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ライフピボット 縦横無尽に未来を描く人生100年の転身術

黒田悠介 インプレス 2021.2.21
読書日:2022.4.16

現在の自分のキャリアから適応可能な隣接したキャリアを考えて、隣接のさらに隣接したキャリアまで想定しておき、現在のキャリアでそのための蓄積をしておくと、その隣接したキャリアに次々に転職が可能だと主張する本。

著者の黒田さんによれば、多くの人が間違っているのはキャリア形成はこうあるべきだという先入観があることだという。こういう先入観は危険だという。なぜなら、人生が長くなる一方、ライフスタイル自体は短命化し、世界の変化が激しいから、どちらにせよキャリアを転換せざるを得なくなるからだ。変化の激しい時代には、先のことを考えてこうしようと考えてもしょうがない面があり、どうなるかわからない状態を楽しむくらいでちょうどいいらしい。したがって、常にキャリア転換の準備をしておくのが正解だという。

キャリアの転換先としてはまったく新しいキャリアにいきなり飛び込むのはハードルが高いので、今のキャリアに隣接したキャリアを想定しておくのがよいという。例えばライターをやっていて書いて表現するスキルを持っている人で「食べ物」と「スポーツ」が好きなら、フードライターやスポーツライターにキャリアを転換することが考えられるし、取材でひとから話を聞くことが多いのならインタビュアーというキャリア転換もありえる。仮にインタビューにキャリアを転換したなら、その先にはインタビューの講師やインタビューメディアの編集者、という次の次のキャリアも想定できる。

このような隣接したキャリアに転換していくことを、著者はライフピボットと呼んでいる。バスケットのピボットと同じように、現在のキャリアに片足を付けたまま、もう一方の足で方向を変えるイメージだ。いきなり変えるのではなく少しずつ、いつの間にか転換しているイメージに近い。

ピボットをスムーズに行うためには現在のキャリアでピボットを意識した蓄積を行う。具体的には、価値提供できるスキルセット、人脈、リアルな自己理解、の3つだという。

スキルセットや人脈は分かりやすいが、自己理解とはなんだろうか。それは自分の価値観なのだという。仕事のなかで意味があると思えるものの経験を積んで、自分の価値観を見つけることが大切なのだという。キャリアの転換で自分の価値観に沿った転換ができれば、その転換は成功と言えるからだ。

このような蓄積をしていれば、実際に転換のチャンスが訪れたときに、スムーズに転換できるのだという。このようなチャンスはかなり偶然的に起きるが、準備をしておけばそのチャンスは増えていくのだそうだ。

まあ、このへんまでは理解ができるが、その後は急にハードルが上がる。

このような蓄積を行うためには、今の仕事を漫然と続けていても蓄積が進まないかもしれない。そこで著者は、蓄積を加速させるためのアクションを勧める。

具体的には、「新しい人に会う」「新しい場に出向く」「発信し続ける」ということだそうで、新しい人に会うためにはマッチングアプリを使って、オンラインやリアルで人と会うのだという。発信し続けるというのは、例えばブログで自分が関心ある記事を書き続けるのだという。こういうブログは発信するのをやめたあとにも、ずっと資産として残るという。

次はまたハードルが上がって、イベントに登壇したり、自分でイベントを主催したりするんだそうだ。さらにはコミュニティに参加したり、コミュニティを運営したりする。

つぎはギグワークをやってみる。ウーバーやTimeeなどのアルバイト的な仕事をしてみる場合もあるだろうが、自分のスキルを出品するというギグワークがいいそうだ。経験がほとんどなく未熟な場合でも報酬を下げて、とりあえず経験を増やすのがいいという。さらには報酬をまったく受け取らない、「ギブワーク」と著者が呼んでいる活動をするのがいいという。こうすると、お金は稼げないが経験を大量に積めるので、必要なスキルをためやすくなるという。

実際に著者は、フリーランスとして独立したとき、ディスカッションパートナーという肩書でマッチングサービスでたくさんの人に会ったという。これはギブワークで、無料だったようだが、やがて価値を認めてくれるようになり、仕事になったという。

さらにキャリア相談をするのが趣味で2000人以上と話したというが、これもお金はとっていないようだ。

さて、どうだろうか。

黒田さんのライフピボットというキャリア転換の方法は、特にコミュニケーション中心のコンサルタントのような職業に適していると言えるだろう。

コミュニケーションが楽しめるのなら、ギブワークのような無料の仕事であっても、人と会って話を聞くことだけでも楽しいかもしれない。

わしは新入社員の頃、イベントに来てくれた人たちを訪ねて、どんな会社の人が来てくれたのかを調査をさせられたことがあるが、知らない会社に行って話を聞くのは、実にバラエティに富んでいて結構楽しかった経験がある。

相談にのるといえば、最近、膨大な数の相談メールが社内からわしに寄せられており、正直に言ってこれらに対応するのは苦痛なのだが、仕方なく具体的なアイディアをつけて返しているので、評判がいいようだ。(なので、ますます来るのだが……)。

こういうのもお金になるのかしら?

別に今はやる気が無いけど、そのうちに人の話を聞くというギブワークをしてみてもいいのかも。お金はともかく、うまくいけば、人の役に立ったという感触は少なくとも得られそうですからのう。

★★★☆☆

 

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