山口周 ダイヤモンド社 2019.7.3
読書日:2020.2.28
20世紀の価値観をいまだに引きずっているひとに、その発想では今後やっていけないと、24章に分けて説く本。今話題の山口周の、わしにとって1冊目の本となりました。
1つ1つの具体的な内容的はこれまでいろんなところで言われていることと大きく変わりはない。
例えば、どうやるかを考えるhowの時代から何をするかwhatの時代に変わった、とか、未来がどうなるかを予測するのではなく新しいフレームを構想しろ、とか、製品の意味を売れ(物語を売れ)、とか、まずギブから始めろ、とか、そういうことはこれまでにも90~00年代から散々言われてきたことだ。
しかし、わかっているのに日本ではちっともそれが進んでいない。山口さんはこの日本の現状を次のようにすごく簡単に説明する。
大きなトレンドとして、価値創出の源泉が「問題を解決し、モノを作り出す能力」から「問題を発見し、意味を創造する能力」へシフトしているという。しかし日本では、このシフトがうまくいっていないので、いま日本にはやらなくてもいいクソ仕事があふれかえっていて、意味のない仕事に日本人のほとんどが従事している、というのです。
この指摘は、とても説得力がある。わしの実感として、自分の1日の仕事のうち意味のある時間はせいぜい2時間ぐらい、という気がする。これはわしの感覚だが、みなさんの職場ではどうだろうか。
わしの実感が日本全国一律でそうだとは思えないけれど、なんだか当てはまっているような気がする。
ということであれば、日本人の生産性が非常に低いのも、一人当たりGDPが伸びていないのも当然なのである。
しかし例えば、就業時間を1日3時間に減らして給料はそのままだったとしても、ほとんどの日本人は困惑するだけだろう。空いた時間がたくさんできても、何をしていいかわからないはずである。
さらに言うと、日本人の多くはかなりいまの生活に満足していて、リスクをとってより多くの収入を求めるよりも、この生活がずっと続くほうが喜ぶのではないだろうか。なので、会社の利益を増やして大きくするように働くよりも、つぶれずになるべく長く持つような方向で働いているのではないだろうか。
この状況を考えるに、これはすでに日本ではベーシックインカム制度が実現されているということではないだろうか、という気がするのである。
何しろ、適度に働いて、生活費が出て、それなりに忙しく時間をつぶして生活できるのだから。もう全部そろっているではないか。あとは氷河期時時代の恵まれなかった人、不幸にして貧困に落ちてしまった人への配分を増やすだけである。
もしそうなら、山口さんが口を酸っぱくしてこのような提言の本を出版しても、今後も日本は改善しないのかもしれない。いまのままで、それなりに生活できるのなら、満足だからだ。
いまちょうど新型コロナウイルスの影響で、学校の2週間の休校が政府から要請されていて、会社も在宅勤務などの会社へ行かない勤務が推奨されている。この結果、会社へ行かなくても、さらにはあんまり仕事をしなくても、業務が回ってしまうことが全国的に発覚するのではないか、という気がする。もしそうなったら、この新型コロナウイルスの騒動がおさまったときに、日本人の働き方に変化が出るのだろうか。そのあたりに少し注目してみたいと思う。
★★★★☆