岩尾俊兵 講談社 2024.1.20
読書日:2024.6.7
人生で起こることはすべて価値創造するという経営の思想で良くすることができると主張する本。
ここで取り上げられる人生の問題は、貧乏だったり、家庭のことだったり、恋愛だったり、勉強だったり、虚栄だったり、心労だったり、就活だったり、仕事だったりという人生で起こる様々な出来事なのであるが、対策は一貫している。
これらの問題はすべて何らかの管理をされないといけないのではあるが、著者は、これらは単なるマネジメントの問題ではないと主張している。つまり、ゼロサムの限りある資源を他人と奪い合うという発想ではだめで、パイを大きくするような新たな価値創造を行って、それを他人と分け合い、全体の幸福を高めるような発想がないとうまくいかないというのである。
例えば、虚栄の問題を取り上げると、お互いに虚勢を張ってマウントを取り合っても仕方がない、ここはお互いにいいところを褒め合うようにすれば、それは尊敬という新しい価値を創造したことになり、みんながよい暮らしができる、といった具合である。けっして、他人よりも儲かるとか良い暮らしができるとか、そういう他人と比較して優劣を争うような技法を伝授するものではないのである。
というようなことを、本人が新たに開発したという文体、「令和冷笑系文体」という特異な文体で書いているのだが、令和冷笑系文体ってなに? と聞かれても、実際に読んでいただかないとなんとも説明しにくい。「昭和軽薄体」(代表例:椎名誠)、という文体を令和に発展させたものなんだそうだけど、どうやら岩尾さんは、作家としても新しい文体の価値創造に貢献している……のかもしれない(笑)。
なぜこんな文体にこだわるのか。じつは本人はかつて文学を目指しており、新人賞に応募して結構いいところまで行った過去を持っているらしい。でも、それがうまくいかなくて、仕方なく経営学をやっているという、異色の経営学者なのだ。いまでも、文芸誌を購読していて、最近のトレンドの確認に余念がないんだそうだ。笑える。というわけで、文体にも独特のこだわりがあるらしい。
この本は、『日本企業はなぜ「強み」をすてるのか』がなかなか良かったので予約したんだけど、まったく異なる文体なので、本当に同一人物なのか、しばし疑いました。(苦笑)
★★★★☆