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日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本”式”経営の逆襲』

岩尾俊兵 光文社 2023.10.30
読書日:2024.3.4

日本発の経営戦略がアメリカ経由で逆輸入され、もともと持っていた経営戦略を日本企業が捨てている現状を憂え、日本自身が世界に広めなければいけないと主張する本。

日本で流行っているアメリカ由来の経営戦略には、もともと日本発のものがたくさんあるんだそうだ。なのに、日本人自身がそれに気が付かずにありがたがっている状況だという。

たとえば次のようなものだ。

(1)両利きの経営:既存のビジネスでしっかり稼ぎながら、新分野の探索を行う経営。
提唱者のオイラリー教授とタッシュマン教授は、両利きの経営の典型例は「トヨタ生産方式」だと述べている。(ただし有名になってからはそんなことはまったく言っていない)。

(2)オープン・イノベーション:自社の技術を提供するかわりに、自社以外の技術の提供を受け、イノベーションを加速すること。
提唱者のチェスブロウ教授は、日本は早くからオープン・イノベーションを展開していたと紹介。日本企業が下請けを巻き込んで、企業の垣根を越えて協調して技術開発を行うことを指している。

(3)ユーザー・イノベーション/フリー・イノベーションイノベーションにユーザーや無関係な一般人を巻き込んで、その発想や知識を取り入れて開発を行うこと。
提唱者のヒッペル教授は、生産設備のユーザーである日本企業の従業員が改善の知恵を出している、QCサークル活動を参照している。

(4)リーン・スタートアップ/リーン思考:不完全でも取り得ずプロトタイプを作ってみてすぐに改善する、というプロセスを高速に回転させること。
著書内で源流は「トヨタ生産方式」だと何度も言及。

というわけで、オリジナルは日本なのに、なぜかアメリカがそれを商品化してコンサルタントとして大儲け(売上数兆円)をしている状況で、岩尾さんとしてはじくじたるものがあるようだ。しかも買っているのは、日本企業なのである。

なぜそんな事が起きるのだろうか。

アメリカは抽象化、一般化、コンセプト化に優れている。一方、日本は特定の個人や組織の文脈に依存しており、そのままでは外に持ち出せないものになっているという。さらには、日本企業は自分たちの経営技術を信じる力で負けているのだという。

この結果、「カイゼン」という明らかに日本発のものまでが、アメリカで商品化されて、世界を席巻しつつあるのだそうだ。

こんなことではいけないと、岩尾さんは、日本の経営技術をいかに抽象化するか、ということを検討している。抽象化というのは、簡単に言えば、科学的な装いを施すことである。なので、どのようなカイゼンのタイプだとどのような効果があるかというのをシミュレーションを用いて抽象化する研究をして、発表したりしている。

なるほどねえ。

まあ、言いたいことはよく分かるけど、それならアメリカのコンサルタント会社を買収したり出資したりすればいいのではないかしら。お互いの得意分野で協力すればいいだけのことで、日本だけで全部やろうとしなくてもいいのでは?

★★★★☆

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