ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

スモールビジネスの教科書

武田所長 実業之日本社 2022.4.7
読書日:2022.7.1

新しいビジネスモデルを作るのではなく、すでにあるビジネスモデルで、大企業が相手にしていないセグメントの顧客に特化したビジネスを行うことで数百万〜100億円程度の成功率の高いビジネスができると主張する本。

起業をする気がまったくないのに、起業の本を読むのが好きなヘタレイヤンです。たいへん恐縮です。

しかし、起業の本を読んでいくと、いろんな立場のいろんな規模の起業の本があり、それこそ月数万円の副業レベルから、日本を飛び出して世界を目指すような起業まで、いろいろです。わしが読んだ本の中には普通の株式投資すらも起業に含んでいるようなものもありました。でも、それはないよね。株式投資と起業は違うって(苦笑)。

この本では、自分が幸福になれる規模のスモールビジネスを、上場は目指さず自分の自己資金で行うことを基本にします。では何をビジネスにするかと言うと、クールでかっこいいビジネスモデルや自分のやりたいことではなく、世の中にすでにあり、お客がお金を払うことが確定しているビジネスを選ぶのです。そういうモデルはすでに上場している大企業が確立しているものですが、しかしこのような大企業では対象のセグメントをある程度絞っており、対象外に置かれているセグメントの顧客がたくさんいるといいます。このようなセグメントを狙うのです。

このような捨て置かれている顧客に対しては、たとえば値段が低くなるだけでも効果があるといいます。なぜ値段を下げられるのかと言うと、先行企業がすでにいろいろ失敗してくれているので、その失敗を避けられるから安く作れるし、大企業では社内の間接費や固定費をいろいろ上乗せしているからそもそも安くできないからです。

大企業と同じ内容でも、地方の企業に持っていくだけでも相手は感動するといいます。このような地方には提案などほとんど来ないからだそうです。

で、あるセグメントを掴んだら、属人的な壁を設けてライバルが入ってこれないようにするといいます。商品にそのセグメント特有のちょっとした機能を設けることはありですが、大きな機能の追加は大企業がすでにやっていて成功することが分かっている場合のみ行うのが良いようです。

さらに継続的にそのセグメントを離さないようにします。なぜなら新しいセグメントを開拓するのは大変だからです。でもどうやったらそれが可能なんでしょうか?

そのためには不満(ペイン)解消型のビジネスではなく、相手の欲望を利用するんだそうです。なぜなら不満解消型ではペインが解消すればそれで終わりですが、欲望は長く使えるからだそうです。顧客にあるやりたい目標があると、最初の小さな第1ステップを提供するだけでも飛びついてくる可能性があるといいます。とくにそれが安い場合には。そこで、相手が払える範囲の第1ステップの商品を作り、それが効果をあげると第2ステップ、第3ステップと徐々にステップアップさせるという戦略が、欲望を中心に長くビジネスを構築する方法なんだそうです。

なんかわしはこの部分を読んで、思わず「詐◯…」という言葉が浮かんだくらいですが(笑)、なかなか鋭い指摘と言えましょう。

セグメントを選んだり最初の商品を企画するときには、相手の立場になって相手の心理状態がすべて把握できるくらい徹底的に調べ尽くして、シミュレーションを行います。

でも相手によって使う言葉が違うのでその言葉を覚えたり(例えば顧客に対してと銀行に対してで言葉が違うとか)、有名な経営上のフレームワークを使えるようにしなくてはいけないとか、やっぱりなかなか大変です。規模は小さくても、労力は結構かかるし。でも、きっとこれはどんな起業にも付き物なんでしょう。

なにか新しいことを考えるよりは、大手と同じビジネスモデルのマイナーチェンジで、どこを攻めるかという視点を変えるだけで成功率がぐんと上がるというのは、とてもとても賢いと言えるでしょう。

★★★★☆

 

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