ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

これからを生きるための無敵のお金の話

ひろゆき西村博之)興陽館 2019年3月15日
読書日:2019年8月30日

このところなぜかひろゆきの本を読むことが多いんだが、あんまり内容が薄いのでもう読むの止めようと思っていた。でも、この本は、まあ普通に読めた。ただし内容は数行で書ける。

・お金がほしいのは不安を解消したいから。不安が解消できればお金自体は少なくても良い。
ベーシックインカムが導入されれば、ほぼ不安は解消される。移民に厳しい島国の日本なら導入できる。
・少ないお金で生活するスキルが身につけば、不安は少なくなる。
・自分の資産にならない働き方はしない。

まあ、これくらいでしょうか。

昔、ひろゆきの本を読んで、その考え方にけっこう斬新さを覚えたことがありますが、最近は超普通で面白くありません。もしかしたら日本を離れてしまったことが影響しているのかなあ。

ひろゆきには反社会的な内容の本を書いてほしいな。民事裁判で負けても怖くない、みたいな?(笑)。

★★★☆☆

 


これからを生きるための無敵の―お金の話

欲望の資本主義3:偽りの個人主義を越えて

丸山 俊一, NHK「欲望の資本主義」制作班 東洋経済新報社 2019年6月28日

読書日:2019年8月28日

~やめられない、止まらない~

わしはNHKの「欲望の資本主義」シリーズのファンで、テーマ曲がヴィム・ヴェンダースの映画「 ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」からきていると聞いて、その映画も観てしまったくらいである。(確かに使われていたが、ただそれだけのことだった。なお曲名は三宅純の Lillies of the valley)。

今回の欲望の資本主義3では、GAFAなどの巨大IT企業、暗号通貨とブロックチェーン、AIといったキーワードを交えつつ、資本主義と個人の自由について考察している。

これら巨大企業や先進テクノロジーは確かにいまの資本主義に大きな影響を与えているが、どちらかというと技術的な話であり、しかもすでにAI以外はかなり先の展開が見えてきているのではないだろうか。

例えばGAFAについて言うと、すでにこれらの巨大企業を規制する方向に向かっているのは間違いない。1章でギャロウェイが言うように、SNSやいいねをクリックするのは労働であり、GAFAはひとをただで働かせて利潤を搾取している、という言い方でもいいし、個人のデータでお金儲けをしているくせにまったく社会に還元していない、という言い方をしてもいいが、ともかく今やGAFAは責められる一方なのであり、それが個人情報に関する規制に留まるのか、特別な税を設定するのかは別にして、10年後、20年後にはGAFAの力はかなりそがれていると思う。

暗号通貨も今後の展開はかなり読めてきたように思う。いまのままでは法定通貨を駆逐するには及ばないだろう。この本に出てくるホスキンソンは、世界の貧困層に金融サービスを提供できると高く評価しているのだが、わしは補助的な役割にとどまると思う。たぶんブロックチェーンの技術もいまのままでは、処理能力の遅さもあり、政府や銀行などの組織からユーザを開放するほどではないと思う。

AIについてだけは、まだ展開が予想できない現在進行中のものである。今後の展開がどうなるか分からないが、わしの予想ではきっとひっそりと社会に溶け込んで、人間には認識されない存在になるのではという気がしている。つまりAIが見えなくなることで、AI問題(AIが人間にとって代わる、特に仕事を奪う)という問題自体が溶けて消えるのではないかと予想している。

そういうこともあって、1章から3章ぐらいまではあまり面白くなかった。なので、わしががぜん興味を持ったのは、4章のハラリの文明論的な視点と、5章のガブリエルの哲学の話だった。

ハラリは相変わらず冴えていて、完全な自由では社会は崩壊してしまう、規制(ルール)が必要、などと当たり前のことを再認識しさせてくれる。資本主義が今後どうなるかについては分からないが、今とは違うことだけは確かだという。

哲学者ガブリエルの話は、TVで見たときにはさほど印象が残らなかったのだが、本で読むと、この5人のなかでは最もエキサイティングだった。哲学の方向から見ると、同じ問題でも少し違った見え方をするようだ。

真のAIは存在しない、とか、人々を支配しているのは機械の背後にいる誰かだ、とか、ソーシャルメディアはカジノだ、とか、ちょっと他ではお目にかかれない刺激的な言葉に溢れている。彼は優秀なコピーライターなんだろうか? ガブリエルの著書「なぜ世界は存在しないのか」を読まなくてはいけないと強く感じた。

(もっともこの題名だけからどんな論理展開なのか、ちょっと予想がついてしまったのだが。脳内イメージで作っている現実は実際には現実ではないと言いたいのでは?)

ガブリエルの言葉をいくつか記録として残しておく。なお、言葉は本に書いてあるままではなく、わしの解釈を入れています。

・真のAIはない:AIは一定の時間機能する電気回路に過ぎず、人間が使わなければすぐに壊れる。つまりAIは人間に依存しており、本当の意味で、自分で自律的に学ぶ知能ではないということ。

ソーシャルメディアはカジノだ:人々はいいねを押すことで賭けをしている。ソーシャルメディはその賭けから得られる利益のほとんどを吸い取っているカジノの胴元のようなもの。

・「真実が存在しない」というまやかし:フェイクニュースが蔓延し、「真実が存在しない」かのように振る舞うことで、社会がごまかし放題になり、社会が存在する前の自然状態に戻ってしまった。(正しい情報よりも、誰かが言った意見のほうが蔓延する状態をポストトゥルースとガブリエルは呼んでいる。)

・哲学は考え方を変えることで世界を変革する:マルクスは書斎で解釈を本に書くことで世界を変えた。哲学者はアイディアで世界を変えられる。

★★★★☆


欲望の資本主義3―偽りの個人主義を越えて

市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学

ハワード・マークス/著 貫井佳子/訳 日本経済新聞出版社 2018.11.1
読書日:2019年8月25日

ハワード・マークスは低格付けの債券に投資するオークスツリー・キャピタルの創始者のひとりで、投資家に向かって定期的にレターを書いていますが、そのレターをもとにして本も出しています。

前書の「投資で一番大切な20の教え」では、わしが見たところ、20どころかひとつのこと、つまりリスクコントロール以外のことは述べていなかったような気がしました。

なにしろ、この人の本は、自分の書いたレターをもとにしているせいか、同じことが少し表現を変えて何度も出てくるという構成になっており、たぶん内容をまとめると数ページで終わるような感じです。

したがってこの人の本の正しい読み方は、だらだらと読みながら、繰り返し語られることを心に刻みつけるように読むという感じが正しいのでしょう。まるで職場のベテランが繰り返し噛んで含めるように若手を教育しているような趣があるのです。

前回の本がリスクコントロールならば、今回のテーマは正しいときに投資するという、タイミングの問題です。市場にはサイクルというものがあり、上がったり下がったりしています。そしてもちろん、投資するベストなタイミングはサイクルのボトムです。ところが、そのサイクルのピークもボトムもそこにいるのは一瞬でしかありません。どうすればベストなタイミングかどうかわかるのでしょうか。

ところで、この本で扱っているサイクルというのは、10年、20年という長期のサイクルの話をしています。そして、ピークを過ぎてボトムをつけたときというのは、直近ではリーマン・ショック級の話をしています。つまり、バブルとバブルの崩壊をサイクルと言ってるのです。なので、個々の銘柄の話をしているわけではありません。

そうなると、ピークが近いかどうかは、社会の心理状態を見ていれば分かると言います。つまり、人々が傲慢になり、リスクを恐れないようになり、「今回だけは違う」と言い始めたときです。そういう言葉が聞こえるようになったら、用心をしなくてはいけません。

問題は、社会が傲慢になったからと言って、サイクルがいつピークをつけるか分からないことです。2000年のITバブルの時は、保守的なひとが用心を始めたのは1996年ごろで、それから何年も市場は伸び続けました。2008年のリーマンショックの時も著者たちが用心を始めたのは2006年だったそうです。つまり3年間、市場は持ちました。

で、実際に崩壊したとして、いつ買うべきでしょうか? 著者によれば、いつがボトムなのか誰にも判断はできないと言います。じゃあ、「落ちてくるナイフを掴む」べきなのでしょうか。著者はまさにそうすべきだと言います。そもそもボトムを待っているうちに売り物はなくなってしまうのです。皆が投げている間しか買うことはできません。リーマンショックの時には、買い時は数カ月しかなかったそうです。2008年9月15日-2009年1月の間だけでした。

ということが、十分分かっていたとして、実際に買えるものなのでしょうか。世の中が総悲観の時に買えるものでしょうか?

著者によれば、そういうときは、未来の自分がどう今を振り返るかを思い描くそうです。もしもここで買わなかったら、未来の自分が後悔しないかどうか、それを考えるそうです。結局、適正な価格よりも思いっきり安くなっていると判断したら、買うしかないのです。

2008年のリーマンショックの時も、買うと判断して、オークツリーでは顧客を説得して、お金を集めました。が、どうしてもお金を出さなかった顧客もいたと言います。著者は自腹を切って、投資したといいます。

投資ファンドの場合は顧客を説得するのでしょうが、個人の場合はどうしたらいいのでしょうか。買いたくてもお金がない状況は避けなくてはいけないでしょう。そうすると、常にある程度のキャッシュを持っているしかないと思います。

わしは個人的には総資産の20%ぐらいは常にキャッシュで持っていたい、と思っています。しかし、実際には15%ぐらいを上下しています。

どういうわけか、わしは世の中が大変な時に、投資以外でお金を使う羽目になることが多くて、非常にタイミングの悪い人生を送っています。リーマンショックの時には、マンションを買わなくてはいけなくなり、価値が落ちた資産を売って、現金を工面しなくてはいけませんでした。(参照:投資家から撤退するかどうかを迫られた時期

日本の場合は、その後、2008年のリーマンショックが底ではなくて、2011年の東日本大震災がボトムでしたね。まだボトムがあったので、そこで買った資産が、いまの元になっています。わしの投資歴を振り返ると、ちょっと悲しいことが多いです。

 ★★★★☆

 


市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学

目からウロコが落ちる奇跡の経済教室 基礎知識編

中野剛志 ベストセラーズ 2019年4月22日
読書日:2019年8月22日

MMT理論について分かりやすく解説した本。著者はかつて「富国と強兵」という本の中でMMT理論を説明しているが、なにぶんその本の目的は国を強くする方策を説明することにあるので、余分な部分が多すぎる。そこで、MMT部分だけを分かりやすく説明したのが本書と言えるでしょう。

わしは90年代から経済関係の本を読むようになったが、その当時、バブル崩壊後で日本経済はむちゃくちゃであった。わしは何が起こっているのか知りたいと思って、そういう経済の本を読んでいたのである。

しかし、いったい日本経済に何が起こっているのか、さまざまな議論があったが、結局なんなのかさっぱりわからなかったのである。

あるものは不景気なのだから赤字財政を行い公共事業をしろと言い、あるものはそんなことをしたらハイパーインフレが起きて日本経済は崩壊すると言い、あるものは人口動態が原因で労働人口が減ってるから今後景気が回復することはないと言い、あるものはお金をばらまけばいいと言い、あるものは時間とともに価値が減る貨幣を導入すればいいと言い、あるものはゾンビ企業が生き残って社会の効率が悪くなっているのが原因だからさらに不景気にして企業を倒産させなくてはならないと言い、あるものは二か国間・多国間のFTP条約を結んで自由貿易を活性化させなくてはいけないと言い、あるものは規制緩和をして産業を興しやすく起業をしやすくしろと言った。

マネーとはなんなのか、国家経済とはなんなのか、そんなところから考え直さなくてはいけなくなってしまったのである。なのに、それぞれの議論はつながることはなく、わしのフラストレーションは高まるばかりだった。

そもそも日本はデフレであるという認識が世間に形成されるまでに、非常に長い時間がかかったのである。

90年代の後半に消費者物価がマイナスになったことがあった。だが、日本経済新聞は1面で、これはデフレではないという署名記事を出した。

どういう意味?

わしはさっぱり分からなかったので、日経新聞に電話して、デフレでないという理由を聞いた。(時効だと思うから言うが、会社の電話を勤務時間中に私用で使いました。ゆるい職場でした(笑))。すると、顧客対応の部署も答えられなかったので(そりゃそうだよね)、なんと署名した記者自身に電話が回り、なぜデフレではないか直接説明してくれたのである。

記者によると、単に物価が下がるだけではデフレとは言えないのだそうだ。デフレというのは、需要が供給を下回った結果物価が下がるのがデフレなのである、と。「需要<供給」以外で物価が下がる例としては、技術革新でパソコンやスマホの値段が下がるとか、いろんな場合があると。なるほど。

わしのような質問が続いたのであろう。次の日の朝刊には、デフレの定義について詳しい解説記事が再度掲載されたのでした。(笑)

しかし、いまでは、(継続的に)物価水準が下がること自体がデフレと認められて、なんであれ物価が下がることが問題なのであるという認識になりました。

とまあ、いろんな経緯の末に、わしはMMTを読んで、ようやく全ての話がつながったと感じたのである。MMTはさように包括的、そしてシンプルである。

MMTが間違っているという人はほとんどいない。まったく普通のことしか言っていないのだから。問題は単に、インフレになった時に本当にそれを止められますか、というところだけなのである。

中野氏には頑張ってもらって、ぜひとも日本人のマネー感を変革してほしいものである。思うに、日本ほどマネーに対する議論が行われた国はないでしょう。日本人こそ、MMTを理解するのに適した国民はいないのである。

★★★★★

 


目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 (ワニの本)

人生は攻略できる

橘 玲 ポプラ社 2019年2月28日
読書日:2019年8月20日

橘玲は趣を変えて何度も同じネタを使いまわしている。

今回も、ここ何年間に出してきた本を若者向けの指南書という形で書き直したものである。ひとつひとつは橘玲の本をよく読むわしのような人間にとってはおなじみの内容なのであるが、しかしこういうふうにまとめられると、それなりに読めてしまう。

ちょっと面白いと思ったのは、アメリカで起業せずにわざとぬるい日本で起業することのメリットについて述べた部分だった。

日本では大きな企業は自分たちで新しい事業を開発する能力を失っている。なので、新しい事業に関しては基本的にM&Aで買う方向である。(お金だけはたっぷり持ってる)。そうすると、ちょっと行けてるふうの会社を起業すると、次々に買い手が現れて、取り合いになり、何の実績もないうちに数億円、数10億円の値段がついてしまい、あっという間に創業者はお金持ちになってしまうというのである。

さらに、親会社はその企業を経営する実力はないから、創業者たちは経営者として残ることになり、売った後も継続的に所得を得ることができる。

もちろん、アメリカの企業のように何千億円の値段ではないが、そもそも日本では数億円稼げれば十分豊かに暮らしていけるから、そのくらい稼げればいいという場合には、とても簡単だというのである。ぬるい日本ならではの成功方法と言える。

日本は、日本型サラリーマンの時代は終わったのに、いまだにシステムの転換はできていないけど、それでもやっぱり日本で生まれたことのメリットは大きいと橘氏は述べていて、日本にいる限りは飢えて死ぬことはあり得ないから、若者には自分にあったチャレンジングな人生を勧めているようである。

★★★☆☆


人生は攻略できる

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

岸見 一郎, 古賀 史健 ダイヤモンド社 2013年12月13日
読書日:2014年05月28日

アドラー心理学の極意を伝える入門書。「人を動かす」のカーネギーさんなんかも影響を受けているのだそうだ。最後の結論をいうと、「人生に一般的な意味はない」「いまを生きる」という認識にいたるらしい。ところが、わしは20代のあるとき、上記の認識をいきなり得たのだった。

そのときはものすごい発見をしたと思って、興奮した。そしてそこから出発して考えを進めていった。というわけで、まるっきりこの本を逆にたどっていったわけだ。そうするとたとえば「幸福か不幸かを考えるのは、そういう枠組み設定自体が間違っている」というような結論に達した。いまを生きているのなら、そんなことを考えるはずがないからだ。

そのころ、ある女の子と話していたら、その子は「私、人生に意味があると思うの」と言った。すかさずわしは「人生に意味はない。ただ生きているだけだ」と答えた。その子はびっくりした顔をした。そこでわしはなぜ人生に意味はないかということを得々と説明した。話を聞くその子の顔はだんだん暗くなっていった。もしかしたら怒っていたのかもしれない。もちろんその後、その子との関係が深まることはなかった。

教訓。自分のことを特別だと思っている女の子にアドラー心理学的なことを説明しないほうがよい。もちろん嫌われる勇気があれば別ですが。

★★★★☆


嫌われる勇気

自分は自分、バカはバカ。 他人に振り回されない一人勝ちメンタル術

ひろゆき(西村博之) SBクリエイティブ 2019年4月6日
読書日:2019年8月19日

周囲のバカにストレスを受けることなくスルーする技術を伝授するという本。たしかに、ひろゆきは裁判に負けても平気でスルーしていることを考えると、この技術が高いのかもしれない。

残念ながら、スルーする技術よりも、無駄話的な部分が多い。特に第2章のストレスフリーの仕事術は、会社の中でストレスフリーになる方法をいろいろ述べているが、なにぶんひろゆき自身は会社勤めしたことがないこともあって、なんか表面的な感じがして、ほとんど参考にならないんじゃないかな。

無駄話的なところが多いのは仕方のないことであって、だって、他人を気にするのは無駄だからスルーしろ、っていうのが基本で、それで終わってしまうんだからね。(苦笑)

まあ、第2章以外は、それなりに読める内容になっているので、読んでみてもいいのでは。

個人的には、いやな記憶が浮かんだ時のリアクションを決める、などといったメンタル術が多少参考になりました。

★★☆☆☆

 


自分は自分、バカはバカ。 他人に振り回されない一人勝ちメンタル術

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