ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

全滅領域

ジェフ・ヴァンダミア 訳・酒井昭伸 早川書房 2014.10.25
読書日:2025.7.6

(ネタバレあり。注意)

生態系がおかしくなった〈エリアX〉という謎の領域があり、少しずつ拡大している。監視機構〈サザーン・リーチ〉は何度も〈エリアX〉に調査隊を派遣しているが、無事に帰還した隊はいない。派遣された隊員は変容を起こし、一人ずついなくなっていき、全滅してしまう。夫が第11次調査隊に参加した生物学者は、第12次調査隊に志願するのだが……。

この作品は前からちょっと気になっていました。映画にもなっていますが、映画化にあたって内容は変えられているだろうから原作を先に読もうと思っていて、このたびようやく読んだ次第。

物語は、名前不詳の「生物学者」の一人称で語られます。

謎の組織、監視機構〈サザーン・リーチ〉は〈エリアX〉へ調査隊を送るわけですが、これまで無事に帰ってきた調査隊はいません。ですから、調査隊に参加するのは自殺するのと同じわけです。第3次調査隊ぐらいまでなら、けっこう危険なんだ、ぐらいですんだかもしれませんけど、すでに二桁ですからね。もう絶望的に危険なわけです。こんな危険な任務に志願しようなどとは普通、誰も思わないわけです。

そうなってくると、そもそもなぜ志願するのかという理由付けがないと、なかなか納得できません。そういうわけで、なぜ生物学者が参加したのか語られます。(というか、この小説のかなりの部分は回想なの)。

で、その理由は夫が第11次調査隊に参加していたから。なるほど、まあ、いいでしょう。ではその夫はなぜ志願したのか。友達に説得されたからだそうです(笑)。夫の動機はなんか軽い。

それで、志願した夫はどうなったかというと、じつは〈エリアX〉へ出発した後、しばらくしていつの間にか二人の住まいに帰ってくるのです。気がつくと台所に立っていて、冷蔵庫の中身をがつがつ食べていたのです。おそらくそこまで何も食べずに歩いてきたのでしょう。

しかし、すぐに生物学者は、この夫が抜け殻のイミテーションだと気が付きます。それを確認するためにセックスまでしてみるのですが(苦笑)、それは気の抜けたものだったそうで、ますます偽物だと確信し、監視機構に連絡して夫を引き取ってもらいます。その後、その偽物の夫は、全身がガンに罹って数カ月後に亡くなってしまったそうです。

そんなことがあって、生物学者は〈エリアX〉とはなにかを自分の目で確かめるため、そして本物の夫はどうなったのかを知るために、志願したのです。

こうして第12次調査隊は、心理学者をリーダーに、人類学者と測量技師、そして生物学者の4人で〈エリアX〉に入ります。この4人の間でいろいろ確執があったりするのですが、まあ、この辺はどうでもいいかな。リーダーの心理学者が、隊員たちに暗示をかけて隊員たちを心理的にコントロールしているとかいったことが語られますが、そのへんはイマイチです。(結局、生物学者以外は全員死にます)。

この〈エリアX〉はかなり広い領域のはずなのですが、物語はたった2ヶ所しか舞台になりません(笑)。生物学者が〈塔〉と呼んでいる、塔のようなものが空の上方向ではなくて地下に向かって伸びている、逆さの塔のような場所と、もうひとつは海岸にある〈灯台〉。塔と灯台の間には汽水の湿原があり、この湿原を何度か行き来します。

調査隊は地図にある灯台を目指していたのですが、途中、地図に載っていない塔を発見し、塔の調査を行うことにします。地下に向かって壁沿いの階段を降りていくのですが、塔の材質はまるで生物のような感じで、なにか振動のようなものが伝わってきます。それ以上に怪しいのは、壁にコケで作った筆記体の文字があり、その文字は判読可能で、聖書に出てくる詩のようなものが書いてあったのです。生物学者はコケのサンプルを取ろうとして、うっかりコケの胞子を吸い込んでしまい、その結果、生物学者の変容が密かに始まります。

壁の文字は、〈クローラー(這うもの)〉と名付けた謎の存在が作り出しているのだとわかりますが、この塔がなんなのか、なぜクローラーが文字を壁に作っているのかなど、まったくわかりません。

舞台は灯台の方に移り、そこには灯台守の写真と、かつての調査隊の膨大な日誌が残されています。かつての調査隊は灯台を拠点にしていて、その結果、日誌が残されているのです。なぜ日誌だったかというと、それ以外の記録方法は禁止されているからです。理由は不明ですがかつて電子機器の記録装置で記録したところ、問題が起きたからだそうです。(なので、この本は生物学者の残した手書きの日誌ということになっている。灯台守の写真からは、クローラー灯台守のなれの果てらしいことが分かる)。

生物学者は膨大な日誌(明らかに12の調査隊以上の分量がある)の中から、夫の日誌をみつけ、その中から、この〈エリアX〉の何かの力で隊員たちのドッペルゲンガー(偽物)が出現したこと、夫が小舟で移動したことを知ります。

生物学者は、胞子を吸った影響で、すでに身体の中から光が発生するように変容してしまっています。そしてもうすぐクローラーが文字を書くのに使っているコケが大量に胞子を吐き出し、そうなると世界の状況が変わるだろうと直感します。

生物学者は日誌に、もう外界に戻らず、〈エリアX〉の未踏の地に夫を追いかけることを記して、この物語は終わるのです。

この本は<サザーン・リーチ>3部作の第1部だそうで、すべての謎はまったく解けないままです。謎は後続の本に引き継がれます。

でもねえ、なんか〈エリアX〉で起こることよりも、帰還してきた偽物の夫の話の部分のほうが面白いんだよね。この物語が成功したと言えるなら、このアイディアのおかげなんじゃないかな。

★★★☆☆

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