ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの

ジャレド・ダイアモンド 訳・楡井 浩一 草思社 2005.12.21

読書日:2009年06月04日

「文明崩壊」という題名がついているのだが、ちょっと違うんじゃないかと思う。この題名では、ローマ文明はほろびヨーロッパは中世に入った、などという話と勘違いしてしまう。そうじゃなくて、これは人間社会が文字通り滅んでなくなってしまう状況を研究した本なのだ。キーワードは持続可能性(サスティナビリティ)、人間が社会を維持できなくなるパターンを研究している。

事例は意図的に選ばれている。ポリネシア人が入植したイースター島やバイキングが入植したグリーンランドが非常に大きな割合を占めている。これらはそもそも人口が数千人しかいない。だから文明とは呼べない。なんでこんなところが事例としてふさわしいのか。それはすでに地球が1つになり、どこにも新しい土地がなくなった状態だからだ。ほかに進出する領地がない場合、いったい何が起きるのかを考えるために、このような孤立した集落がどのように滅んでいったかを調べる意義があるのだ。大部分は取り返しのつかない環境破壊の結果、人口を維持できなくなり、崩壊する。その崩壊の過程では、読んでいると気分が悪くなるようなこともたくさん起こる。

日本は江戸時代に森林を管理し、崩壊を食い止めることに成功した事例として紹介される。しかしそれは外部との接触を絶った江戸時代の間だけだ。いまは食料や木材を大量に輸入するために、環境破壊を他国に輸出している国となっている。いまや自分の国だけの環境保全を考えていては、地球全体が滅んでいってしまうと著者はいう。地球環境を破壊すれば、その残った環境で維持できるだけの人数まで世界の人口を減らすしかない。その瞬間は絶頂期のすぐあとに来ることが多い。そしてその崩壊の過程ではおこる眼も覆うような悲惨な状況がこれでもかこれでもかと示される。

観念にはまったく流されず、具体的な事例で環境破壊の結果を示してくれる好著。著者の関心の幅の広さは驚異的。

★★★★★


[まとめ買い] 文明崩壊
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