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個人投資家目線の読書録

感じるオープンダイアローグ

オープンダイアローグ。一番オープンでいなくてはいけない者は?

森川すいめい 講談社 2021.5.1
読書日:2026.6.28

フィンランドの対話を中心とした支援によって、多くの人が薬や入院に頼らず回復できた事例が紹介されているが、特に精神科医の著者自身が導入に際して変化した体験談を書いている本。

森川さんのことは、自殺希少地域を訪ねた「その島の人たちは、ひとの話をきかない」という本で知った。

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自殺希少地域とは、自殺率が極端に少ない地域のことだ。自殺問題を考えるときには自殺率が高い地域を取り上げる傾向がある。そして、なぜ自殺が多いのかを考えてしまう。しかし、逆に極端に自殺が少ないところもあるのだ。そのような地域に共通の特徴があれば、自殺が少ない社会には何が必要なのか 、ということが分かるかもしれない。

最初、森川さんは、自殺希少地域の人たちは濃密な人間関係でおたがいを助け合っているようなイメージを描いていた。しかし、そうではなかったのである。実際にはこうだった。

・そうした地域は、人々の交わりがあっさりしている。
・しかし一人ひとりがコミュニケーションを取る相手がとても多い。つまりいろんな異なる性質の人とコミュニケーションを取ることに慣れている。
・個人の持っているネットワークが広いので、なにか困っている人がいると、自分ができないことでも、自分のネットワークを駆使して助けてくれる。
・しかし関わり合うのはその困っている問題だけで、それ以上に踏み込むことはない。 

という特徴があった。ちょうどこのころ、森川さんは、フィンランド発祥のオープンダイアローグについて学んでいるところで、オープンダイアローグの特徴に似ていることに気が付く。

オープンダイアローグには次の七つの原則がある。 
・IMMEDIATE HELP(すぐに助ける)
・SOCIAL NETWORK PERSPECTIVE(周囲の人たちの視点を取り入れる)
・FLEXIBILITY AND MOBILITY(柔軟かつ機動的に)
・RESPONSIBILITY(責務/責任)
・PSYCHOLOGICAL CONTINUITY(心理的継続性、積み重ね)
・TOLERANCE OF UNCERTAINTY(不確かな状況に寛容になる)
・DIALOGISM(対話主義)

なるほど、確かに似ているといえるかもしれない。オープンダイアローグにより自殺希少地域の状況を再現できれば、心理的な問題をかかえている人を救えるかもしれない。

ここで、ダイアローグと言っているけど、1対1の対話でないことに注意。実際には、本人だけでなく家族や支援者が同じ場で話し合い、結論を急がず時間をかけて対話を続けるという作業なのだ。医院側も事務職を含めた数人で、患者側も家族や周囲のひとに加わってもらう。すると、いろんな角度からの意見が出るだけでなく、患者側の人間関係の中に対話が定着するようになる。もしこのような状況に持っていければ、その人が抱えている問題を、周囲との対話そのものが自然に解決に向かう力学を生み出すようだ。

しかし、森川さんがこのオープンダイアローグを治療の現場に持っていくには、大変なハードルがひとつあったのである。じつは森川さん本人が、ぜんぜんオープンマインドな性格ではなかったのである(笑)。これには森川さんの生い立ちや父親との葛藤などの個人的な経験のために生じた、心の鎧のようなものであり、この鎧を外すのに、ひじょうに時間がかかったのである。

自分自身の心の鎧を外すには、それ自体、本人が対話的に解決するしかなかった。すでに両親は亡くなっていたので、妹や台湾の親戚を訪ねて対話をする、というようなことを重ねる必要があったのだ。なにより結婚して家族を持ったことが大きかったようだ。安心して心を開ける相手がいるということが重要だった。

こうしたオープンダイアローグを取り込んだ森川さんの医院は、すでに予約でいっぱいだそうだ。今後はオープンダイアローグを医院以外の現場に広げていくことを目指している。

医者自身が変化を求められるオープンダイアローグ。日本人にはちょっと難しいようにも思われるかもしれない。しかし、自殺希少地域のような例をみるかぎり、日本でも決して実現不可能ではないと思ったな。

★★★★☆

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