上田岳弘 角川書店 2022.3.29
読書日:2022.7.3
(ネタバレ注意)
これまで3社の上場に成功し一生困らないだけのお金も貯めた上場請負人の会計士、行先馨(ゆきさきかおる)が、人間からはみ出した存在UEH(未確認生存人間、なんか霊的な存在)の集団の一員の候補に選ばれ、そのグループのメンバーとポーカーで面接を受ける話。
わしは前から言っているように、依存症、とくにギャンブル依存症に興味がある。この本の書評を読んだときに、主人公が「スタートアップの上場請負人で成功したが、心に空虚さを抱えてギャンブルをする女性CFO」ということで、投資趣味とギャンブル依存症の両方が入っているのか、と思って読んでみようと思った。
…ということだったんだが、読んでみたらまったく予想と違い、できの悪い伝奇小説みたいな話だった。
なんでも、UEH(Unidentified Existing Human)とかいう昔の人の魂が乗り移ったような人たちがいて(例えば始皇帝の生まれ変わりのような人がいたりする)、彼らがいろんなクラスターを担っているそうで(例えば、錬金クラスターとか運命クラスターとかがいる)、引力クラスターが欠落したのでその候補を探しており、それに値する人が呼ばれてメンバーとポーカーをするらしい。どうもこれが面接のようなものらしいのだが、ポーカーも盛り上がらないし、主人公は面接にどうやら落ちたみたいだし、なんとも盛り上がらない。クラスターの皆さんは、なんか地球の運命を担ってるふうなドヤ顔で雰囲気を漂わせているけど、実際にポーカー以外に何をやっているのかさっぱりわからないし、なので引力が欠落したらいったいどうなるんだ、ということもさっぱりわからない。
で、結局、お金いっぱい持ってるせいか働く意欲もあまりなく、ペットの猫も死んで代わりにスマートスピーカーに話しかけ、子供ができない身体なので子供はおらず、結婚していないので家族もおらずで、空虚さ満載の女性が、空虚な集団に見込まれて空虚な面接を受けたけど、結局何も起こりませんでした、というようなお話です。
でもまあ、人間の心の空虚さを書いている部分に関しては、さすがに作家だから文章としてはよく書けていると思うのですがねえ、でもクラスターさんたちがねえ…。(そもそも、クラスターって何を意味しているのかさっぱりわからないんですけど。クラスターという言葉の意味を勘違いしてるのでは?)。
ひとつだけ気になったのが、カードを配るマミヤさんがカードを自在に好きなように出せる人みたいなので、あのクラスターさんたちがやっているポーカーゲームって出来レースだったのかしら、ってところかな。そうだとすると、ますます何やってるんだということになるんだけど。
まあ、どうでもいいかな。(それにしてもこんな本が新聞の書評に取り上げられるのがなんとも理解できない。)
★☆☆☆☆