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日本の歪み

養老孟司茂木健一郎東浩紀 講談社 2023.9.20
読書日:2024.1.16 

日本は生きづらい国であり、それは日本の歪みに由来するのではないかと、三人の賢人が鼎談する本。

三人が考える日本の歪みとはなにかについては、目次から明らかである。「先の大戦」「明治維新と敗戦」「憲法」「天皇」などである。つまり日本が明治維新以来やってきたことがなにも総括されずにそのまま残っており歪みとなっている、ということなのだろう。

憲法9条で戦力は持たないとなっているのに、明らかな戦力である自衛隊を保持しているのだから、それこそ歪みそのものなんだけど、問題はもちろん戦力を保持してることではない。戦力を保持するのなら、憲法をきちんと改正すべきなのになぜしないのかという、そこのところを言っている。なぜそのままにして、解釈や運用でごまかすのだろうか。

日本は戦争に負け、日本中が廃墟となったが、どうも日本人はこれが戦争に負けたというよりも、なにかとんでもない災害が起きたというように感じているという。広島や長崎でも人々は原爆を地震や洪水のように語っていたという話もある。

そして養老先生によれば、日本は大災害が起きると、歴史ががらりと変わる傾向があるという。例えば、関東大震災が起きた時、日本は大正デモクラシーから戦争へとがらりと方向を変えたそうだ。

ということであれば、答えは明らかなんじゃないかな。日本は災害の多い国で、災害はどうしようもない神様の領域であり、なんともしようもないものである。なんとかやり過ごして生きていくしかない。そして災害とともに変わる政治の大きな流れの変化も、なにか天から降ってくるようなどうしようもないものである。敗戦もそうだし、敗戦でいきなり降ってきた憲法もそうである。それは神様の領域なのであり、変えるものではなく、やり過ごすものである。これらはすべて人為的なものでなく、自然現象なのである。自然はそのままでいいのだ。さわらぬ神に祟りなし、なのである。

日本は生きにくい社会かもしれないが、人生の出世コースから外れて、奇人枠と認定されるととても生きやすいんだそうだ。

なので、日本で生きやすい生き方というのは、なにか好きな沼にでもハマって、それを楽しみにして生きていくことなのだ。そういうわけで、日本ではそれぞれが好きなことに邁進するので、多様性がむちゃくちゃある世界になっている。これこそ日本が世界に売り出せる文化というものだと思うんだけどなあ。

まあ、中村元先生も、日本人は享楽的、と言ってくれているし、これでいいんじゃないでしょうか。

★★★★☆

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