サピエンス全史(上下)文明の構造と人類の幸福

ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 2016年9月2日
読書日:2018年02月12日

全史というのを付けなくて原題の通りただの「サピエンス」でよかったのでは? しかし、科学的な情報も織り交ぜながら、常に歴史という視点で語られている著作であるから、それを明確にするためにも、「史」という言葉を入れたかったのかもしれない。

この著作は数年に1冊出るかどうかのエポックメーキングな作品。ひとつひとつの項目は知っている内容であっても、こういうふうに語られて、まとめまれると、人類とはなにかについて非常に見通し良く考察ができて、これから人類がどうなるかについての見通しもつけやすい。たぶん、わしはこの本をこれからも何回か読むことになるんじゃないだろうか。

まず著者は人間は他の動物とどこが違うのかについて述べて、それは言語だろうという。では言語で何が違うのかというと、言語により、虚構の世界を構築して、それを信じることにより、人間のネットワークは生物学的な限界である150人を超えて、数千人、数万人、さらには数億人でもまとまることができるという。そしてこの虚構の世界を変えることで、瞬時にして、世界の構造も変えることができるという。(たとえば革命などで、瞬時に社会構造を変えることができる。日本でも敗戦時に瞬時に社会が変わった)。

この辺は日本人では、吉本隆明の共同幻想論でなじんでいるから、さほど違和感がないのでは。

そして、グローバル化に関しては、3つのものがあり、貨幣と帝国と宗教が与えられる。貨幣と宗教については多少ともなじみがあるが、帝国に関しては日本人にはなかなかなじみがなく、非常に参考になる。政治的には帝国以外には成功した手法はないのであり、いまでも帝国的な手法しかありえないという。この点についてはもっと考えてみる必要がある。

宗教については、人間の信念に関するものはすべてこれに含まれ、例えば共産主義や資本主義もこれに含まれる。自由や平等に関するものももちろん含まれる。宗教でグローバル化が達成されたものは、仏教とキリスト教、イスラム教が挙げられるが、どれも布教という概念、他の民族にも教えを広めるという概念が入っているかどうかでグローバル化するかどうかが決まった。だから、ユダヤ教はユダヤ人のローカルな宗教にとどまり、キリスト教は世界宗教になりえたわけだ。ただし、マニ教なども世界主教になる可能性があったのに、そうなっておらず、どの宗教が選ばれてどの宗教が落ちたのかは、確たる理由はないという。

そして資本主義がこれほど勢力を伸ばした理由について説明、この資本主義の説明については全く納得できるもので、非常に明解。

そして資本主義と科学革命の幸福な(?)結びつきについて、説明がある。かつては人類は過去に素晴らしい文明があったがそれが失われたという考え方をしたが、科学革命により初めて未来がもっとたくさん知識が増えると信じられるようになった。この未来を信じる傾向が資本主義と結びついたのだという。科学はすでに無尽蔵といえるエネルギーを手に入れているという説明は、わしもそう思っているが、異論がある人も多いかもしれない。

こうしてサピエンスの発展の理由が語られるが、しかし、著者はさらにこれが人類の幸福につながったのかどうかについて考察している。例えば、農業革命によって人類の人口は増えたが、幸福度でいえば、各段に下がってしまった可能性があるという。我々の社会も豊かになったはずなのにあくせく働いている。はたして幸福につながっているのか、本当に疑問だ。次の世代では、ぜひ、人類の本当の豊かさに挑戦すべきだ。特に家畜の幸福について考察していることは、秀逸。将来、タンパク質は人工栽培的に作られるもかもしれないが、そうなったら逆に家畜は必要なくなり、数が激減してしまうのかもしれない。

今後、人類がどうなるかについても考察している。生物学的に超人類になるのか、サイボーグになるのか、ネットワークに意識がアップロードされるのか、そういった未来についてもシームレスに思考できる点が、この本の素晴らしいところだ。

近い将来、もう一度、読むことになるだろう。素晴らしい本をありがとう、ハラリ。

★★★★★


サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

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