小熊英二 講談社 2019.8.1
読書日:2023.12.19
デモなどの社会運動が好みという社会科学者の小熊英二が、ギリシャ時代からの哲学を振り返り、運動をして本当に社会が変わるのか、ということを述べた本。
日本の学者ってものすごく頭が良いと思う。教養や学術的なことをまとめさせると、ものすごく分かりやすかったりする。ところが、それが自分の意見を述べるという段になると、なんとも力不足なのだ。
この本もギリシャ時代からの哲学の流れを述べるところでは、ものすごくよく分かる。しかし、この本のテーマである「社会を変えるには」に対する結論としては、以下のようだそうだ。
「自分がないがしろにされている」という感覚を足場に、動きをおこす。そこから対話と参加をうながし、社会構造を変え、「われわれ」を作る動きにつなげていくこと……社会を変えるには、あなたが変わること、あなたが変わるためには、あなたが動くこと……」
だそうです。
うーん、あれだけ、哲学とか社会学とかについてながながと述べておきながら、この結論はあまりに力不足なんじゃないかなあ。なんだか急に話が小さくなっていくの。なんだか、この人、みんなと楽しくワイワイと運動ができればそれでいいのかもしれない。ほんとうに哲学の話は必要だったのでしょうか。
著者によれば、この本は行動を起こすためのたたき台のようなもので、あとは自分で歩きながら考えていってほしいらしい。
本当に頭の良い、運動好きの学者の本、としか言いようがありません。
わしの感覚では、社会を変えようとしなくても、さらには運動しようがしまいが、社会は変わっていきます。それだけ。
まあ、哲学の流れの部分は面白かったから、それで良しとする。
★★★☆☆