ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト

森永卓郎 三五館シンシャ 2023.6.1
読書日:2024.6.4

財政均衡を絶対視する財務省はほとんどカルト集団と化していて、国民のほとんどが財務省に洗脳されていると主張する本。

わしは完全に森永卓郎の味方である。財務省増税路線を憎んでさえいる。

わしの周りの人にもまったく理解していただけないけれども、政府は基本的に赤字が正解である。民間にお金を回すと政府が赤字になるのはマクロ経済の正しい姿である。逆に政府が黒字になると、民間は不況になる。なので、これでいいのである。

そもそも国債を帳消しにするのは簡単だ。嘘だと思ったら、日本銀行が持っている国債を全部、政府に納めさせればよい。これで政府の借金は帳消しになる。お金において、貸している方と借りている方を帳消しにすると、必ず0になるのだ。

だが、わしがいくら政府の借金は民間企業や家庭や個人の借金とは違うと言っても、周りの誰も納得させることができない。これは非常に困難な話なのである。いや本当に。それは経済学者であってもである。(いや、経済学者の知り合いは一人もいないけど、本当にマクロ経済を理解できない経済学者はいると思う)。

マクロ経済を理解するには、なにか、アハ体験が必要なのだと思う。なにか微分積分を理解するときみたいな。分かってみればぜんぜん難しくないのだが、その壁を超えられる人はとても少ない。(MMTを理解するひとはさらに少ない)。

おかげで森永卓郎が孤立無援であることは、我がことのように理解できるのである。

しかしまあ、こういう状態には、わしは慣れたので、まあいい。

しかし、許せないのは、日本はすでに北欧と比べてもあまり変わらない重税なのに(国民負担率45%以上)、北欧の豊かな暮らしが全然実現されていないという事実である。森永卓郎でなくても、サービスの質の低さに呆れ返る。

教育は大学も含めて無料にするべきだし、そして生きていくのに必要な基本的なものは、無料にするべきだ。

まあ、放っておいても、人類はそっちの方向に向かうと思っているけど、加速することはできるはずである。

森永卓郎はこの本を出版するのに大変苦労したそうだ。なぜなら財務省に逆らうような出版社はそうはいないからだそうだ。ようやく出版してくれる出版社が出てくれて世の中に出すことができたそうだ。

なるほど、どうりで聞いたことがない出版社だ。リスクを冒した褒美かもしれないが、この本はベストセラーになっている。

***おまけ 野口悠紀雄について***

森永さんは財務省出身者が財務省を離れてもいかにザイム真理教信者になっているかについて、野口悠紀雄を例に上げている。森永さんはTVの討論会で国の借金は問題ないと主張しても、野口氏はけっして賛同しなかったという。

これについてはわしも既視感がある。野口氏はとても頭のいい人で、しかも必ず1次情報に当たって分析するという奇特な方なので、わしはある意味野口氏の主張を信頼しているほうである。

さらに野口氏は経済学の動きもチェックしていて、その最新動向にも目を配っている。MMT(現代貨幣理論)が評判になっていたときも、さっそくそれを解説してくれ、わしもそれを参考にした。

野口由紀夫はすぐに、MMTは何も間違っていない、ということを明言した。というか、MMTは経済学的には当たり前のことで、新しいことは何もないとさえ述べた。当時、MMTはそもそも間違っているという人が多い中では、その姿勢は突出していた。

しかしMMTのテーゼについては猛烈に反対したのである。それは次のようなものだ。
「自国で通貨を発行していれば、インフレーションが起きない限り、どれだけ国債を発行しても問題ない。インフレーションが起きれば、金利を上げるなどの通常の手順で通貨供給量を減らしインフレーションを収めればよい」

野口さんはもちろん、このテーゼ自体を間違っていると言ったわけではない。経済学的には正しいという。しかし実際にはうまくいかない、というのである。たとえば、教育や年金など、止めることができない政策について国債を発行して借金で賄うことにしたとき、インフレが起きたからといってその支出はやめることができないだろう。したがって国債を発行し借金を続けることになるから、通貨供給量を減らすことはできず、インフレは収まらないだろう、と。

つまり、経済学的にまちがっているからと反対するのではなく、運用する人間がそのとおりにできないという社会心理的な理由で反対しているのである。

わしはこれを読んで、反対論としては非常に弱いと思った。経済学的に間違っていないのなら、別の理由で反対するのではなく、それが可能な経済制度を提案するのが筋ではないか、と。

野口悠紀雄通貨供給量を減らす方法として財政支出を減らす方法だけを取り上げて反対している。しかし、インフレを抑える方法は財務的な方法だけではなく、日銀が金利を上げるなどの他の方法もある。さらに、これまでだってインフレを抑えるために財政支出を抑えたとしても、絶対に支出しなければいけない項目の支出を止めた例はないはずだ。つまり、これまでのインフレを制御する手法で十分なはずなのである。

というわけで、わしには野口氏のMMT政策反対論はとても奇異に思えたのである。しかし、野口氏がザイム真理教の信者というのなら、まあ、納得できる話ではある。

★★★★★

にほんブログ村 投資ブログへ
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ