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インタビュー ジョン・フォード 全生涯・全作品

P・ボグダノビッチ 訳・高橋千尋 九藝出版 1978.4.28(復刻版は文遊社、2011年)
読書日:2026.5.28

大映画術で扱われなかったボグダノビッチ(ボグダノヴィッチ)によるジョン・フォードのインタビュー。

「大映画術」という本を読んだ。

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ところがこの中にジョン・フォードがいなくて物足りなかった。調べてみたらジョン・フォードだけは別に1冊の本になっていたのだった。で、せっかくだからすぐに借りてきて、読んでみた。図書館にあったのは、現在販売されている復刻版ではなくて、オリジナルの九藝出版のもの。この本の装丁がいいなあ、と思っていたら、和田誠だった。この装丁は復刻版とは違うので、ここに写真を載せておく。ジョン・フォードの雰囲気がよく出ているよね。

ジョン・フォードも、「大映画術」のほかの映画作家と同じく、サイレント時代からトーキー、カラー化、ワイド化の技術的な変遷を生き抜いて、映画の地平を切り開いてきた映画作家だ。その多くが西部劇で、モニュメントバレー周辺はジョン・フォード作品の聖地といってもいい。

この時代の他の作家と同じように、非常に短期間に大量に映画を撮っていた。しかし、スタジオに属している監督だから編集権はない。いろいろ切り刻まれたり、おかしなシーンを挿入されたりして憤慨することも多かったようだ。なので、撮影が終わるとヨットで海に出て、編集に関わらないようにしていたらしい。

もっとも、古い時代の監督はフィルムが貴重品だったので、無駄なフィルムは撮らないという習慣ができていたらしい。だから編集のしようがなくて、おおむね監督の意図通りの映画になっていたようだ。

同じように予算内にきちんと収まるように制作することに気を付けていた。そして制作費が回収できるかどうかをいつも気にしていた(気にしない監督はいないと思うけど)。映画会社にとっては、予算を守って収益も読める良い監督だということになる。きっとここがずっと生き残ってきた理由の一つなのだろう。

もともと低予算の映画をたくさん作ってきた人なので、お金がなくても映画を作るコツを知っている。だから、大作で会社を儲けさせた後、超低予算で自分の本当に好みの作品を作っていたようだ。かつては会社はハリウッドにあり、いい意味のどんぶり勘定が働いていたのだ。ところが、後年は経営の実権がニューヨークに移ってしまい、このようなことができなくなった、と嘆いている。

物語の傾向としては、敗者を扱うことが多かったようだ。つまり、西部劇といっても単純なヒーローものではなかった。ボグダノビッチは、それを「敗北の中の栄光」と呼んでいる。敗北するおろかしい軍隊も扱うし、厳しい試練に直面し敗北する個人も扱っている。こういう敗北者を扱う傾向が、日本人にもあっていたのかもしれない。日本でもジョン・フォード作品は人気があったようだ。

また、先住民の人たちについても、彼らは非常に文化的に洗練された人たちで、「われわれ白人は、インディアンに対して、嘘をつき、盗みをし、殺人を犯し、虐殺をほしいままにし、考えられる限りの悪行を働いた」と言っている。こういう発言は現代では珍しくないかもしれないが、1966年当時このくらいはっきり言うのは珍しかったのではないだろうか。常識的な正義感がうかがわれる。(インタビューでは、自分くらいインディアンを殺した人間はいない、とユーモアを交えている)。

このような姿勢は、冷戦下の反共運動の中で起きたハリウッドのアカ狩りへの反応にも現れている。 監督組合の会長をアカと断定し罷免を主張するセシル・B・デミルに対して、最後に発言したジョン・フォードが反対意見を述べて、会場の空気を一変させたという。 その言い方が、「C.B、お前が嫌いだ」という感じで(笑)、彼のざっくばらんな気質を現している。

などと、書いてきていたにも関わらず、実はわしは、西部劇を面白いと思ったことがない(苦笑)。なので、いまいち、ジョン・フォードがこんなに評価されているということに実感がないのであるが、インタビューを読んで、ちょっと興味を持った。なにしろ「敗北の中の栄光」だからな。味わうにはそれなりの人生経験が必要なのかもしれない。さいわいジョン・フォード作品は多数配信されているから、見るのに苦労しない。

ところで、ジョン・フォード自身は、自分にどんな才能があって、厳しい映画の世界を生き抜いてこられたと考えているのだろうか。本人によれば、それは「構図を決める目」なんだそうだ。自分が持っているのはそれだけだというのである。

この文章を読んで、思い出したのが、スピルバーグの自伝的作品「フェイブルマンズ」のエピソードだ。

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ここで、若き日のスピルバーグがハリウッドのスタジオを訪れた際、ジョン・フォードと対面するシーンがある。ジョン・フォードがスピルバーグに授けたアドバイスがこれだ。

 ――地平線が下にあれば面白い。地平線が上にあれば面白い。だが、地平線が真ん中にあると、死ぬほどつまらん。わかったらとっとと出ていけ! 

これが、「人と同じあたりまえの映画を撮るなよ」というふうにも取れないこともないが、わしは単純に構図のことを言っただけだと思うな(笑)。

★★★☆☆

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