ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

両利きの経営 [二兎を追う]戦略が未来を切り拓く

チャールズ・A・オライリー マイケル・L・タッシュマン 渡部典子・訳 東洋経済新報社 2019.2.28
読書日:2019.11.17

企業ビジネスモデルはすぐに廃れてしまうので、従来事業を深堀する深化と新機軸を見つける探索の両方を行わう必要がある、と主張する本。

テレビ東京カンブリア宮殿なんかを観てると、窮地に陥った老舗が復活する話がよく出てくる。半分ぐらいはあとを引き継いだ創業者の息子である若社長が新機軸を出して、売上を伸ばすという話が多いような気がする。伝統と革新の両方が必要という結論にたいてい落ち着く。

また、たいていは経営者自らが変革を担う。従業員の一部が変革を担うということはあまりない。あっても経営者の全権を得ている場合がほとんどである。つまりは全権を持っているリーダーが変革を担わないとダメだということである。

というわけで、こういった例が日本でもあふれているので、この本の主張は誰もがすぐに理解できるだろう。しかし、この本の対象としているのは、大企業なので、もう少しノウハウが必要になる。

つまり大企業では社員が官僚化しているので、適切な処理を行わないと、探索を担う勢力は従来勢力に駆逐されてしまうのである。したがって、リーダーは予算と組織をまったく別にしなくてはいけなくなる。マトリックス組織のように、深化を担う従来組織のなかに、探索を行う組織を埋め込もうとすると、かなりの確率で失敗してしまうという。できれば別会社にするくらいしないと探索チームを守れない。

探索チームが成果をあげるようになると従来組織も意義を認めるので、深化を担う従来の組織も協力的になり、その結果、探索チームの成果を急速にプロフィット化できる。

だが、両利きの経営は理解できるが、この方法で消滅してしまう企業を減らすことができるだろうか? 多分できない。

それは、この手法には重大な弱点があるからで、つまりリーダー次第というところがあるからだ。改革が必要な企業に、常に両利きの経営を理解しているリーダーを得られるだろうか? それは多分に偶然に左右され、たいていは無理なので、消滅してしまうのである。またリーダーに頼らずに、組織の中にこの仕組みをビルトインしようとしても多分できないだろう。

とくに大企業では大きくなる過程で、従来からあるビジネスモデルの深化が必要な局面が必ずある。その時点で、探索チームはもちろん、両利き経営の思想そのものが社内から駆逐されてしまうのである。危機のときにそのようなリーダーを得ることができた企業はまったく幸運なのである。

投資家の視点からみても、従来の大企業が新しい企業として生まれ変わるのは、それなりに素晴らしいが、時間がかかりすぎてあまり妙味がない気がする。新しいアイディアを持った新しい企業が次々現れるほうが好ましい。

ところで、この考え方は、大会社だけでなく、個人にとっても有用だろう。つまり、自分のキャリアを考える上で、今のキャリアを極めるとともに、別のキャリアの可能性も視野に入れて探索を進める必要があるからだ。motoさんのいうように、我々はある意味すべて個人事業主なのであって、生き残るためには深化と探索を行わざるを得ないのである。

★★★★☆

 


両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

奇妙な死刑囚

アンソニー・レイ・ヒントン 栗木さつき・訳 海と月社 2019.8.5
読書日:2019.11.15

アメリカのアラバマ州で70年代に無実の罪で死刑判決を受けた黒人男性が、諦めずについに無実を勝ち取った話。

原題は The Sun Does Shineで普通すぎてインパクトがないせいか、日本では奇妙な死刑囚ということになった。つまり、原題では無実を勝ち取ったということが強調されているが、日本語では無実の罪を着せられた著者がどのように服役生活を過ごしたかに注目を集める戦略だ。たしかにこの方が日本人向きで、合ってる。わしもこの題名でなければ、この本を読もうと思わなかっただろう。

ではアンソニーはどんなふうに刑務所生活を過ごしたのだろうか。

アンソニーが来た頃、死刑囚同士は交流がなかった。お互い話すこともなかった。だが、アンソニーがヘンリーという男と話をしたことがきっかけになり、死刑囚同士がお互いにコミュニケーションを取るようになった。

やがてアンソニーは空想の世界で過ごすことの重要さに気がつく。死刑囚も刑務所以外の世界が必要なのだ。そこで所長と相談し、読書クラブを作る。希望者が集まって、同じ本を読んで感想を述べ合うクラブだ。

こうして刑務所の中に本が回されるようになり、お互いに議論をするようになる。弁護士のブライアン・スティーブンソンが刑務所に行くと、刑務官たちが、自分たちにできることはないかと口々に聞いたという。アンソニーは刑務官とも心を通じあわせていた。

アンソニーは友達になった死刑囚のことを決して忘れなかった。彼は刑務所にいる間に死刑になった人々の名前を順番にあげることができる。友達だったからだ。死刑になるときには、音を鳴らして、一人ぼっちでないことを知らせたという。

母親が死んだときは、もう頑張る意味がないと諦めかけたときもあった。終身刑にするという司法取引の機会もあった。だが、アンソニーは無罪にこだわり、ぎりぎりでそれを勝ち取った。刑務所を出たあと、ふかふかのベッドと広い部屋に馴染めず、狭くて堅いバスルームで寝たというのは笑える。いまでもベッドの真ん中ではなく、端で寝るという。

アンソニーは清廉潔白な人間ではなかった。車を盗んだこともあった。だが自首して、刑務所で暮らしたこともある。これが彼が容疑者として浮上するきっかけになっている。また、女の子にもてて、ある姉妹と同時に付き合ったこともある。その結果、妹に惚れていた男が嫉妬して、彼に不利なうその証言をした。それで有罪になってしまったのだ。

物的な証拠(凶器とされた拳銃の線条痕が異なるという鑑定結果)もアリバイもあったのに、有罪になったが、ある程度自分のまいた種も多少はあったことがわかる。しかし死刑判決と30年以上の囚人生活を送る理由にならないのはもちろんである。

いまは、彼は死刑制度廃止の運動をしているという。わしも死刑制度はあまり意味がないという気がする。終身刑で十分ではないだろうか。

★★★☆☆


奇妙な死刑囚

銃・病原菌・鉄〈上・下〉―1万3000年にわたる人類史の謎

ジャレド ダイアモンド, Jared Diamond, 倉骨 彰 草思社 2000年
読書日:2011年06月06日

言うまでもなく、ジャレド・ダイアモンドの代表作。インカがスペインに征服された歴史的事件の原因を、大陸ごとの発達の違いにまでの根本原因にさかのぼって考察し、人種的な違いによるのではなく、大陸ごとの違いがこのような原因を生み出したとする。ダイアモンド特有のねばっこい、しかし読みやすい語り口で、ぐんぐん読まされてしまう。

上巻を読んでいるうちは、初めて読んだのに、既視感があった。書かれている内容に知らないことがなかったのだ。もちろん、この本の書評を読んだことがあるので、だいたいの内容は知っていた。それでもほとんど知っていたというのは、1998年刊行(原書)のこの本があっというまに古典化し、あちこちで定説として、この本を根拠とした議論が行われて、知らず知らずのうちにこの本の内容を又聞きしていたからに違いない。おそるべき書物である。これほど短時間に定説になってしまった本書の威力はすごいのひとこと。まさしく現代教養人の必読書であろう。

一方、下巻の、ニューギニアやオーストラリア、アフリカの話は知らない内容が多く、非常に興味深かった。下巻ではユーラシア大陸のなかで中国がなぜ世界の中心にならなかったのかという重要な問題も考察されているが、まだ十分でないように思えた。だれかなぜ中国が世界を支配できなかったのか、納得できる考察をしてくれないかな。

日本語に関する記述で、日本人が漢字を捨てられない理由は漢字を使うことの優越感みたいのがある(正確に覚えていないがそんなふうに書かれていたかな)という記述はほほえましい。本当は、漢字かな混じり文は圧倒的に読むスピードが早いからだと思う。

★★★★★

 


銃・病原菌・鉄 上巻


銃・病原菌・鉄 下巻

 

転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方

moto 扶桑社 2019.8.9
読書日:2019.11.10

motoさんは、収入を増やすことだけを目標にして転職を繰り返すとともに、その経験を情報として売ることで、240万円の年収からいまでは5000万円に増やすことに成功したんだそうです。この本もベストセラーのようですから、ますます収入はアップしそうですね。

わしはなるべくだらだら仕事をして、資産も増やしたいと思っており、そう公言しているのですが、そんな勤務態度ですから、もちろんぱっとしません。一方のmotoさんはもちろんサラリーマンとしてもしっかり結果を出しており、キャリアを築いていますから、わしとは正反対ですね(笑)。

でもわしの場合は、だらだらしたいからサラリーマンを続けているようなものなので、これでいいのだ。たぶん個人的には一日せいぜい2時間ぐらいしか仕事していない気がします。

まあ、それはいいとして、この人、子供の頃からいろいろと物を売って、お小遣いを自分で稼いでいたんですね。まるで、個人投資家cisさんや、バフェットさんのように、子供の頃から稼ぐコツというものを掴んでいるんです。でも、cisさんやバフェットのように投資家にはならずに、サラリーマンになったというのがひとつの達観ですね。自分にとってその方が合ってると判断されたということです。ただ、今後はきっと本格的な起業や投資家の方向に進むんじゃないかとわしは思いますけどね。

転職の極意としては、自分の得意な分野で、業界をずらすというのがキモのようです。どんなに優秀でも、業界によって給料の上限があるからだそうです。なので同じ仕事でも、給料の高い業界にしだいにずれていくということです。

そして、転職のエージェントもうまく使って、最初から収入がもっとも大事と宣言して、方向性をはっきりさせていることも重要らしいです。

仕事の専門は営業ですが、彼の特別なスキルとしては、かならずトップに対してセールスをかけるということらしいですね。そしてトップへのアクセスを確保する方法についても、あけすけに話されていますから、明日にでも皆さんはその方法が使えますね。

また、SNSなどを駆使する方法も得意なようです。

副業としては、転職の極意を書いてnote上に発表した文章を売っているのですが、たった19記事しかないのに、中身の濃い内容で、それだけで年に4千万円も稼いでいるようです。

サラリーマンでノウハウを得て、さらにその手法を販売して、何倍にもするというのは素晴らしいです。

それにしても、この方、30歳になったばかりのようで、この歳でこれだけの文章を書けるということ自体が素晴らしいですね。最近こういう人が増えている気がします。直感ですが、編集者の手をあまり借りずに、自分で書いている気がします。こういうひとがどんどん出ているわけですから、日本も捨てたものじゃないと思いますね。

わしはこういう方法は合わないと思うんで、絶対使いませんが、まあ、だらだらしつつもリストラされずになんとなくうまく行っているので、わしのサラリーマン人生もまあまあという気がしますね(笑)。

★★★★☆


転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方 (SPA!BOOKS)

人生の勝算

前田裕二 幻冬舎 2019.5
読書日:2019.11.8

SHOWROOMというライブアプリの会社を立ち上げた若き経営者が、自分の壮絶な人生を振り返りつつ、自分の思いを語る本。

前田裕二さんの恋人は石原さとみなんだそうだ。あら、そうなの?(笑)。彼女はいい役者さんだから、IT企業の社長と付き合っても仕事辞めないでね。

で、直感的には、SHOWROOM自体は失敗するんじゃないかと思ってる。どうもあまり面白い感じがしない。

もともとは中国のネットアイドルを生み出したライブアプリを見て、これだと思ったらしい。これについては、わしも、NHKのBS放送で9月に放送したドキュメンタリーを見ていた。そして、この本よりもこのNHKのドキュメンタリーのほうがはるかに面白かった。

NHKドキュメンタリー - BS1スペシャル「中国ネットアイドル~巨大市場を動かす女性たち~」 (注:すでにサイトなし)

ドキュメンタリーではワンホンと呼ばれるネットアイドルたちがライブ放送をしてお金を稼ぐ様子が描かれている。稼ぐ方法は2つで、何かを宣伝してお金を稼ぐ場合と、客からの投げ銭で稼ぐ方法がある。人にもよるだろうが、投げ銭の方が多い感じ。

一回の放送時間は数時間で、平均で4万円ぐらい稼ぐという。中国の人口は膨大だから、何万〜何十万人かのフォロアを得ると、それで生活していけるらしい。

もちろん、ライブ放送では、彼女らは自分が言いたいことではなく、相手が聞きたいことを言う。最初に出てくる地方のワンホンは、歌が得意で、よく知られている歌を歌って男たちを励ます。自分でも歌を作るが、それは歌わない。NHKのために、本当の自分はここにはいない、みたいな自作の歌を歌ってくれたが、しかし、そんな歌は客に受けないから、放送では歌わないのだ。そのへんは徹底している。

他にも、キャラクターを作ってワンホンに演じさせ、宣伝にいかに活用するかという深センの会社の話が出てきて面白かった。

それに対して、SHOWROOMでは本物のアイドルがこのアプリを使って宣伝するもので、このアプリ自体は芸能人、あるいは芸能人になりたい人たちのものだ。普通の人たちが生活の糧を得るというにはほど遠い。正直、それではつまらない。とりあえず日本一を目指すと言ってるが、最初から世界にいかないと無理なんじゃないかな。ともかく、本家の中国の動きの方が面白いんだから、これじゃあ、しょうがない。

いまのSHOWROOMでは無理かもしれないが、でも前田裕二さんが成功するのは間違いないと思う。というか、すでに成功している。圧倒的な人脈もすでに気づいており、たとえこれが失敗しても、彼に投資しようとするひとはたくさん現れるはずだ。まだ30歳ぐらいというのに、すばらしい熱量の起業家なのだ。

彼の半生を読めば、誰もがこれは敵わない思うだろう。それだけの熱量を持っているようだ。こういう人がたくさん出てくれば、日本も悪くないということになるんじゃないかな。

そして、前田さんは誰に対しても丁寧で親切なんだという。ほんと、もうこれは敵わないよね。

★★★★☆


人生の勝算 (幻冬舎文庫)

革命とサブカル  -「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅

安彦良和 言視舎 2018.10
読書日:2019.11.10

ガンダムのキャラクターデザインで有名な安彦良和学生運動崩れであることは、「原点」を読んで初めて知った。

安彦良和の仲間たち、弘前大学学生運動のリーダーたちは、安田講堂にも参加したし、そればかりか赤軍派にも加わり、壮絶な人生を送っている。そのような強烈な学生運動を過ごして弘前大学を中退した安彦良和は、アニメの世界に職を見つけ、サブカルの世界に入っていく。

学生運動の時代のあと、まったく政治の抜けた時代がやってきて、安彦良和は戸惑ってしまう。その後、数十年がたって、最近また若者が街頭デモに参加するような時代が来たそうで(そうだったのか)、そうするとその中間のサブカル時代がいったい何だったのかという疑問が生じたらしい。

この本は、安彦良和が、当時の仲間と議論をしてあの頃を振り返るとともに、その次に訪れたサブカルの時代との関係を探るものである。当時の仲間との議論は、これは氏の長年の宿題だったのだろう。ようやく宿題を仕上げることができたという安堵のようなものが、本からあふれている。

さて、これを読んでわしは何を考えただろうか。安彦良和にもその仲間の感覚にまったくついていけず、戸惑うばかりだった、というのが実感である。どうしてそういう発想になるのか、さっぱり共感できない。昔の事件のことはしょうがない。だってその時代を知らないんだから。ところが、最近の事件、例えばシンガポールで行われた、トランプと金正恩との第1回会談に関する安彦良和の感想を読んでも、これがまったく異質の発想で、戸惑ってしまう。

--安倍首相や菅官房長官は今夜はヤケ酒でも呑みたい気分なのではなか。/これはいい兆候である。/日米関係が嘘臭い蜜月から破綻に向かう前兆である。

なんでこんな発想になるのか理解できない(苦笑)。普通は地政学的な発想で今後どうなるか考えるんじゃないの? 左の皆さんは世界を見るときに独特のフィルターがかかっているとしか思えない。彼らの願望のフィルターは強すぎる。(とほほ)

さて、安彦良和は文系だが、仲間のほとんどは理科系である。つまり、マルクス主義には理科系の人間がハマったっということなのだろう。マルクス主義はなんとなく科学っぽい装いをしているからだと思われる。この辺はオウム真理教とよく似ている。

ところが、理科系のはずの彼らからはテクノロジーを起点とした発想がまったく感じられず、戸惑ってしまう。わしなんかが未来のことを考えるときには、テクノロジーが今後どのように発展していくかを考えて、未来がどうなるかを想像する。でも、そういうところが、学生運動の人たちにはあまりないようなのだ。そのへんのところがどうも理解できない。

そういうわけで、まったく理解できない異質の発想をする人たちが昔いたのだ。昔と言ってもついこの間の話だ。というか、彼らは今もいる。世代が違うと言ってしまえばそれまでだが、そんなに遠い昔のことでもないのに、ここまで理解できないのはなんとなくショックだ。もちろん、言葉は理解できるのだが、同じ日本人とは思えないほどだ。ある意味、絶滅危惧種なのだろうか。

さて、安彦良和サブカルの理解であるが、彼の意見では、その前の学生運動の時代からサブカルは入っていたということらしい。学生運動の人たちが、マンガを盛んに読んでいたのは、よく知られた話である。そして、そこから政治がすっぽりと抜け落ちてしまったのが、その後のサブカルの時代ということになるらしい。

安彦良和によると、あの宮崎駿も純然たる共産主義者らしい。しかし宮崎駿は圧倒的な技術でそれを覆い隠しているのだという。また沖縄は、完全に日本とは違う国で、その境は与論島奄美の間にあり、しかも奄美はかつて沖縄に攻められてひどい目にあったのだそうだ。この辺は納得できた。

安彦良和の仲間の一人に植垣康博という人がいて、連合赤軍語り部になっているという。この人の本は面白いかもしれない。

そういうわけで、わしは共産主義を信じる人はいると理解しても、彼らの発想自体はまったく理解できないのでした。理解できない人たちがいたというのがそれなりに面白かったので、★は4です。

★★★★☆

 


革命とサブカル

反日種族主義 日韓危機の根源

李栄薫 文芸春秋 2019.11.20
読書日:2019.11.16

韓国の反日運動が根拠のないことを、韓国の歴史学者自身が実証的に明らかにした本。韓国では10万部を越えるベストセラーになり、昨今の日韓激突から日本でも緊急出版されました。

「種族」という言葉を使うのは、近代的な「民族」という概念に対して、いまだ韓国は民族というレベルになく、部族や種族というレベルだからだといいます。部族や種族の世界はシャーマニズムに彩られた物質主義の世界であり、このようなシャーマニズムの世界では嘘に寛容なのだそうです。

実際、韓国では嘘はすでに国民病と言っていいレベルになっており、偽証罪は日本の430倍、誣告(ぶこく)は500倍、保険詐欺はアメリカの100倍、アンケートによる「人は一般的に信頼できるか」という質問では26%でアメリカよりも低い水準だそうです。

こういうシャーマニズムが蔓延している世界では、その歴史に対しても何ら実証的ではなく、荒唐無稽の連続であり、韓国国内のローカルでは通用しますが(するのか?)、グローバルにはもちろんまったく通用しません。

そこで実証的な研究を行っている歴史学者たちによって、自国に蔓延している日帝に関する幻想の歴史が再検討されています。もちろん慰安婦問題や徴用工問題も再検討されるのですが、このへんは日本でもさんざん言われていることとほぼ同じであり、書いてくれて感謝はするけど、実際はあまり面白くありません。

どちらかというと、日本ではあまり知られていない、高校の教科書にかかれてある内容を検証した例の方が面白かったです。

でも、わしが爆笑したのは「鉄抗騒動」の話でした。

この話を理解するには、まず韓国人のシャーマン的な発想を理解しなくてはいけません。韓国人は国土を人間や動物の身体のように考えるのだそうです。現在では、朝鮮半島を虎に似せて考えるらしく、まるで朝鮮半島は大陸に向かって吠えている虎のような形状をしているらしいです。そして中国との国境にある白頭山が虎の頭であり、そこから気脈が地下を通じて各地から湧き出している、と考えるんだそうです。

さて、日本が朝鮮を併合したあと、当然のように朝鮮半島の全土の測量を行いました。昔の測量は三角測量であり、基準になるところに三角点を設置します。ところがこの三角点を韓国人は、「この杭は白頭山から流れる気脈を封印して、朝鮮から優秀な人材がでないようにするための杭だ」と思ったんだそうです。なので、韓国人たちはその基準点を掘り出して、ばらばらにしてしまったというんですね。日帝鉄抗による風水侵略、という伝説の誕生です(笑)。まあ、これは昔の話ですから、まだ分かります。

さらに時は流れて1990年代。金泳三政権は日帝の風水侵略に対抗すべく、日帝鉄抗を韓国からすべて除去する運動を起こしたんだそうで(苦笑)。その結果、全国から日帝鉄抗がぞくぞく発見され、除去されたんだそうです。それは日帝鉄抗ではなく、自分たちが縄を結わえるために打ったものだという地元民の言葉も無視されて、日帝鉄抗と断定され、盛大な風水のセレモニーとともに除去されたものもあったそうです。あまりのバカらしさに呆然としますね。

まあ、こういう愉快な話もありますが、全般的にあまり面白いと思えない本です。単に実証しているだけで、個人的に有益な内容があると思えません。でも、韓国人自身がそれを知らしめているということから政治的には有用ですから、ぜひ英語版も出してほしいですね。欧米のマスコミが韓国の言うことを真に受けて、デタラメを垂れ流しているのにはもううんざりですから。

また、こんな本を出した著者の歴史学者の皆さんが、韓国国内で不当な目に合わないことを願うばかりです。

韓国はもう先進国と言ってもいいのだから、はやく考え方もグローバルスタンダードになってほしいなあ。無理でしょうか?

個人的にはあまり面白くなかったけど、意義がある本ということで、評価は高めです。

★★★★☆

 


反日種族主義 日韓危機の根源 (文春e-book)

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