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人口革命 アフリカ化する人類

平野克己 朝日新聞出版社 2022.7.30
読書日:2022.10.31

アフリカの人口増加率は1950年代から2%以上であり、世界のどの地域よりも高く、未曾有の人口膨張を続けており、21世紀の後半には人口の半分がアフリカ人になってしまい、人類はアフリカ化すると主張する本。

アフリカの人口が増え続けているというのは知っていたが、人類の半分がアフリカ人になるということは大変なことである。人類がアフリカ化するというのは具体的にどんなふうになるのだろうか…という答えを知りたくて、本書を手にとったのだが、実はこれが結論であって、どうなるかまでは書いてないのだった。あれま。(苦笑)

その代わり、書いてあるのは、世界人口が増加してきた歴史(ブリテン島から始まったそうだ)だったり、人口増加が起きるプロセスの理論などが書かれてあり、アフリカではこれまでの理論とは合わない状況で人口が増えているということが記載されている。

これは非常に不満だが、著者はアフリカの専門家でしかなく、人類全体の影響を考えるには当然アフリカを超えた人類全体の文明の知識が必要になるから、著者には荷が重すぎる話なのだろう。誰か考察してくれないかなあ。

ちょっと残念な結果だが、人口が増加するアフリカ特有の事情はそれなりに興味深いので、その部分を書くことにする。

ヨーロッパや日本などの人口増加率は年率1%台だったそうで、それでも数十年後には人口が倍になる。1.5%で47年、2%では35年、2.5%では28年で倍になる。アフリカでは1950年代で世界人口に占める割合は10%以下だったが、それ以来、2%以上の人口増加率で増え続けており、アジアの人口増加が頭打ちになったいまでも増え続けている。

ヨーロッパやアジアでは、人口が増えたあと、生活水準が向上し、産む子供の数が減っていき、人口増加は頭打ちになり、高齢化社会が訪れている。ヨーロッパはゆっくりとそれが進み、アジアでは急激にそれが進んでいるという違いはあるが、流れとしては同じである。

アフリカでは人口増加の様相が異なっており、子供の数が多いまま人口がどんどん増えているのだそうだ。しかも、そのたくさんの子供は親がそれを望んでいるので、計画的に大家族になっているのである。

これは子供が多い方が豊かになれるという、現代では理解しにくい状況が起きているからだ。アジアなどでは緑の革命が起きて、品種改良、化学肥料、機械化で、単位面積あたりの収穫量を増やしていった。農業は効率化され、少ない人数でたくさん作るということになり、そのあまった人口は他の産業に流れて、より付加価値が高くなり、生活水準が上がっていった。

アフリカでは単位収量は上がっておらず、たんに耕作地の面積をどんどん増やして収穫量を増やすということが行われているらしい。この場合、労働力が多いほど、収穫量が増えるので、人数が多いほうが歓迎される。労働力が多いほうがいいから、一夫多妻も歓迎される。(妻自身、夫が第2妻や第3妻を取ることを歓迎する)。もちろん子供の価値も高くなる。子供は純粋な労働力としてだけでなく、とくに女の子は多くの持参金が期待できる。だから子供をたくさん持っているということは富があるということなのだ。

うーん。こんな記述を読むと、アフリカ経済の発展段階っていまどのへんなのさ、という気がするよね。日本なんか江戸時代には開墾できる土地は相当開梱しつくされたという感じなのに、アフリカはまだまだ開墾できるところがあるというわけだ。なぜこれまで開梱されなかったのか、そっちのほうが不思議である。農業自体がまだ新しい産業なのだろうか?

なお、アフリカでは穀物の輸入も多く、ウクライナ戦争でアフリカが食糧危機に陥りつつあるという話がされていますね。やっぱり効率が悪いんじゃないだろうか。

こういう人口の増え方なので、アジア経済で話題になる、人口ボーナスや人口オーナスという現象は起きていないんだそうです。人口ボーナスというのは、人口が増えて働き手が増えるものの、産む子供の数が減る結果、養う負担が減り、その分消費が爆発的に増える現象です。そのあと、そのたくさんの労働人口が高齢化して反対に労働人口が減るので養う負担が増えて人口オーナス(負担)となるわけですが、ともかく急速な経済発展には人口ボーナスは有効です。だからそれがないアフリカの経済成長は人口の増えた分に見合った成長で、なんの加速効果もないってことですね。

まあ、人口が増える分だけ影響力が増すのは理解できるけど、なんかアフリカから人類全体に影響を与える文明が誕生する気があまりしないんだよねえ。でも、人数はやっぱり力だから、アフリカで流行ったものが世界中で流行るみたいなことは、それはやっぱり起きるんでしょうね。

まあ、ともあれ、アフリカの人口は無視はできませんので、今後とも関心を持っていきたいところです。

★★★☆☆

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