に左派のメンバーを配置しており、またメディアへの弾圧を行い、事実上の大本営発表しか認めない状況を作っている。もはやメディアは何の力も持っていないようだ。

事実上のクーデターが成功したということである。

そもそも朴槿恵の弾劾の手続きが憲法違反になっており、法治国家とは言えない状況と著者は主張している。法治国家ではないとの印象は、日本に対する対応でも歴然である。

韓国は日本以上にネットが普及し、自分の考えを自由に述べたり、外国の考えを入手するのも可能である。ましてや韓国人は日本人よりもはるかに英語に堪能なのだから、より容易なはずである。そして、なにより資本主義を基礎として、外国との貿易で国家が成り立っている。

なのに、自殺行為としか思えない行動を取っている。

ムン・ジェインが大統領にならなくても、韓国は米韓同盟を消滅させたかもしれないが、この政権ならさらに加速させることは間違いないだろう。

中国も同じだが、経済が発達すれば民主主義が発展するとか、国民が自由になるとか、そういうことは起こらないことがはっきりした。リベラルはいま世界中から退潮しているが、その最も重要な例が東アジアで起きているということになりそうである。

★★★★☆

 


韓国壊乱 文在寅政権に何が起きているのか (PHP新書)

米韓同盟消滅(新潮新書)

鈴置高史 新潮社 2018年10月17日
読書日:2019年1月11日

鈴置さんを知ったのは日経ビジネスオンラインのコラム「早読み 深読み 朝鮮半島」です。

ここでのあまりにも深い洞察に驚愕し、ずっと読んできました。読みながら、まさかこんなことは起こらない、と思っていましたが、予測が次々的中するので、鈴置さんの読みには絶大な信頼を置いています。

そのコラムが2019年1月で終了してしまい、今後何を指針に朝鮮半島情勢を考えてよいのか、困惑しています。

この本は基本的にはコラムの内容をまとめたものです。本のタイトルの通り、米韓同盟が消滅することを予告していますが、実際はすでに消滅したも同然です。その状況を詳細に述べています。

現在は

1)韓国大統領・文在寅ムン・ジェインは反米であり、北朝鮮との統合を目指している。
2)トランプ政権は朝鮮半島から米軍を撤退させたい(米韓同盟終了)。ただし、北朝鮮の非核化の取引としたい。
3)北朝鮮は核を手放す気はなく、米国に届くミサイルの放棄にとどめたい。

となっていて、非核化交渉は膠着状態です。

北朝鮮だけでなく、韓国も核兵器廃棄を望んでいないようです。統合後に核がないと周囲の大国に対抗できず、困るからです。韓国が「民族の核」(核兵器は韓国を含むすべての朝鮮民族のために開発した)という北朝鮮の言葉を信じているのは明らかです。

ムン・ジェイン政権は半島統合を強力に進めようとしており、国連決議無視の北挑戦への経済協力を行っています。韓国国民もそれを支持しています。

ムン・ジェインとしては、米国に出ていってほしいと思っているので、アメリカを怒らせる態度を取っています。おそらくは、米国が怒って自分から出ていってくれれば好都合ぐらいに思っているのでしょう。

アメリカに対してすらそうなのですから、日本に遠慮するはずはありません。そもそもすでに日本への関心はあまりないような気がします。米国と離れる以上は、その子分への配慮は必要はないので、単なる韓国国民のうっぷん晴らしの卑日ショーをやっていればよい、ぐらいじゃないでしょうか。

こうして、事態は最悪な結果、つまり半島の非核化もされず、韓国がなし崩し的に北朝鮮と統合し、米韓同盟は明確な宣言があろうがなかろうが終了する、という結果に向かっているようです。

これは日本にとっては最悪な結末で、対馬海峡をはさんで強力な核兵器保有国家が出現します。

このとき、吸収されるのは北朝鮮ではなく韓国の方です。なぜなら統合された朝鮮の軍隊は北朝鮮軍が主力になるので、軍隊を掌握しているほうが強いのは明らかだからです。

気が付いたら、専制的で人権無視の国家の国民になっていた、そう分かったときの韓国国民の気持ちはいかばかりでしょうか。でも、時はすでに遅いようです。着々と統合は進んでいるのです。(しかも自分から望んで。。。)

これは、左派のムン・ジェイン政権だから起きるのでしょうか。

違います。

この本では、韓国人の考え方、発想について紙幅を多く割いていて、たとえどんな政権であろうとも、遅かれ早かれ起きていたということが分かります。これは韓国人の精神に深く根差した行動原理により起きており、政権は関係ないのです。

すでに日本政府は、米韓同盟が終了し、米国が半島から撤退することを前提に行動しているように見えます。レーダー照射問題でも、たんたんと事務的に処理していますが、そこから何か起きることは期待していないようです。

そして、ロシアとの平和条約締結を急いでいます。目の前に、中国と統合朝鮮という2つの強力な仮想敵国が出現し、対峙しなくてはいけないのです。これに加えて、ロシアとも対峙する余裕はありません。北方4島すべての返還はもはや目標にしていないのではないでしょうか。

日本にとって本当にタフな時代がやってきました。

まあ、考えてみたら、明治維新のころに戻ったわけで、当時、明治政府がどれだけの外的環境ストレスにさらされていたか、ということが想像できます。

★★★★★


米韓同盟消滅(新潮新書)

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