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目からウロコが落ちる奇跡の経済教室 基礎知識編

中野剛志 ベストセラーズ 2019年4月22日
読書日:2019年8月22日

MMT理論について分かりやすく解説した本。著者はかつて「富国と強兵」という本の中でMMT理論を説明しているが、なにぶんその本の目的は国を強くする方策を説明することにあるので、余分な部分が多すぎる。そこで、MMT部分だけを分かりやすく説明したのが本書と言えるでしょう。

わしは90年代から経済関係の本を読むようになったが、その当時、バブル崩壊後で日本経済はむちゃくちゃであった。わしは何が起こっているのか知りたいと思って、そういう経済の本を読んでいたのである。

しかし、いったい日本経済に何が起こっているのか、さまざまな議論があったが、結局なんなのかさっぱりわからなかったのである。

あるものは不景気なのだから赤字財政を行い公共事業をしろと言い、あるものはそんなことをしたらハイパーインフレが起きて日本経済は崩壊すると言い、あるものは人口動態が原因で労働人口が減ってるから今後景気が回復することはないと言い、あるものはお金をばらまけばいいと言い、あるものは時間とともに価値が減る貨幣を導入すればいいと言い、あるものはゾンビ企業が生き残って社会の効率が悪くなっているのが原因だからさらに不景気にして企業を倒産させなくてはならないと言い、あるものは二か国間・多国間のFTP条約を結んで自由貿易を活性化させなくてはいけないと言い、あるものは規制緩和をして産業を興しやすく起業をしやすくしろと言った。

マネーとはなんなのか、国家経済とはなんなのか、そんなところから考え直さなくてはいけなくなってしまったのである。なのに、それぞれの議論はつながることはなく、わしのフラストレーションは高まるばかりだった。

そもそも日本はデフレであるという認識が世間に形成されるまでに、非常に長い時間がかかったのである。

90年代の後半に消費者物価がマイナスになったことがあった。だが、日本経済新聞は1面で、これはデフレではないという署名記事を出した。

どういう意味?

わしはさっぱり分からなかったので、日経新聞に電話して、デフレでないという理由を聞いた。(時効だと思うから言うが、会社の電話を勤務時間中に私用で使いました。ゆるい職場でした(笑))。すると、顧客対応の部署も答えられなかったので(そりゃそうだよね)、なんと署名した記者自身に電話が回り、なぜデフレではないか直接説明してくれたのである。

記者によると、単に物価が下がるだけではデフレとは言えないのだそうだ。デフレというのは、需要が供給を下回った結果物価が下がるのがデフレなのである、と。「需要<供給」以外で物価が下がる例としては、技術革新でパソコンやスマホの値段が下がるとか、いろんな場合があると。なるほど。

わしのような質問が続いたのであろう。次の日の朝刊には、デフレの定義について詳しい解説記事が再度掲載されたのでした。(笑)

しかし、いまでは、(継続的に)物価水準が下がること自体がデフレと認められて、なんであれ物価が下がることが問題なのであるという認識になりました。

とまあ、いろんな経緯の末に、わしはMMTを読んで、ようやく全ての話がつながったと感じたのである。MMTはさように包括的、そしてシンプルである。

MMTが間違っているという人はほとんどいない。まったく普通のことしか言っていないのだから。問題は単に、インフレになった時に本当にそれを止められますか、というところだけなのである。

中野氏には頑張ってもらって、ぜひとも日本人のマネー感を変革してほしいものである。思うに、日本ほどマネーに対する議論が行われた国はないでしょう。日本人こそ、MMTを理解するのに適した国民はいないのである。

★★★★★

 


目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】 (ワニの本)

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