
浮谷東次郎 筑摩書房・文庫版 1990.8.26(オリジナルは1972.7.28)
読書日:2026.7.4
伝説のレーサー浮谷東次郎が中学3年(1957年)の夏休みに大阪までのバイク旅行をした旅行記と中学時代の日記をまとめた本。
浮谷東次郎と言えば、1965年に23歳で事故死した伝説のレーサーである。あまりにも生き急いだという印象の人生だが、中学時代の日記や旅行記を読んでいても、はやく大人になって一人前になって自由になんでもやりたいという思いが強くて、青いむき出しの感情が書き散らかしてあるという感じだ。
また、美人の女の子が大好きで、たくさんの女の子の名前が出てくるのも印象的。そしてオートバイなどのメカニックの話もたくさん出てくる。なにかを成し遂げたいという気持ちもたくさん書かれている。
そういうわけで、そんな中学3年生が、中学最後の夏休みにできることをいろいろ考えて、当時乗っていた50㏄のクライドラーというオートバイで大阪までの旅行を思いつく。当時は東名高速道路もなく、道のほとんどは砂利道だったし、田舎道でオートバイが故障しても修理は難しかったから、中学生がひとりで大阪まで行くというのはそうとうな冒険だったわけだ。
でも、たとえ道が悪かったとしても、単にオートバイを運転するだけだから、結局、2日で大阪に着いてしまう。それで、本人としては、これでは何も成し遂げていないのではないかと考え込む。
何より、オートバイは親に買ってもらったもの、旅費も親に出してもらったもの、大阪では叔父の宿泊していたホテルに泊めてもらっている。自分で稼いだお金でなければ、とてもやり遂げたとは言えないのではないか、と思い詰める。途中、道沿いにスイカを売っていた(かわいい)女の子と出会ったが、その女の子のほうが何かをやっていると言えるのではないか。
結局、自分の手で何かを「生産」しなければ、成し遂げたことにはならないと考え、帰ったら旅行記を書くことを自分に課すのである。それがこの本なのだ。親は市川市の大地主だったため、最初は私家本として出版された。
行きはたった2日だったが、帰りはあちこちに寄り道をしている。そしていろんな人とコミュニケーションを取ったりしている。例えば、宣教師のイタリア人ライダーと知り合いになって、そこの教会の宿舎に泊めてもらったりしている。途中で一緒に食べたカレーでは、ここは日本だからという理由で、そのカレーをおごったりしている。とても中学生とは思えない、何か堂々としているなあ、という感じだ。
でも、正直に言って、わしはこういうひとは苦手だな(苦笑)。
わしの中学時代はただぼんやりしていただけだったし、何かを成し遂げたいとかそんなことをあまり考えていなかった。昔の子供はいまの子供と比べてはるかに大人だったのだろうか。そういう気もしないでもないが、たぶんそうではないだろう。いつの時代でも、生き急いでいる人もいれば、ぼんやりしている人もいる、ということなのだろうと思う。
浮谷東次郎に関しては、高校時代やアメリカ留学時代の日記や旅行記なんかが本になっている。こんなに短い人生だったのに、たくさん本が出ている。それらも読んでみようかしら。
ところで、中学3年でオートバイに乗れるってどういうこと?、ということが疑問だったのだが、この時代は14歳で50㏄のオートバイの許可証(免許証ではない)が取れたのだそうだ。へー。
★★★☆☆

