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個人投資家目線の読書録

未来に先回りする思考法 テクノロジーがすべてを塗りかえる

佐藤航陽(かつあき)ディスカヴァー・トゥエンティワン 2015.8.30
読書日:2021.11.21

タップスの創業者の佐藤航陽が、未来は一定のパターンで変化すると主張し、意思決定するにはこのパターンにあっているかどうかで思考し、その意思決定を実行に移すときには、タイミングを慎重に見図らなければいけないと主張する本。

6年前の本だが、べつに中身は古くない。なぜなら、あたり前のことばかり書いてあるからだ。

タップスの佐藤さんのことはあまり良く知らないが、この本に記載されていることは、実に実に普通の思考方法で、面白くないくらいに普通である。このくらいあたりまえのことを普通に考えられるということは、とても信頼感を感じる。最近、メタップスは子会社のpringをグーグルに売却したと報じられている。おとくいの先回り思考で、事業も順調のようだ。投資してみようかしら。

佐藤さんはまず、未来を変えるのはテクノロジーだと主張する。そしてテクノロジーの発展にはパターンがあるという。技術は最初、人間の機能の拡張として誕生するという。蒸気機関や電力で人間の筋肉を拡張し、印刷は脳を拡張しているわけだ。ところが次の段階では、人間の方がその新技術に自分を合わせるようになるという。(佐藤さんは主客を逆転し、技術が人間を教育するという言い方をしている)。そして最後にテクノロジーは人間の物理的身体を越えて宇宙にまで広がるという。

ただこうしたテクノロジーは必要がなければ広がらないという。日本でイノベーションがおこらないのは、じつは必要がないからだという。日本はイノベーションが必要のない幸福の国なんだそうだ。じつに納得できる見解である。

で、こうしたテクノロジーが発展し、いま近代の社会システムが塗り替えられているという。ここで、国家、社会、資本主義がいかに変えられていくかを述べているが、これらのシステムの本質が何かということを手短に、とても的確にまとめている。このまとめ方を読むだけでも、とてもよく分かってるなあ、という気がする。ところどころ違うんじゃない?と思うところもあるが、そこは些末なところでどうでいいところばかりだ。(たとえば貨幣の起源とか)。

こういうコンパクトにまとめるまでには、きっといろんな本を読んだり思考したりということがあったのではないかと思うが、しかしここまでよくまとまっているというのはなかなか珍しいかもしれない。

そういうわけで、未来に何が起きるのかは具体的にはわからないけど、何かが起きた時、あるいは新しいアイディアが浮かんだときに、それが原理的にあってるかどうか、少なくとも方向性があっているかどうかというのは、過去のパターンから類推できるという。

実際、佐藤さんはあるサービスを展開するときに、アップルのiOSでなくアンドロイドを中心にした。当時、iOSが圧倒的なシェアを得ていたにも関わらずにである。この決断はかつてのパソコンで、垂直統合型の製品が全滅し、水平分散型のマイクロソフトインテルが圧勝したという経験によっていて、水平分散のアンドロイドの方が増えると確信できたからだという。つまりテクノロジーが社会を変えていくパターンと一致している、と判断できたわけだ。

タイミングについては早すぎてもおそすぎてもいけないと言うが、それを見極める方法が書いてあるわけではない。非常に感覚的なものになってしまう。ちょっと早いくらいがちょうどいいらしいが。

というわけで、つまらないくらい当たり前のことが書いてある本でしたが、実際にこのように思考して実践する人は少ないと思います。これは起業家が実践するための標準的な思考方法と言ってもいいでしょう。たぶん、本人がいろいろ悩んだ末にこのような標準的な思考方法にたどりつついたのだと思います。

本人も、評論家でなく実践家であれと最後に結んでいますが、まあ、わしの場合は起業でなく、投資活動で実践するということで、許してね(笑)。

★★★★☆

 

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