橘 玲 ポプラ社 2019年2月28日
読書日:2019年8月20日
橘玲は趣を変えて何度も同じネタを使いまわしている。
今回も、ここ何年間に出してきた本を若者向けの指南書という形で書き直したものである。ひとつひとつは橘玲の本をよく読むわしのような人間にとってはおなじみの内容なのであるが、しかしこういうふうにまとめられると、それなりに読めてしまう。
ちょっと面白いと思ったのは、アメリカで起業せずにわざとぬるい日本で起業することのメリットについて述べた部分だった。
日本では大きな企業は自分たちで新しい事業を開発する能力を失っている。なので、新しい事業に関しては基本的にM&Aで買う方向である。(お金だけはたっぷり持ってる)。そうすると、ちょっと行けてるふうの会社を起業すると、次々に買い手が現れて、取り合いになり、何の実績もないうちに数億円、数10億円の値段がついてしまい、あっという間に創業者はお金持ちになってしまうというのである。
さらに、親会社はその企業を経営する実力はないから、創業者たちは経営者として残ることになり、売った後も継続的に所得を得ることができる。
もちろん、アメリカの企業のように何千億円の値段ではないが、そもそも日本では数億円稼げれば十分豊かに暮らしていけるから、そのくらい稼げればいいという場合には、とても簡単だというのである。ぬるい日本ならではの成功方法と言える。
日本は、日本型サラリーマンの時代は終わったのに、いまだにシステムの転換はできていないけど、それでもやっぱり日本で生まれたことのメリットは大きいと橘氏は述べていて、日本にいる限りは飢えて死ぬことはあり得ないから、若者には自分にあったチャレンジングな人生を勧めているようである。
★★★☆☆