ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

パンデミックなき未来へ 僕たちにできること

ビル・ゲイツ 訳・山田文 早川書房 2022.6.20
読書日:2023.2.4

ビル・ゲイツがコロナの次のパンデミックを抑えるために、世界的な仕組みを作らなければいけないと主張する本。

ビル・ゲイツは以前から感染症に興味を示していて、すでに2015年にはTEDでパンデミックの危険について訴えている。こうした訴えは、当時はさほど世間に響かなかったであろうことは想像に難くない。しかし、パンデミックが実際に発生してしまった今では、ビル・ゲイツの言葉を聞こうとする機運も高まっているのであろう。ビル・ゲイツが3冊目の本を書いたのはこういうわけであることは容易に想像できる。

世界中に火災に対処する消防の組織があるのに、パンデミックに備える専門組織がないのはなぜか、とビル・ゲイツは訴える。パンデミックはすぐに国境を超えて地球全体に広がるので、その予防組織は当然ながら地球規模の組織になる。そういう組織はないことはないが(例えばGOARN:地球規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク)、すべてボランティベースであり、国際社会から権限を与えられている組織はひとつもないのだという。

そこで、ビル・ゲイツが提唱しているのが、GERM(グローバル・エピデミック対応・動員)チームと呼ぶ組織で、予算の規模は年間10億ドルで、3000人の常勤職員がいる組織である。この組織は常に感染症に警戒し、どこかで感染症アウトブレイクしたら、それがパンデミックに至る前に素早く抑え込むという、まさしく消防の役目をする組織である。

GERMには、1)アウトブレイクを検知する仕組み、2)素早く解析しワクチンをや対応薬品を作って配布する仕組み、3)感染が広がるモデルを作り国境封鎖やロックダウンなどを提言する仕組み、などが必要なのだという。この本にはそういうことに関して、細々といろいろ書いてある。

なんともごもっともなお話で、ぜひ実現してもらいたいものだ。日本政府が提唱して、本部を日本に置くように提案するのもいいかもしれない。日本の国際貢献はむちゃくちゃ高くなるだろう。

というような内容がいろいろ書かれていて、なかなかよろしいのですが、実はこの本は読んでいてちっとも面白くない。マジ、面白くない。これがビル・ゲイツでなければ、誰も読まないんじゃないかというくらいつまらない。これぐらいワクワク感が欠けている本も珍しい。

ビル・ゲイツは野心的な目標を設定して、目標を可能にする戦略を策定して、戦略を実行可能なタスクに分解して、それを愚直に実行する、ということが得意な人なんだと思います。でも、ワクワクするような野心的な目標のはずが、ビル・ゲイツに表現されると、まるでやらなくちゃいけない学校の宿題のようにつまらなく感じられる。かつてマイクロソフトのウィンドウズやオフィスのプロジェクトが、必要だけどちっとも面白く感じなかったように。

もしかしたら、ビル・ゲイツは、その生真面目から、この本を自分で書いているんじゃないかしら。自分で書かずに、ぜひゴーストライターを使うことをお勧めしたいなあ、と思うのです。

★★★☆☆

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ