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中村元選集〈第3巻〉/東洋人の思惟方法〈3〉日本人の思惟方法

中村 元 春秋社 1989年1月
読書日:2018年09月18日

中村元が有名な学者であることは知っていたけど、やっぱりすごい。

日本のみならず、インド、中国、欧米の文化に習熟している中村は、具体的な文献をいちいち挙げながら、日本人の考え方のパターンを他国(とくにインドと中国)と比較検証してくれる。ほとんどこれ一冊で、完璧なんじゃないかと思えるほどの出来だ。

ちょっと変だなと思ったのは、日本のいじめのところで、中村の言い分では、戦前はいじめなんてなく、現代でも(この本の出版は1989年)公立の学校だけで、私立では起きていないと明言していること。それを日本人の宗教観と重ねて論じているのだが、いや、私立でもいじめはあるし、戦前、戦中でもあったことは、たとえば小説「長い道」(映画の「少年時代」)からも明らかなんじゃないの?

他にもこれはどうかというところは2,3あったが、しかし、全体として極めて的確という印象を持った。

中村の言う日本人の特色は、簡単にまとめると以下になろうか。(1)楽天的。今生きている現在の利益を重視、過去や未来(死後)は気にしない。(2)人間関係の中で物事を把握し、その関係の把握に極めて敏感。自分が所属している集団が絶対的意味を持つ。(3)抽象的な原理、概念を思考するのが極めて苦手。具体的に考えるのは得意。

通常、日本人論となると、日本を卑下するか持ち上げるかどっちかだけど、淡々と日本人の考え方を述べている。世界的に見てあまり類例のない思惟方法であるから、たぶん日本と日本人は今後も世界の中で特徴がある国と見られていくんだろうなあと思われる。そして多分それはいいことである。

同じ選集で、インド人の思惟方法、シナ人の思惟方法、などがあるからぜひ読み比べてみたい。

★★★★★


中村元選集〈第3巻〉/東洋人の思惟方法〈3〉日本人の思惟方法

 

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