ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

いままで起きたこと、これから起きること。 「周期」で読み解く世界の未来

高城剛 光文社新書 2022.8.30
読書日:2023.3.24

高城剛が世界に起きている周期を読み解くことによって、これから起きることを予測する本。

わしの出自がエンジニアのせいか、周期で説明しようという話を聞くと、どうも眉唾な印象を受けてしまう。何かを説明するときにいろんな周期をいろんな重みで合成すると、いかようにでも波形を作れてしまうからである。使う周期の波の数は多ければ多いほどよろしい。その方が合わせやすい。こういうのはパラメータ・フィッティングといって、十分な数のパラメータがあると、本当にどうとでも合わせ込みができてしまうのである。

市場の予測にも、よくコンドラチェフの波動がどうしたとかという話が出てくるが、わしはどうにもイマイチだと思ってしまう。波動が発生する理由は科学技術のパラダイムシフトで、新しい技術により景気が移り変わるという説明自体は悪くはないと思う。でもそれは定性的には、であり、いつ景気がどうなるか、というような具体的な部分については使えないと思う。

というわけなのだが、高城剛は十分根拠があると考えているのであろう。彼は歴史上に登場したいろんな周期についての知識を披露してくれるのである。

その中にはけっこう、おっ、と思うのもあった。例えば、地球の気温は地球の軌道や歳差運動などの影響を受けているという説があり、それによれば2050年から地球は寒冷化に向かうんだそうだ。なるほど。じゃあ、何もしなくても二酸化炭素による温暖化の問題はなくなってしまうかも知れないんだ。これはちょっとした注目点ですね。軌道や歳差運動は、測定可能である点が大きい。

しかし高城さんの興味は温暖化なのではなく、政治経済的な関心があるようだ。

高城氏が推しているのが、地政学者ジョージ・フリードマンの唱える80年周期説だ。アメリカのこれまでの政治の歴史は80年ごとに変わっていて、それに50年周期の社会経済的サイクルが存在して、これが合わさって歴史が動いていくという。これによれば、2025〜2030年は両方のサイクルが下の方になるので、なにかやばいことが起きそうだ、ということになる。

もうひとつ80年周期説があって、それはストラウスとハウの80年周期説で、20年ごとに世代が循環し、一周するのだという。それぞれの世代の特徴を「英雄」「芸術家」「預言者」「遊牧民」で分けている。そして社会的には春、夏、秋、冬とめぐるという。この予想でも、いまは冬の時代(危機の時代)で、2030年までそれが続くのだという。

それから投資家のレイ・ダリオの「覇権国家の250年サイクル説」は250年ごとに覇権国家が変わっていくというもので、アメリカは2026年に建国250年を迎えるので、転換点になるかも知れないという。(建国時はアメリカは覇権を握っていなかったから、建国のときからカウントするのは間違っているのでは?)。

というわけで、2020年代はなにかヤバそうなことが起きるというのですが、高城剛は今後何が起きるというのでしょうか?

アメリカの覇権が終わる! そして世界は多極化する!

以上でございます。(苦笑)

いやー、これって予言というか、これまでもさんざん言われてきていることで、わざわざ周期説を持ち出さなくてもいいことですよね。

このアメリカがやばいということを補強するために、エマニュエル・トッドの「帝国以後」という本を引用しているんですけど、エマニュエル・トッドはまったく周期を唱えていませんからねえ。そうなると、周期説は必要なくて、エマニュエル・トッドだけでいいんじゃないかって気がしますけど。

それでアメリカの覇権が終わったらどうなるか、いろいろ予想を書いているんですけど、ドルが没落するとか、代わりに暗号通貨が幅を利かすとか、まあ、あんまり大したことは書いていません。アメリカの内戦というのはあり得るからこれは要注意かな。

スイスのツークという村がクリプトバレー(暗号バレー)と呼ばれていて、これはスイスの銀行が匿名で資産を預かってくれなくなったのに対応して、ヨーロッパの貴族が新しく資産を匿名で運用できる制度を目論んでいるのだという点は、なるほどと思いました。まあ、なるほどと思ったのはここだけなんですけどね。

どうもこの本を読む限りは、将来を予測するには、世の中を素直に見たほうが、なまじ周期説を検討するよりも確かな気がしました。

★★★☆☆

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