ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

事業拡大意欲が強すぎるお寺

わしは地元を出てずっと帰っていない。郷土愛が足りなさすぎる。

しかし、そういうわしの悩みは、実家のお墓のことだったんだよね。なにしろ、兄弟はばらばらに散ってしまっているし、長男のわしがなんとなく遠隔で面倒を見ていたけれど、わしが死んでしまえばお墓の面倒をみてくれる人がいなくなる。ちなみに、姉が地元に残っているんだけど、お墓にはまったく関心がない。

あるとき墓守をお願いしていた人から、もう辞めます、と連絡があった。仕方がないので、新しい墓守を探そうと思って帰郷したら、なんとお墓が崩れていてびっくりした。

その少し前に地震があったんだよね。震源地から離れているから特に気にしていなかったんだけど、墓地のある山は地盤が悪かったのかけっこうたくさんのお墓が崩れたらしい。慌てて石材店に連絡したら、もう順番待ちの状態(笑)。わしの順番は来年、と言われてしまった。

しかし、待っている間に、これは墓じまいのいい機会かもしれないと考え直した。その数カ月後に、親戚の葬式があって兄弟が集まる機会があったが、このときに墓じまいの相談をしたら、べつに構わない(というか関心がない)ということだったので、墓じまいを進めることにした。

墓じまいをするとなると、お墓に入っているお骨の行き先を決めなければいけない。ネットで永代供養してくれるお寺を探して話を聞いてみることにした。2つの寺院が良さそうなので、連絡を取ろうとしたら、1つは直ぐに連絡がついて返事が来たが、もう1件はなぜかまったく連絡が取れなかった。仕方ないので、この1つの方、H寺に話を聞きに行った。

H寺は小さなお寺だったが、寺のそばに納骨堂を建てていた。そこで毎日3回お経を上げているという、70代と思しき住職のOさんは気さくにプランを教えてくれた。納骨の料金(志納金)はかなりリーズナブルだった。普通、毎年の管理費とかがかかるものだが、ここでは一度納骨をするとそのような管理費は徴収しないという。その代わり、お参りに来た際は、住職にお経をお願いして、お布施を納めてもらい、それを管理費として賄っているという。また多くの寺では管理費を払う人がいなくなると骨を集めて合祀するのが一般的だが、H寺ではそれは行わず、ずっと納骨堂の同じ場所から動かさないという。(多分この約束はこの住職が亡くなったあとには変わってしまうのではないかと思うが、まあわしは気にしない)。

墓じまいをする墓地は市の管理だったので、いろいろ手続きが面倒なのだが、その辺も教えてくれた。墓地は更地にして市に返さないといけなかったが、大手石材店の見積もりが高すぎるとぼやいたら、値段を聞いて、「それはぼったくりですね。たくさんのお墓が地震の被害にあったので、強気の価格設定なのでしょう」といって、「私の知り合いの石材店が一番安いですよ。すぐに墓地に見に行かせて見積もりを電話させます」という。

すると本当にその日のうちに石材店から電話が来て、大手石材店のきっかり3割引の値段を提示してくれた。大手石材店の見積もり金額をOさんに教えていたので、その値段から機械的に割り引いただけなのではないかと疑ったが、まあ、安いことは間違いない。

ともかく、H寺は、他の寺にないリーズナブルな値段設定、維持費はかからないという子孫に迷惑がかからない明らかなメリット、未来永劫骨は合祀しないという顧客の不安もなくし、さらには墓じまい、納骨にまつわる周辺のサービスも行き届いている。

うーん、なんて起業家精神にあふれたお坊さんなんでしょう、とちょっと呆れるくらいだった。これで人気が出ないはずがなかろうと思った。事務所のホワイトボードにはその月の予定が書いてあったが、予約がたくさん入っているようだった。

何も考えずにここにしようと思った。

後日、お骨を納骨したとき、納骨堂の斜め前の空き地をさして、「この土地を狙っとったんですが、値段が折り合わずだめでした。第2納骨堂を建てようと思ってたんですわ、わははは……」と笑っていた。

事業拡大を虎視眈々と狙っていて笑える。

なぜ納骨堂事業を始めたのかと聞いたら、「無縁仏が出ないようにという、ただそれだけの思いでやっているのです」という。たいへん立派な志だが、でも絶対に事業を起こすことを楽しんでいるだろうな、この人は(笑)。いろいろとんでも経験をしていて、それを愉快そうに語ってくれて、その話も面白かった。まあ、もう会うこともないかもしれないけど、知り合えてよかった。(たぶん、お参りにはほぼ行かないだろう)。

なにはともあれ、お墓の処分がはっきりついて、気分は晴れやかだ。お墓のことがこんなに精神をさいなむとは、知らなかったなあ。なんか足取りが軽くなった気がする。

(おまけ)
ネットで永代供養のお寺を探すのに「いいお墓」を使った。このサイトを運営しているのは鎌倉新書(6184)という会社で、じつはわしは株主だ。大昔に買ってもうほとんど売ったのだが、いまでも少しだけ持っている。でもずいぶん安くなっちゃった。お墓関係では最強のネット会社だと思うんだけどなあ。いまが買いどきかしら?

 

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