ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

1兆ドルコーチ --シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え

エリック・シュミット ジョナサン・ローゼンバーグ アラン・イーグル 訳・櫻井祐子 ダイヤモンド社 2019.11.13
読書日:2020.2.17

個人投資家というのはだいたい個人プレー的で、人とうまくやっていけないと自覚していて、できれば会社をいつ辞めてもいいように経済的自由を得たいと思っている人が多いのではないだろうか。いや、つまり、わしがそうなんですけど。

ビル・キャンベルの教えはその真逆といってもいいほどの価値観でできている。そもそもビジネスの世界に入るまでは、アメリカンフットボールの世界にいたのだ。だから彼はアメリカンフットボールの、もっと言えばチームで勝ちを取りにいく世界の価値観にどっぷりと浸かっている人の発想をするのだ。で、会社というのはチームプレイなのだから、その教えはぴったりとあっているのである。

この本にはいろいろ書いてあるけれど、ようするにビルがやっているのは、いいチームを作る、それに尽きるのである。

まずチームの一員になるにはもちろん優秀でなければならないが、単純に頭のいい人なのではなく、学び続ける人かどうかを基準とする。どんなにそのとき頭が良くても、学び続ける人でなければ、たちまちチームはうまくいかなくなることを知っているからだ。ビルによれば、人が学ばないようになったことを知るのは簡単で、話しているときに質問よりも自分の意見を多く言うようになったら、その人は学ぶことをやめたんだそうだ。そしてビルがコーチングを行うのは、学び続ける人に限られるのである。

そしてビルはコーチングをすると決めたら、本人だけでなく本人を取り囲むすべての人と関わろうとする。具体的には家族や友人だ。したがって、付き合いはすぐに家族ぐるみになる。そしてその人を愛し、すべてを受け入れ、ビジネスで関わり合いがなくなってもずっと関係を保ち続けるのである。

ビルがいるチームの中では、常に隠し事はなしで、率直にもっとも大切な問題が話し合われ、なにかまずいことを察知すると、ビルはそのまずい部分をすぐに取り除いて、チームの状態を最高に保つ。

ビルにとってコミュニティを形成するのはほとんど病気のレベルに達していて、どんなときにも誰とでも友達になってしまい、その人を助けようとするのである。

信じられないことだが、アップルやグーグルといった巨大テック企業の経営陣のコーチを引き受けながら、ビルは報酬を受け取らなかった。無償なのだ。もちろん彼自身はすでにいくつもの会社を経営したお金持ちには違いないが、しかしこれだけの仕事をしながら無償というのは信じられない。チームを作ることが彼のライフワークで、まさしく病気レベルである。

もちろん、チームを作るのは勝つためであり、しかも単に勝つのではなく大きく勝つためだ。ビルはとても勝ちにこだわった。

正直に言って、わしにはチームで勝つことにそれだけの情熱を持つということの価値観がよく分からない。でも、この本を読んで元気が出るのは間違いない。チームで大きく勝ちたい人のためだけでなく、個人で小さく勝ちたいひとにも、いい本だ。

★★★★★

 


1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ