奇妙な死刑囚

アンソニー・レイ・ヒントン 栗木さつき・訳 海と月社 2019.8.5
読書日:2019.11.15

アメリカのアラバマ州で70年代に無実の罪で死刑判決を受けた黒人男性が、諦めずについに無実を勝ち取った話。

原題は The Sun Does Shineで普通すぎてインパクトがないせいか、日本では奇妙な死刑囚ということになった。つまり、原題では無実を勝ち取ったということが強調されているが、日本語では無実の罪を着せられた著者がどのように服役生活を過ごしたかに注目を集める戦略だ。たしかにこの方が日本人向きで、合ってる。わしもこの題名でなければ、この本を読もうと思わなかっただろう。

ではアンソニーはどんなふうに刑務所生活を過ごしたのだろうか。

アンソニーが来た頃、死刑囚同士は交流がなかった。お互い話すこともなかった。だが、アンソニーがヘンリーという男と話をしたことがきっかけになり、死刑囚同士がお互いにコミュニケーションを取るようになった。

やがてアンソニーは空想の世界で過ごすことの重要さに気がつく。死刑囚も刑務所以外の世界が必要なのだ。そこで所長と相談し、読書クラブを作る。希望者が集まって、同じ本を読んで感想を述べ合うクラブだ。

こうして刑務所の中に本が回されるようになり、お互いに議論をするようになる。弁護士のブライアン・スティーブンソンが刑務所に行くと、刑務官たちが、自分たちにできることはないかと口々に聞いたという。アンソニーは刑務官とも心を通じあわせていた。

アンソニーは友達になった死刑囚のことを決して忘れなかった。彼は刑務所にいる間に死刑になった人々の名前を順番にあげることができる。友達だったからだ。死刑になるときには、音を鳴らして、一人ぼっちでないことを知らせたという。

母親が死んだときは、もう頑張る意味がないと諦めかけたときもあった。終身刑にするという司法取引の機会もあった。だが、アンソニーは無罪にこだわり、ぎりぎりでそれを勝ち取った。刑務所を出たあと、ふかふかのベッドと広い部屋に馴染めず、狭くて堅いバスルームで寝たというのは笑える。いまでもベッドの真ん中ではなく、端で寝るという。

アンソニーは清廉潔白な人間ではなかった。車を盗んだこともあった。だが自首して、刑務所で暮らしたこともある。これが彼が容疑者として浮上するきっかけになっている。また、女の子にもてて、ある姉妹と同時に付き合ったこともある。その結果、妹に惚れていた男が嫉妬して、彼に不利なうその証言をした。それで有罪になってしまったのだ。

物的な証拠(凶器とされた拳銃の線条痕が異なるという鑑定結果)もアリバイもあったのに、有罪になったが、ある程度自分のまいた種も多少はあったことがわかる。しかし死刑判決と30年以上の囚人生活を送る理由にならないのはもちろんである。

いまは、彼は死刑制度廃止の運動をしているという。わしも死刑制度はあまり意味がないという気がする。終身刑で十分ではないだろうか。

★★★☆☆


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