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菌世界紀行 誰も知らないきのこを追って

星野保 岩波現代文庫 2020.9.15(オリジナル単行本は2015.12)
読書日:2020.12.12

雪腐病菌(ゆきぐされびょうきん)というきのこの研究者が、きのこを追って北極や南極の極地をめぐる体験を述べた本。

申し訳ないがほとんどの人と同様に、きのこを含む菌類には興味がありません。(多少、粘菌には興味がある)。なので、純粋に面白い旅行記として読みました。

人間が「これを一生の仕事」と決めるのは一体いつなんだろう。わしはほとんどの人は二十歳前後なんじゃないかと思う。著者の星野さんも、大学時代に師匠というべき人に出会って、雪腐病菌というほぼ人が行かない道に踏み込んだ。

この人の場合、きっと他の人が行かないニッチな領域が必要だったのではないかと思う。そして、北欧で標本を集めた師匠もシベリアでは標本を採集していないときいて、シベリア行きを決意する。この辺も無用な競争を避けて人のしないところで勝負しようという気質が垣間見える。

で、当時のロシアは、ソ連が崩壊してしばらくたった90年代後半だったから、けっこう社会が不安定なころだ。そんなロシアのシベリアを放浪するには現地の人間の助けが必要だ。そこで日本で開かれた国際会議に来ていたやっぱり雪腐病菌のロシアの研究者、オレグ・トカチェンコ博士と知り合い、シベリアに一緒に行くことにする。ニッチな研究者はお互いに助け合うのだ。

このふたりのシベリア紀行がこの本の一番面白い部分で、ロシアのあちこちでの経験が語られる。

例えば、ロシア人と言えばウォッカだが、やっぱりどこに行ってもやっぱりウォッカを飲むことになり、本人も酒が好きなので泥酔したりする話とか、宿に泊まろうとしたら、物騒だからトイレに入るときはナイフを口にくわえて小便をするように言われるといった経験とか。また、ロシアの研究者は貧乏なのでいろいろやりくりする(でもウォッカはなぜかふんだんに出てくるんだけど)ところがけっこう面白かったりする。ロシア人の生態は、ほぼ部族民の基本的な物資をシェアする形態に近い気がする(共産主義だけに?(笑))。

シベリア以外にも、北極、南極の極地を回っていろいろ標本を集める話もあるが、まあ、やっぱりロシアの話が一番面白い。

著者はこの貴重な経験を語った本書で一躍人気者になり、本業の菌類関係の本も出している。やっぱり人と違った経験をするものである。

★★★★☆

 


菌世界紀行――誰も知らないきのこを追って (岩波現代文庫)

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