市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学

ハワード・マークス/著 貫井佳子/訳 日本経済新聞出版社 2018.11.1
読書日:2019年8月25日

ハワード・マークスは低格付けの債券に投資するオークスツリー・キャピタルの創始者のひとりで、投資家に向かって定期的にレターを書いていますが、そのレターをもとにして本も出しています。

前書の「投資で一番大切な20の教え」では、わしが見たところ、20どころかひとつのこと、つまりリスクコントロール以外のことは述べていなかったような気がしました。

なにしろ、この人の本は、自分の書いたレターをもとにしているせいか、同じことが少し表現を変えて何度も出てくるという構成になっており、たぶん内容をまとめると数ページで終わるような感じです。

したがってこの人の本の正しい読み方は、だらだらと読みながら、繰り返し語られることを心に刻みつけるように読むという感じが正しいのでしょう。まるで職場のベテランが繰り返し噛んで含めるように若手を教育しているような趣があるのです。

前回の本がリスクコントロールならば、今回のテーマは正しいときに投資するという、タイミングの問題です。市場にはサイクルというものがあり、上がったり下がったりしています。そしてもちろん、投資するベストなタイミングはサイクルのボトムです。ところが、そのサイクルのピークもボトムもそこにいるのは一瞬でしかありません。どうすればベストなタイミングかどうかわかるのでしょうか。

ところで、この本で扱っているサイクルというのは、10年、20年という長期のサイクルの話をしています。そして、ピークを過ぎてボトムをつけたときというのは、直近ではリーマン・ショック級の話をしています。つまり、バブルとバブルの崩壊をサイクルと言ってるのです。なので、個々の銘柄の話をしているわけではありません。

そうなると、ピークが近いかどうかは、社会の心理状態を見ていれば分かると言います。つまり、人々が傲慢になり、リスクを恐れないようになり、「今回だけは違う」と言い始めたときです。そういう言葉が聞こえるようになったら、用心をしなくてはいけません。

問題は、社会が傲慢になったからと言って、サイクルがいつピークをつけるか分からないことです。2000年のITバブルの時は、保守的なひとが用心を始めたのは1996年ごろで、それから何年も市場は伸び続けました。2008年のリーマンショックの時も著者たちが用心を始めたのは2006年だったそうです。つまり3年間、市場は持ちました。

で、実際に崩壊したとして、いつ買うべきでしょうか? 著者によれば、いつがボトムなのか誰にも判断はできないと言います。じゃあ、「落ちてくるナイフを掴む」べきなのでしょうか。著者はまさにそうすべきだと言います。そもそもボトムを待っているうちに売り物はなくなってしまうのです。皆が投げている間しか買うことはできません。リーマンショックの時には、買い時は数カ月しかなかったそうです。2008年9月15日-2009年1月の間だけでした。

ということが、十分分かっていたとして、実際に買えるものなのでしょうか。世の中が総悲観の時に買えるものでしょうか?

著者によれば、そういうときは、未来の自分がどう今を振り返るかを思い描くそうです。もしもここで買わなかったら、未来の自分が後悔しないかどうか、それを考えるそうです。結局、適正な価格よりも思いっきり安くなっていると判断したら、買うしかないのです。

2008年のリーマンショックの時も、買うと判断して、オークツリーでは顧客を説得して、お金を集めました。が、どうしてもお金を出さなかった顧客もいたと言います。著者は自腹を切って、投資したといいます。

投資ファンドの場合は顧客を説得するのでしょうが、個人の場合はどうしたらいいのでしょうか。買いたくてもお金がない状況は避けなくてはいけないでしょう。そうすると、常にある程度のキャッシュを持っているしかないと思います。

わしは個人的には総資産の20%ぐらいは常にキャッシュで持っていたい、と思っています。しかし、実際には15%ぐらいを上下しています。

どういうわけか、わしは世の中が大変な時に、投資以外でお金を使う羽目になることが多くて、非常にタイミングの悪い人生を送っています。リーマンショックの時には、マンションを買わなくてはいけなくなり、価値が落ちた資産を売って、現金を工面しなくてはいけませんでした。(参照:投資家から撤退するかどうかを迫られた時期

日本の場合は、その後、2008年のリーマンショックが底ではなくて、2011年の東日本大震災がボトムでしたね。まだボトムがあったので、そこで買った資産が、いまの元になっています。わしの投資歴を振り返ると、ちょっと悲しいことが多いです。

 ★★★★☆

 


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