円安が進んでいる。
わしはかねてから円安に賛成で、好ましい傾向だと思っている。
しかし、世間では円安がどこまで進むのか不安視する声が多い。ではいったいどこまで進むのだろうか。
ここからは、個人投資家としての感覚でお話させてもらう。理論的な裏付けはなしである。しかし、言わせてもらえれば、為替が理論値通りになったことなどいまだかつてないのである。これはすべての金融商品について言えることで、相場が絡むと(=人間の心理が絡むと)理論通りにはならないのだ。実体経済と必ず時期的なずれが生じ、さらにはオーバーシュートが生じるのだ。
さて円安とは、円の価値が下がることである。株で言えば、最高値を付けた銘柄が下降局面に向かう流れになったということである。ではこの下降局面の流れはどこまで続くのだろうか。
わしのこれまでの経験では、少なくとも3分の1まで下げないと下げ止まらない。格言にいう「半値八掛け二割引」というやつである。
だから円の価値も最高値から3分の1になるまで下がっても不思議ではない。
円が最も価値が高くなったのは、2011年の1ドル=75円である。円の価値が3分の1まで下がるということは、単純計算で1ドル=225円である。
おそらくここまで下がって、ようやくすべての人が「いくらなんでも下げすぎ」という感覚になる。そこで明確に反転するだろう。以後、これ以上に下がることはなく、だらだらと200円近辺でふらふらし、やがて円高に戻る。
どのくらいで戻るのだろうか?
わしの経験ではおおむね下がった分と同じくらいの時間がかかる。円が最安値になるのは、いつになるのかわからないが、おそらくここ数年内であろう。最高値になった2011年を起点と考えて、仮に2年後の2026年に最安値になったとして、15年かかっている。だから、また15年後に円高のピークになると考えるのが妥当ではないか。そうすると、2041年である。
ここまで先になると、そのころ世間では円安心理が定着して、円高時代の感覚はまったくなくなっているんだろうな。
今後、日本経済はどうなるのであろうか。
通貨が高いときというのは、じつは不況のときである。不況というのはお金が回っていない、つまりお金が足りない状態だ。お金が少ないからお金の価値が高くなって、通貨も高くなるのである。したがって、これはまったくよろしい状態ではないのだ。2011年は東日本大震災が起こり、民主党政権下で株価も下がり、経済はひどい状態だった。だから円は最高値をつけたのだ。
好況になると、お金が回ってお金が十分にあるから、通貨の価値が下がる。だからいまの円安は、お金が回っている状態を表しているから、よろしいのである。(緩和的であるということである)。
円安の原因として、日本の国力、技術力の低下をあげる声も多い。
わしの感覚では、これは正しくない。日本経済が目覚めて、良くなったから、通貨が下がっているのである。
すでに日本経済は攻撃的なムードに転換している。投資をどんどん行うだろう。新しい技術にも果敢に挑戦するだろう。日本のあちこちにこれまでの常識を疑うような新しい姿勢があちこちに見える。
もうひとつよろしいのが、従来の日本では製造業などの物質的なものしか外国に輸出してこなかったし、できなかった。しかし、いまでは日本の文化は世界中で受け入れられている。これはどういうことかというと、普通の日本人の生活そのものが、魅力的で、商売になるということである。つまり、非常に多様な商売のネタがあるということである。それらは物質的でなく、無形のものが多くなる。これはとてもよろしいことである。
円安が進むと、海外の通貨が魅力的に見える。それを獲得しようと日本人は外に打って出るようになる。海外への移住も増えるだろう。ここ30年間、内向きだった日本人が、また外に目を向けるということである。外に目を向けるどころではない、熱視線を向けるようになる。なにしろ、なんであれ海外に持っていくだけで日本の何倍も儲かるのだから。
経済がよろしいのに、しばらくはずっと円安が続き、ますますお金がたまる。給料は、世界レベルに近づくために、いま以上に上がるだろう。もちろん株も上がる。
そうして、十分なお金をためたところで、円高になり、次の世代、ちょうどいま生まれた子どもたちは非常にいい思いをするだろう。
わしは日本の未来に楽観的だ。ぜひとも日銀、政府には緩和的な金融政策を続けてもらいたい。
まあ、心配があるとすると、地震かな。南海トラフのような壊滅的な地震が起きると、歴史的な潮目が変わる可能性がある。そのときに日本がどっちに向かうか、わからない。
(米ドル/日本円の為替レートの推移 より)