西和彦 ダイヤモンド社 2020.9.8
読書日:2021.2.9
マイクロソフトの創業時に活躍し、アスキーを創業した超有名人西和彦の自伝。
反省記の題名はもちろん、前半生の驚異的な活躍に比べて、後半生は没落と言っていいほどの状況に陥ったから。だけど、まあ、反省するほどのこともないんじゃないかな。
前半生の活躍では、本人は自分でも言っているけど、プロデューサーとしての活躍。人と人を結びつける仕事で、アスキーの運営も含めて、お金に関しては西さんは関わっていない。この活躍の時代は、本当に生き生きと語られていて、非常に素晴らしい。
子供の頃の話も、ああ、そうだったんだと納得できる。家にあるものを何でも分解して、そして組み立て直す、さらには自分で作ってみないと気がすまないという性格。
IQは200を叩き出すくせに、学校の成績は最悪。でも受験勉強を始めたら、東大を目指せるほどだった。結局は受からなかったけど、東京の予備校に通うために家を出たらそれっきり家に戻らなかったという、この家族に対する思い入れのなさもいいなあ。でも家族の関係が切れたわけではなくて、ずっと続くのもいいなあ。
そして、自分が興味を持ったものに対しては、現場に飛び込むという性格もいい。高校時代に学校をサボって、東京の展示会に出入りして人脈を築いていったけど、その人脈がすぐにビジネスに効果を発揮して、アスキーとかを創業するときやその後の提携とかに面白いように結びついている。ビル・ゲイツとの関係もそんなあいての懐に飛び込む性格から生まれたものだ。
マイクロソフトの成功にこんなに関わっていたんだと知って、かなり誇らしい気になった。この頃の日本は輝いていたんだなあ。グローバルビジネスで活躍した西和彦だけでなくて、NECや京セラ、三洋とか日本自体が輝いていた。
ビル・ゲイツとたもとを分かってからの後半生(と言っても、まだ30歳だったわけだが)は、アスキーの社長として、ビジネスを見ることになる。この経営者としての西はまったく輝いていない。
実家が学校の経営をしていたこともあって、子供の頃からこういう学校で起こる問題のあれこれの話を聞いていたという。このとき、経営としての学校運営のことも話されていたと思うんだが、そういう経営的なことはまったく学ばなかったらしい。そのへんが返す返すも残念。
アスキーが経営危機に陥ったのは、よくある放漫経営で、いいアイディアが思いつくとどんどんお金を出して、利益は赤字にならなければいいという考えなんだから、そりゃ何かでちょっとつまづいただけで、簡単に経営危機になるよね。
未来がどうなるか見えている人だから、お金の管理さえできていれば、孫正義のようにもなれたと思うんだけど、そうはならなかった。孫正義についてもコメントがあって、事業をしていたころの孫正義はリスペクトしていたけど、今の孫正義は単なる投資家になったみたいで、リスペクトはできないんだそうだ。
この発想には、コツコツ物を作る製造業を貴んで投資家を蔑視するという、日本人的な発想から抜け出せていない。これじゃあ、やっぱり難しいなあ、という気がする。お金を儲けて、それをまた投資して、どんどん増やしていくという複利の発想がないよね。
後半生はずっとお金に苦しんで、お金がないから好きなプロジェクトも起こせなくて、未来の動きが見える人にはつらい毎日だっただろう。まあ、今となっては、本人的にはそれなりに良かった、という人生ということになるのだろう。いや、まだ終わったわけではなくて、残りの人生はライフワークであるという教育に携わって頑張っていくんでしょうけどね。
なにより大喧嘩したビル・ゲイツと仲直りして、ビル・ゲイルに大学を作るからお金を出してくれと言ったら、ぽんと20億円出してくれたという話も、ほっこりしていいなあ。(この大学の話はリーマンショックの余波で潰れたんだけど)。
大川さんとの義理人情の話は、わしにはそんな人はいないせいか、なんか別に世界のような話に聞こえた。こういう世界を知ったほうが良いのか悪いのか、よくわからないなあ。
それはともかく、この本は面白くて、あっという間に読めた。書いてくれてありがとう。
★★★★★