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伝説のファンドマネージャーが教える株の公式

林則行 ダイヤモンド社 2010年9月17日
読書日:2011年09月15日

こんなに首尾一貫した株式投資の方法は初めて見たかも。結局、株とは人気投票で、企業の実力だけでは決まらないことを著者はよく知っている。

ものすごく成績がいい会社でも株価が低迷している会社はたくさんある。このような会社は狙わない。そこですでに投資家に発見されて人気化しかかっている銘柄を狙う。つまり新高値をつけた銘柄だ。そのなかからダントツに優れた銘柄が必ずあるので、その中からぴか一の銘柄を選別する方法が述べられている。

わたしも試してみたが、新高値をつけた銘柄の中には、確かに、年率20%以上利益が増えている急成長企業で、今後も(少なくとも数年は)急成長が続きそうな銘柄は、かなりの確率で見つかった。

著者の独自性は、発表資料を鵜呑みにするのではなく、四半期ベースでの業績に分解するところだ。たしかに一見のびているが、直近の四半期の成績が伸び悩んでいる銘柄がいくつもあった。そして、そのような銘柄が人気化しているのは、著者の言うとおり、直近の業績不振に気がつかない一般投資家がたくさんいるからに違いない。著者の銘柄探索のレシピは明確だ。

しかし実は新高値に注目するのは目新しい方法ではない。(四半期ベースの成績に分解するという新規性はあってもだ)。私がうなったのは、売りのタイミングの正確な測り方である。これも現実の株の動きだけを参考にする。つまり、株は人気投票であるから、売り株数と買い株数を見積もって判断する。「売り株数/買い株数」が売り圧力だ。この指標は著者独自のもので、その推定方法も理にかなっている。迷う余地はまったくない。

つまり銘柄の選定から売りのタイミングまですべて同一の価値観、つまり買われる株は上がり、売られる株は下がるという、当たり前のことを公式化したもので、本当に機械的に投資できる。

著者は買値より8%下がったら理由のいかんに関わらず、必ず売ることを推奨している。ちょっと厳しい基準で、新高値をつけた銘柄を買うときには厳しいかもしれない。なぜなら新高値をつけた銘柄は、以前に買った投資家が「やっと買値に戻った」と売ることが多いからだ。いわゆる「やれやれ売り」だ。なので3,4%いったん下がっても不思議ではない。ここで日経平均が大幅に下がる局面だと簡単に8%程度下がってしまうことがある。買ったばかりでこれは辛い。それでも著者の言うとおり、いったんは売ってしまうべきだ。もっと下がるかもしれないのだから。ここで迷ってはいけない。機械的に処理すべきである。

こうなると、すべては機械的だ。あまりに機械的なので、著者は仕事とはいえ投資に退屈しないんだろうかと心配になってくる。著者は自分の知見を広めるために、株に関わらずいろいろな本、記事を書いている。共通するのは、単純な原理に則った公式化である。このようなさかんな著作活動はもしかしたら投資の退屈さから離れるためなのかもしれない。投資はできるだけ単純化、機械化して、あまった時間を有意義に使うべきだという著者のメッセージなのかもしれない。

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伝説のファンドマネージャーが教える株の公式

 

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