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アニメを作ることを舐めてはいけない ―「G-レコ」で考えたこと―

富野由悠季 KADOKAWA 2021.3.26
読書日:2025.6.16

ガンダム富野由悠季が「Gのレコンギスタ」制作で考えた、設定資料などを載せた本。

Gのレコンギスタ」はTV版は2014年だけど劇場版は2022年まで5部作が作られているそうだ。これは観ていないけど、ときどき富野由悠季の本が読みたくなるので、読んでみた。アニメの創作者に興味があるんだね。といっても、富野以外はほとんど押井守だけど(笑)。

富野由悠季は子供の頃から宇宙旅行に憧れがあったらしい。父親も化学者だったらしく、戦争中は軍需関係の下請け仕事をしていて、風船爆弾を作ったりしていたらしい。本人もこのような科学関係にあこがれていたから、宇宙研究者とかロケット工学者になりたかったらしいのだが、数学は2次方程式からわからなくなり、化学方程式もさっぱりわからなくて理科系は断念したのだとか。

そういうわけなので、宇宙にはとてもこだわりがあるらしく、Gレコの制作でも事前の初期設定は詳細に検討している。Gレコには宇宙エレベータが出てくるみたいなんだが、その模型を作って、いったいどういう構造にしたらいいのかなどを検討したりしている。

模型はともかく、文章で設定を書いているんだけど、わしだったらアイディアだけを箇条書きにするところだけど、富野由悠季は、なんと長い論文のような文章を書いているのだ。A、Bバージョンの2つがあるけど、Bバージョンはページ数にして実に50ページくらい。もしかしたらこんなふうな文章という形でしか考えをまとめられない人なのかもしれない。ちょっと珍しい。

もちろん、辻褄が合わなくなって、いろんなウソを連発している。富野のウソで有名なのは、ガンダムで出てきたレーダーを無効にするミノフスキー粒子だけど、今回もこのミノフスキー粒子の物理的特性をでっち上げて、なんか重力を制御するみたいなことが書いてある。他にもエネルギーを蓄えるフォトンバッテリーとか、他にも物質を圧縮して持ち運べるカプセルのようなものを考案して、嘘八百に磨きをかけている。ちなみに、大学で講義していると、学生から「ミノフスキー粒子って本当にあるんだと最近まで信じていました」という学生が現れて、驚いたそうだ(笑)。

これだけいろんなことを細かく考えているのに、実際にアニメにして動かしてみると、いろんな想定外なことが出てきて、妥協しまくりである。メカはデジタルで作るんだそうで、デジタルのモデルを作っている人が、「これではメガファウア(宇宙船)がナット(宇宙エレベータの途中にある施設らしい)に入港できません」と言ってきた。たしかにメガファウアのほうがナットよりも大きい。結局、ナットの大きさを5倍にして、入港できるようにしたらしいんだけど、まあ、誰も気にしないでしょう。岡田監督の「いいじゃない、入らないと困るのだから」という言葉には笑った。デジタルでなくてアナログ制作の時代だったら、作っている方も最初からまったく気にしなかったでしょうね。

というようなこと以外にも、いろいろ書いてあるんだけど、まあ、これを読んでいる限りは、Gレコはあまり面白くなさそう(苦笑)。本編は見ないかな。

富野さんにとっては、これが最後の作品になるのでしょうか。もう、今年の11月で84歳ですからねえ。

ちなみに普段からいろんな本を読みまくっていて、マルクス・ガブリエルの「なぜ世界は存在しないのか」についても言及している。うーん、わしとちょっと似ているかも。

★★★☆☆

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