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AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望

丸山俊一+NHK取材班 NHK出版新書603 2019.10.10
読書日:2020.3.12

NHK教育で放送された「人間ってナンだ? 超AI入門」で、4人の世界的知識人からAIについてコメントをもらう特別編を放送したが、それを書籍化したもの。「欲望の資本主義」の丸山俊一がプロデューサーをしている。実は放送も見たが、何しろ丸山俊一だから、放送以上の内容になっているに違いないと思い、読むことにした。

実際にはほぼ放送と同じ内容であったが、本で読んでみると、4人のうち3人目のデネットと4人目のケリーの存在感が際立っているように思えた。

ひとり目のテグマークは楽観的で、AIを積極的に開発したいという思いがある。またAIの開発により、意識の研究が進むことを期待しているのだ。二人目のウォラックはAIを使う上の倫理の問題を検討している。この2人はかなり具体的にAIをとらえている。

三人目のデネットは進化論的に発想していて、AIが漸進的に進化していくという。なにか理解するにしても漸進性、つまり途中段階があり得て、少しだけずつ理解し、そのうち全体を理解できるということがあり得る。AIにも0,1のデジタルではなく、そういう途中段階の知性もあるという。また人間の脳は進化しようと思ってここまで賢くなったわけではなく、環境への適応の結果として進化した。同じように、一般的なAGIは可能だが、漸進的進化の結果、人間が思っているのとは全く異なるものになるという。

四人目のケリーは多様性に注目している。AIが人間のようなものになるというわけではなく、いろんなタイプのAIが存在する用になるという。そういうAIと付き合ううちに人間自体も影響を受けて、多様な考え方に変化していくという。そして、AIがあふれることで、人間とは何かという問題が突きつけらるという。

ケリーのように、いつの間にかいろんなタイプのAIが周りにあふれて、自然に溶け込むようになり、お互いに影響を及ぼしあうという考え方は、わしのAI感と一番近いと思う。

わしはシンギュラリティ(技術的特異点、AIの知性が人間を越えること)は起きるかもしれないが、きっとそのことに誰も気が付かないのではないかと思っている。あまりに自然に、それぞれの役割の異なったAIが周りにあふれて、それぞれの活動をしているだろうから、誰もいまがシンギュラリティは起きたとは教えてくれないだろう。

ケリーがXAIというAIの話をしている。AIは正解と思われるものを教えてくれるが、その過程はブラックボックスである。そこでXAIが必要になる。XAIは、AIがどうやってその判断をしたのかを考え(推測し)、教えてくれるAIだ。これはまさしく人間の意識のやっていることそのものだ。人間も自分がなぜそのような判断をしたのか、自分で理解する必要が生じ、誕生したものだろう。そしてその推測の結果は物語という形式で表現される。

丸山俊一はまとめの中で、人間は経験を物語化することで未来を予測するという。

その通りだ。だが、なぜ物語という方式だったのか、他に方法はなかったのだろうか。物語という思考方法は、実に不思議だ。そして物語は、他人と物語を共有することで、社会的な進化をうながす(サピエンス全史)。

たぶんAIが物語を作るのは簡単だろう。そして人間はだまされるのかもしれない。過剰な感情移入は危険である。

★★★☆☆

 


AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望 (NHK出版新書)

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