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エンタの巨匠 世界に先駆けた伝説のプロデューサーたち

中山淳雄 日経BP 2023.1.30
読書日:2023.12.12

エンタメ社会学者を自称する著者が、日本を席巻するコンテンツを生み出したプロデューサーたちにインタビューし、その思考回路を解明しようとした本。

著者がこんな本を書こうと思ったのは、日本のエンタメが低迷していると映っているかららしい。日本が今稼いでいるのは、ポケモン遊戯王ウルトラマンガンダムドラゴンボールなどの20世紀のレガシーばかりで、21世紀になってから世界的なヒットを生み出していないという。

そうだっけ? 「進撃の巨人」とか、21世紀にも世界を席巻したコンテンツはそれなりにあるような気がするけど? まあ、わしが知っているのはアニメばかりですけど(苦笑)。

ともかく、日本のエンタメ業界が内向きで、世界に打って出ようとしないうちに、韓国や中国が世界を席巻しているのに、日本は低迷しているんだそうだ。確かに、BTS、イカゲームなどの韓国のエンタメの世界進出は素晴らしい。

というわけで、世界的なエンタメを生み出すためにはどうすればいいのか、というわけだが、この問題設定自体に既視感がある。アメリカで、GAFAMのような巨大プラットフォームが誕生したとき、日本ではなぜそのような世界企業が誕生しなかったのか、という議論とそっくりだ。

もっと近いのは、日本の家電業界だろう。かつては世界を驚かせる電気製品、たとえばウォークマンやVHSなどを作ってきたのに、最近はヒットを生み出せなくなったのはなぜかという議論と同じである。

そして、この本の結末はこうだ。かつてのプロデューサーたちは、たとえ会社員であっても、会社を越えた普遍的な価値を見つめて、組織の穴を見つけて突破して世界的なヒットを生み出した、だから現在の会社員にも突き抜けた個人であれば可能、ということらしい。なんかいまいちな結論だなあ。まあ、コンテンツはアートの部類に入るから、最後には個人の資質というのは理解できるけど。

というわけなのだが、わしの目には、すでに日本のエンタメ業界は世界に目を向けていて、今後はもっと日本のコンテンツが世界で見られるようになっていくと思うな。

例えば以下のニュースはその例でしょう。

www.nikkei.com

www.nikkei.com

なにしろ日本は、すでに売るものが文化しかなくなっているんだから。インバウンドを呼び込んでいる観光も含め、文化を磨いて輸出する国になっていくしかないんですね。そしてきっと日本というか日本人は、世界的な「遊ぶ国民」になるんですよ。それは日本人のもともとのお気楽な気質とも合っている。

わしとしては、もっと科学とテクノロジーに力を入れてほしいんですけどねえ。科学とテクノロジーは人類最大のエンタメだと思うんだけど、だめ?

*****メモ*****
インタビューした6人とその概要。この本の結論はイマイチだけど、インタビュー自体はものすごく面白い。

(1)土屋敏男 もっと日テレプロデューサー、「進め!電波少年など」
伝説のプロデューサーなんだけど、このインタビュー時も日テレの社長室R&Dラボという部署にいるんだそうだ。ずっとサラリーマンでいたわけだ。同じことは2度とやらない、止まったら死ぬ、という覚悟で作ってきたという。

(2)鳥嶋和彦 「ドラゴンボール」「ドラクエ」の元少年ジャンプ編集長
鳥山明の担当をして「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」のヒットを出したのは知っていたけど、「ドラクエ」の誕生にも関与していたとは(だからキャラクターデザインは鳥山明だったのか)。のちに低迷していた白泉社に行って、黒字化させている。これも知らなかったな。自分ではなくクリエイターが儲ければいいという発想で、クリエイターを育ててきた。最初から会社の中のことよりも、会社の外に価値観を持っていた人。

(3)岡本吉起 「ストⅡ」「バイオハザード」「モンスト」のゲームクリエイター
アーケードゲームコンシューマーゲーム、モバイルゲームのすべての領域でヒット作を作ったゲーム界の三冠王なんだそうだ。別のプラットフォームに移るときは、前との関係をすべて切って、後ろを振り返らないという。独立したあとに会社が潰れて、17億円の借金を背負ったが、自己破産をせずにモンストを当てて、返したという。最初に入ったコナミでは、会社に嘘をついてフライトシミュレーターのソフトを作っていたそうだ。

(4)木谷高明 ブシロード創業者
ブロッコリーを創業したが失速してタカラに救ってもらい、その経験を生かして、ブシロードを創業、今度は成功させた。新日本プロレスを買収。努力と忍耐という言葉が嫌い。アイディアを出して人のやらないことをあえてやる、そうだ。

(5)舞原賢三 「仮面ライダー電王」「セーラームーン」監督
映画監督業界は高齢化していて、60歳の舞原監督も若手なんだそうだ(笑)。しかしなんと言っても、異色なのは、インドネシアで「BIMA」というテレビドラマを作って、大ヒットさせていること。世界で作って分かったのは、「悲しみと怒りは万国共通、しかし笑いは違う」ということ。

(6)齋藤英介 サザン、金城武、BTSの音楽プロデューサー
ビクター音楽産業に入って、洋楽、邦楽を担当した後にアミューズに転職。常に海外との関係でキャリアを築く。特に中国、韓国と太い関係を築いている。コツは即断即決。これまでの自分の体験を越えそうな逸材に出会ったら、たいていはヒットするそうだ。逆によく考えて練ったものはヒットしないという。BTSの場合もそうだったそうだ。

★★★★☆

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