ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

富野に訊け!!

富野由悠季 徳間書店 2010.2.28(kindle版は2014.10.1)
読書日:2022.1.3

ガンダムの監督、富野由悠季が雑誌のアニメージュで連載している人生相談を単行本化したもの。

お正月、暇なもので、dマガジンでふだん読まない雑誌をいろいろ読んでいたら、アニメージュでこの連載を見つけた。まあ、いちおうわしもガンダム世代だし、富野さん、こんなのやってるんだと思って、アマゾンで単行本を検索してみたら、キャンペーン特価の356円で売っていたので、うっかり買ってしまったもの。もちろん紙の嫌いなわしはkindleバージョン。なお、続編が2冊出ているけど、こっちも買おうかしら。なんかわしが使っている図書館にこのシリーズは入ってないみたいだし。

で、富野さん、けっこう柔軟な発想の人で、引きこもりもOKだし、友達がいなくても気にする必要はないらしいし、2次元の人にしか興味がなくてもいいみたいだし、自殺も選択肢として排除しないみたいだし、こういう悩みについてはけっこう優しいです。

でも、相手がガンダムの富野さんですから、当然のように、アニメの世界で働きたいという相談が来るわけです。アニメでなくても、今の仕事じゃなくて好きな世界で働きたい系の相談ですね。これらの相談に対しては、打って変わって、ボロクソに厳しいです。

アニメで働きたいという人に対しては、この世界は厳しくて、中学高校でマンガを何千枚も模写したとか、小説を何百枚も書いたとか、作品を10本ぐらい仕上げたというひとが普通にいるといいます。富野さん自身の中学時代もそうだったらしい。でも、絵ではものにならなかったらしい。

しかもそういう人は気がついたらアニメの世界にいるような人で、すべて自分の衝動でここまで来ているような人ばかりだから、やろうかどうか悩んでいる時点でもう相手にならないといいます。さらに、こういう人は、1枚100円、200円の仕事でもためらわずにやると言います。収入を度外視している人が多いので、こういう人と相談者は勝負にならないと言います。

そして何よりもやらなくてはいけないことは、学校の勉強だと言います。高校の教科書を全部覚えるくらいの教養を身に付けなくてはいけないと言います。まあ、この辺は、あまりに厳しい世界なので、最低限の生きていく糧を身につけてほしいという、優しさのような気もしますが。勉強していたら絵の勉強をする時間がないという人には、やる人は勉強した上でその時間をちゃんと確保している、と答えます。

しかし、こういう姿勢が強すぎるのか、経済学部に進んだが、アニメに関係する仕事はできるだろうかという人に、経済学部を選んだ時点でだめだとか、もう遅いとかボロクソです。

こういうのはどうかなあ、という気がしました。だって、このひと別にアニメーターになりたいだなんてまったく言ってないのに(苦笑)。わしだったら、アニメを動画配信に売り込むとか、著作権管理の仕事とか、アニメに投資する事業とかそういう仕事があるだろうと答えると思いますが、富野さんの場合、アニメの仕事というと、制作関係の仕事に視野が狭まっている気がしますね。もっとも富野さんに訊く時点で間違っている気もしますが。

それにしても、投資でたっぷり儲けながら好きな道に進めばいいという話は、ここに限らずどこでもほとんど聞きませんね。なんでですかね。FIREして自由な時間をたくさん得ても、やっぱりやってることは投資ばかりだったり、やることがなくて暇を持て余して旅行ばかりしている人が多いように思います。

で、逆にクリエイター系の人は、投資にむとんちゃくだったりします。まあ、そもそも投資するほどの現金がないのか、もしくは成功したクリエーターなら自分に投資したほうが確実ということもあるのかもしれませんが。

まず投資して、3000万円ためて、好きなことしましょう、と相談に答える人はまずいませんね。投資って結構退屈だったりしますから、クリエータとしての仕事と両立するような気がしますけどね。

まあ、富野さんから見れば、そういうことを考えている時点で甘いのかもしれませんが、どうせクリエータってほとんどの人が成功しないんだし、成功しなくても別に構わない状態にするっていうのはいいようにおもいますけどねえ。

この本が出た時代はスマホがまだ出てきたばかりのときだと思いますが、スマホのような携帯端末を使ってるようじゃだめだというのも、なんだかなあ、という気がしました。このひとSFをやってるのに、こういうところでは、むちゃくちゃ保守的。なんでやねん。

★★★☆☆

 

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