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げんきな日本論

橋爪大三郎 大澤真幸 講談社現代新書 2016.11.1
読書日:2021.4.1

二人の社会学者が日本の歴史を振り返って、日本の社会構造がどのように構成されてきたのかを議論する本。

じつは横浜市立図書館の図書カードを持っているのですが、なんと横浜市立図書館は3月から電子図書のサービスを開始したんですね。わしは、以前述べたように、電子図書館の普及を願っているものです。それでなんとなくどんな感じか覗いてみたら、この本があったので試し読みをしたら、面白かったのでそのまま借りて読みました。

(わしはあちこちの図書カードを持っていて、読めない本がなるべく少なくなるようにしてるの。本ぐらい買えばいいって? まあそうなんですけどね)

対談しているお二人は社会学者で、歴史は専門ではないと思うのですが、でも日本の歴史にも詳しいですね。びっくりしました。橋爪大二郎さんと大澤真幸さんが、キリスト教とかをテーマに一連の対談本を出しているのは知っていましたが、日本史にも詳しいとはね。社会学者ってなんでも屋なのかしら。

で、日本の歴史を社会学的に論じると、やっぱり天皇を論じないわけにはいかないんですね。なにしろ、ずっと日本社会の中心にいますからねえ。古代に誕生した天皇のシステムがいまだに続いているということの不思議。他の王朝への交代がなぜなかったのか。

でも、驚いたことに、変わった身分の存在は天皇だけじゃないんですね。平安時代の貴族も、鎌倉時代以降の武士も、ヨーロッパや中国に存在しない身分だとお二人は言います。

なるほど。これは気が付かなかった。日本人でいると、貴族も武士も存在するのが当たり前のように思っていたけど、こういう存在は世界の中でも日本だけなんだそうだ。

貴族とは律令の身分(政府の役職)をもらっている一族のことで、しかもそれは世襲じゃなくて毎回任命してもらう必要がある、というのがポイントらしい。貴族は税金を免除してもらえるという特権があるため、土地の寄進を受けて荘園として運営する。この特権を受け続けるためには、役職を任命をしてもらう必要がある。つまりその特権を天皇の任命権に依存している。貴族は自分の力で自立しているわけではない。

そういうわけで貴族は京都を離れるわけにはいかず、そのうちに土地との繋がりの強い武士に土地を奪われる。

武士は経済的に自立しているのだから、天皇の世話にはならなくて良さそうなものだけど、実際には武士こそなぜ自分が政権を担っていいのかという正当性を説明できず、結局天皇から征夷大将軍とかの役職を任命してもらわなくてはいけなかった。これも1回限りの任命だそうで、世襲は保証されていない。

結局、貴族も武士も、天皇からもらう任命書がないと自分を説明できない存在なんだそうで、そして誰も天皇を超える、天皇がなくてもいい普遍的なシステム(一神教の宗教とか、中国の天とか)を作り出すことができなかったから、残ってしまった。

唯一、天皇制を越える普遍的なシステムを構想したのが織田信長で、彼は天皇の上に立つ、皇帝的な存在になろうとしたのだという。安土城の構成にその考えが現れていて、なんと織田信長安土城天皇を移してこようとしたらしい。そして天皇の住まいは天守閣の横にある別の建物で、織田信長天守閣で生活し、そこから天皇を見下ろすという構想だったらしい。

織田信長本能寺の変で死んだけど、信長が生きていたら、この構想は実現したんだろうか。二人は、この事件が起きなくても、日本人は信長の考えを受け入れることができずに、本能寺の変的なことが起きたのではないか、と考えているようです。織田信長一神教の意味を理解できたただ一人の日本の政治家だったともいいます。

織田信長のあとの豊臣秀吉徳川家康も、結局は天皇の制度を利用することにした。秀吉の場合は豊臣という名前ももらって喜んで天皇を活かし、家康の場合は変革を求めず現状のできるだけの維持を目的とした。

幕末の尊皇攘夷の話も面白い。尊皇攘夷といいながら、尊王が達成されると、攘夷がすぐに消えてしまったが、それはなぜかという説明。誰もが考えていたのは、日本の独立を保つことで、そのための攘夷(つまり外国との戦争)だったのだが、じつは幕府が日米和親条約を結んだ段階ですでに独立は達成されていたというのだ。条約を結んだということは、日本を独立国としてアメリカが認めたということを意味しているからという。なので戦争をせずとも目的はすでに達成されていたので、攘夷は消えたのだという。(倒幕までは誰もそのことを言わなかったらしいが(笑))。

なるほどねえ。そうだったんだ。

それにしても、こうして振り返ってみても、日本という国はつくづく分権的な社会だよね。きっといまでもそうだよね。中央集権が苦手な国民なんだと思う。

★★★★★

 


げんきな日本論 (講談社現代新書)

 

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