三田一郎 講談社 2018.7.1
読書日:2025.10.15
偉大な科学者の多くは神を信じており、科学による真理の追求と神を信じることは矛盾しないと主張する本。
三田さんはキリスト教徒で、かつては神についてそれほど深い信仰を持っていなかったが、宇宙理論を研究しているうちに、神の存在を信じるようになったのだそうだ。
なので、ここでいう神は、キリスト教(またはユダヤ教)の神に限定されている。つまり、「光あれ」と天地創造を行った神ということである。
しかし、聖書に出てくるような擬人化された神のことを言っているのではない。科学者が宇宙全体に共通の物理法則が貫いているという、そういう状態に畏怖の念を感じ取り、そこに何らかの主体の意志を感じ取ったとき、それを神と呼んでいるのだ。
まあ、そういうことなら、神という言葉を持ち出すかどうかは別にして、科学を学んだものはだいたい畏怖的なものを感じているだろうから、別に不思議でもなんでもない。でも、そういう感覚を持っている人がいると、どうも「この人は神を信じているに違いない」と決めつけることになりそうなのだ。
たとえば、ホーキングは神を信じていないと言っているのに、『いま私が感じているのは、ホーキングもやはり、物理法則は誰かが意志をもってデザインしたものであってほしいと考えていたのだなということです。彼がその誰かを「神を」と呼んでいたかどうかは別として。』などと三田さんは判断してしまうのである。これって神とは言い切ってはいないが、神と言っているのと変わらないだろう。
わしも物理法則にはそれなりに畏怖の念を感じるけど、誰かの意志が働いていてほしいとはまったく思わない。でもまあ、べつに働いていてもかまわない。どっちでもいいのでは? どうせ確認できないんだし。
そんな三田さんにご提案ですが、三田さんは次のSFを読んでみたほうがいいのではないでしょうか。ここにはまさにいろんな宇宙を創造しては、ちょっと違うなあ、という感じで宇宙を消滅させる創造主が出てきて、それに抗議する、という話が書かれています。
創造主はいてもいいけど、やっぱりそれに抗議するくらいの気概がほしいよね(笑)。まだお読みになっていないのならぜひどうぞ。
ところで、この本には、キリスト教徒とユダヤ教徒しか出てこないのですが、もう一つの兄弟宗教のイスラム教徒の場合はどうなるんでしょうか。
あまり有名なイスラム教徒の科学者がいないので、話題に登らなかったのかもしれませんが、たとえば今年、2025年のノーベル化学賞を北川進氏と一緒に受賞したオマール・M・ヤギ氏はパレスチナ出身で、ヨルダンとサウジアラビア(と米国)の国籍を持っています。ですから、イスラム教徒か少なくともイスラム教の考え方の影響を受けていると思いますから、彼の話を聞いてみたい気もしますね。まあ、多分、そんなこと誰も聞かないと思いますけど(笑)。なんかイスラム教徒には、こういう葛藤はあんまりない気がするけど、どうかな?
★★★☆☆

