ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

あやうく一生懸命生きるところだった

ハ・ワン 訳・岡崎暢子 ダイヤモンド社 2020.1.15
読書日:2021.5.30

人生に正解などないと主張し、親や世間の期待という荷物をおろして、他人と比べることをやめ、一度立ち止まってゆるく生きることを勧める本。

うーん、と読みながら考え込んでしまった。内容についてではない。だって、たぶん、わしはこんな生き方をしているから(笑)。まったく違和感はない。

会社は辞めてはいないけど、もともとほとんど残業もしないし、追い込まれるような仕事の仕方もしていないし、でも目標はたいてい達成してなんかうまく行ってる、、、と思う。というか、そもそもわしは他人と同じような土俵で勝負をすることを避けて、競争の少ないフィールドを目指す人なのだ。そういうフィールドこそ、自分のペースで生きていける余地があるんじゃない?

まあ、そんなことはどうでもいいや。

気になったのは日本と作者の韓国でどのくらい時代がリンクしているのか、という部分だった。日本でもこういう主張が受けるようになった頃というのは、バブル崩壊してしばらくたった90年代後半ぐらいからではないだろうか。

この本でも具体的に挙げられている、「孤独のグルメ」の連載が始まったのは1994年だ。本格的に人気に火がついたのは、2012年からのドラマの放送からだろうけど、すでにその下地はあったと思う。

SMAPの「世界にたったひとつの花」がヒットしたのは2003年だ。これも自分と他人とを比較することの無意味さを主張する内容だ。

ゆるキャラ」がみうらじゅん氏により登録商標されたのは2004年で、2008年に流行語大賞の候補になった。

そういうわけで、わし的には、日本では2000年前後からこの手の主張が受け入れられてきたような気がする。

韓国の事情はあまり良く知らないが、検索してみると、この本が出版された2018年頃には、「ありのままの自分で生きる」コンテンツがいろいろ普及していたというから、まあ、きっと2015年ぐらいから一般化してきたんじゃないだろうか。

そうすると、日韓では、始まった時期にだいたい10年ぐらいのずれがあるんじゃないかなあ、という気がする。訳者の岡崎暢子さんも、2000年代前半では、韓国の本屋で並んでいたのはモーレツ社員向けの本が多かったと言ってるし。ああ、これは検索したらそんなことを語っているサイトに行き当たったので、本書の中には書いてありません。念のため。なお、訳者の岡崎暢子さんは、この本を読んで自分も会社を辞めたんだそうです。(笑)

まあ、生き急いでいる韓国は、すでに日本を追い越して、先を言っている気もするけどね。特にコンテンツ系はぜんぜん負けてるし。最近は韓国のやりかたが色んな分野で紹介され、参考になることも多くなった。この本もその一例なんだろう。

などと言いながら、少し気になったところをいくつかあげていこう。

(1)個人営業店
韓国の会社員も日本と同じように、会社に不満があると会社をやめて独立することを夢見るんだそうだ。で、この内容というのが、どうもほぼ「個人店営業」、つまり自分の店を出すというところに帰着してしまうんだそうだ。そして、退職後に誰もがフライドチキンの店を出すことになる。

韓国では発想に多様性がないことを著者は嘆いているわけだが、本当かなあ。わしは日本は多様性がありすぎる国だと思ってるんだけど、同じく韓国も十分多様性があるような気がするけどね。違うのかなあ。著者の周りだけなんじゃないの?

(2)存在している理由
著者のハ・ワン、は自分が存在しているのはただ生まれたからで、特に理由がないことにいま気がついたんだそうだ。著者はだいたい40歳ぐらいだそうだ。

よかった。わしがその事に気がついたのは20代だが、こんな簡単なことに気がつくには遅すぎたんじゃないかと思っていたが、そういうわけでもなさそうだ。

(3)こういうコンテンツを参考にしているとは
ハ・ワンは映画や小説をよく読んでいるようだが、引用しているなかには、この本のテーマとしてちょっと首をかしげたくなるようなものも。

ELLEという映画を例にあげているが、監督がポール・バーホーベンですからねえ。この作品は見たことはないけど、ポール・バーホーベンというだけで、ありえない変態映画でしょうから、参考にしてもいいのかしら? 

もうひとつ、映画「酔いどれ詩人になる前に」を引用しているけど、まあ、引用している部分はいいと思うけど、なにしろ、これってブコウスキーが原作でしょ? ブコウスキーってただのセックスと酒のひとで、まあ、確かに自由なのかもしれないけど、普通の人の参考になるのかしら。超疑問。彼はやりすぎだよね、ぜったい。なお、ブコウスキーは本は読んだことあるけど、この映画は見てません。

まあ、こういうのも参考にして何かを感じ取るっていうところが、この著者の独創的なところかもしれませんが。

★★★★☆

 

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