ヘタレ投資家ヘタレイヤンの読書録

個人投資家目線の読書録

このままだと、日本に未来はないよね。 ひろゆき流時代を先読みする思考法

ひろゆき/著 -- 洋泉社 -- 2019.3
読書日:2019年6月31日

読書する楽しみのひとつに、自分がこれまで思ってもみなかった発想に出会えるというのがある。ひろゆきも、映画を観るのはそのためだそうだ。そういう意味では、この本にかかれてあることはそうとう微妙。なんか普通なんで。

とくに前半がひどい。第2章までは読む価値があるのか微妙。iphoneは売れないと予測したが、最初のiphoneが出た時点ではその予測はあってた、などとどうでもいい言い訳を聞かされても困る。

後半になるほど面白い。思いつきレベルだけど、すくなくとも笑いは取れるアイディアが披露されている。3章の国際情勢の予測に関しては、それなりに参考になった。

しかしまあ、全体として読んでも読まなくてもいいレベル。さくっと1時間ほどで読めばいいのでは。

★★☆☆☆


このままだと、日本に未来はないよね。

日本国紀

百田 尚樹 幻冬舎 2018年11月12日
読書日:2019年6月22日

ネットからのコピペとかが話題になっているが、この本はどう見ても歴史書ではないし、たんに百田の見方を語っているだけだから、あまりその辺を強調しても仕方がないのではないか、という気がする。

たぶん百田氏の言いたいのは明治以降の現代史にあるのであって、それ以外のところはそれを説明するための前提条件程度なのではないかと思う。実際に江戸時代には3分の1程度で達して、明治以降は約半分ある。

で、現代史の中でも特に言いたかったのは、まるで無かったことのようになっている戦前の歴史をもう一度取り戻し、日本人の誇りを取り戻してもらいたいというところなのだろう。

それで、GHQの教育で日本人に罪の意識を植え付けたというところが、強調されている。(「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(WGIP:War Guilt Information Program))

しかしながら、わしがもっともうなずいたのは、日本人の言霊信仰が影響しているという説明だ。こっちの方が納得する

日本人には具合の悪いことはあえて口にしないという傾向がある。それはなぜかというに、日本人には言霊信仰があり、口にしたことが現実化するという発想があるというのだ。

これは百田氏が初めて言ったことではないだろうが、この本でとても納得することができた。

だから戦争中も悪いニュースについては語らないようにしたし、戦後も、戦前のことはあまり語らないようにしてきたように思う。まずは意識に上ること自体が良くないとする傾向だ。

都合の悪いことは意識に上らせないようにする、というのは特に日本人だけの特性ではなく、人間一般の特性の一つであるとは思うが、日本人の場合は言霊信仰と結びついていっそう強力だ、というのは、説明としてよくできていると思う。

最近では、年金だけでは2000万円足りないという金融庁が報告を出すと、じゃあどうするかという議論になるのかと思ったら、逆に炎上する結果になってしまい、報告書自体がなかったことになってしまった。これなんかも言葉にすること(=意識に上ること)事態を穢(けが)れとする、日本人的な発想だと思った。

この説明は応用範囲が広いので、とても便利だ。このような発想ができるのも、百田氏が物語を語る作家だからなのかもしれない。

この本は歴史書ではないかもしれないが、物語作家がみた日本史という意味ではよい本ではないかと思う。

★★★★☆


日本国紀

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

ピーター・ブラウン, ヘンリー・ローディガー, マーク・マクダニエル エヌティティ出版 2016年4月14日
読書日:2019年6月21日

どうすれば効率的な学習ができるかということについて述べた本。

具体的には、
(1)想起練習を組み込む。繰り返し読むよりも、軽いテストをする。
(2)間隔を開けて再度確認する。
(3)同じ練習を繰り返さず、少し異なった角度の練習を組み合わせる。
(4)単純に覚えるのではなく、概念を理解するようにすれば、応用が利く。
などなど。
あと、記憶の効果を高める「記憶の宮殿」の方法を教えている。(BBCドラマのシャーロックにも出ていたが、記憶の宮殿ってほとんど普通名詞だったんだね)。

しかし、これって普通のことなんじゃないの? 子供の頃からこういうふうに勉強すればいいと教えられていた気がする。

科学的な文献に基づいて書かれてるんだけど、その元の文献は1970年代のもの。40年以上前の研究だ。これじゃあ、すでに知っていて当たり前。

だめじゃん。

投資に興味がある人は、この本の中に、ブルース・ヘンドリーという男が子供の頃からお金の稼ぎ方を学んで、一人前の投資家になるまでの話があって(第6章「学び方」を越える、p139)、そこのところは少しは参考になるので、そこだけ読めばいいんじゃない?

★★★☆☆

 


使える脳の鍛え方

書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで

フェルナンド・バエス 紀伊國屋書店
読書日:2019年6月16日


書物や図書館が破壊された歴史を振り返る本。分厚い本だけど、意外に面白くて、長さを気にせずに読めた。本に興味のある人には楽しめると思う。

昔、この本でも紹介されているブラッドベリの「華氏451度」を読んだことがある。本というものが否定された架空の世界で、そこでは人々は割り当てられた本を丸暗記して、未来に伝えようとする。いつか再出版できる日のために。

こんなことはSFの話かと思っていたら、世界史ではごくありふれた話だということがわかってびっくりした。秦の始皇帝焚書坑儒で有名だが、その本を燃やす焚書は徹底していたらしく、本当に全ての本を燃やしてしまった。始皇帝が死んだあと、学者たちが記憶をもとに再現したしたとのこと。(完璧に暗記していたのだ)。

生物の種が途絶えてしまうように、一冊も残さずに消滅してしまった多くの本に愕然とする。けれど、それも最初のうちだけで、あまりにも多いので、そのうちに不感症になってしまった。

だいたいパターンは一致していて、ある国が平和な時代を過ごすと、文化も発展し、図書館も充実する。ところが国が不安定になり、戦争などで負けると、図書館も壊滅状態になり、文書が燃やされ、略奪をうける。

戦争も単に勝つだけではなく、ある民族を消し去ろうという動機がある場合、意図的に図書館や行政文書の保管庫などを攻撃し、全ての民族の記憶を消し去ろうとする。日本も例外ではなく、日中戦争では多くの公立図書館を意図的に破壊したという。

現代では、本はたくさん生産されるので、一冊も残らないという本は少ないけど、行政の記録文書みたいなバックアップがなくオリジナルしかないような文書は、失われるともう取り返しがつかない。

こうしたことが、現代でも起きていることに本当にびっくりする。例えば、米国とイラクの戦争でも、多くの図書館、博物館が壊滅してしまった。21世紀になっても、何も変わっていないことに本当に驚く。

こうした事態を避けるためには、電子的に記録を取って、世界中に分散して保管するしかないのではないかと思う。だからグーグルが図書館の全ての本のデジタル化を進めるのは、とても有意義なことではないかと思う。

だが、デジタル化には弱点がある。そのシステムに何かあると、全てが一挙に失われる可能性があるのだ。この本ではテロとか核攻撃とかがあげられていたけど、わしは太陽フレアを思い浮かべた。ある日、超強力な太陽フレアが襲ってきて、地球上の全てのコンピュータやネットワークが破壊され、メモリに蓄えられた記録も消えてしまうことにならないだろうか?

最後にこの本に何度も出てきた言葉を記す。

 「本を燃やす人間は、やがて人間も燃やすようになる」  ハインリッヒ・ハイネ

★★★★☆


書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで

大富豪の投資術

マーク・モーガン・フォード ダイレクト出版 2017
読書日:2019年6月9日

パームビーチグループという資産管理をアドバイスする会社が、「いまなら5000円相当の本が無料で当たる」(実際は配送料が取られるらしい)とネット上で盛んに宣伝している本。

あんまり表示されるので、読んでみたくなったが、無料でもらうとパームビーチグループからジャンクメールがたくさん来そうなので、アマゾンで新品を1800円で買った。

内容的にはとてもよいと思う。著者はマイケル・マスターソンというペンネームでも有名な人だそうで、資産数百億円の富豪らしい。しかもとても正直に本音を書いていると思う。

まず、株などの投資で大金持ちになることは諦めろと言い(とほほ)、もっとも確実なのはスモールビジネスを起こすことだという(やっぱり!)。しかも起業にあたっては、リスクをほとんど取らないことを重視し(失敗してもよいぐらいのリスクしかとらない)、スモールどころかマイクロビジネスを起こして、それをいくつも持てという。マークさんのお気に入りのビジネスは、不動産投資である。それから意外にも、製造業が良いらしい。

このスモールビジネスを起こすことが富豪への近道という話は、本当の富豪と言われる人の本からさんざん聞いた話である。こういうのを読むと、やはり起業しなくてはいけないのか、と思ってしまう。

この本のいいところは、それ以前のどうやって収入を増やすか、あるいは元金を作るかというところも述べてあり、親切だ。

勤め人なら、まず自分の価値をあげて、給与を上げろという。そして単に給与を上げるのではなく、事業を提案し、その事業から得られる収益から特定のパーセンテージを受け取れるように交渉しろという。そのためには、もちろん大企業ではだめで、小さくて伸びる分野の事業を行っている会社に、最初から選んで入らなくてはいけないという。(なので、すでにわしは論外)。

元金を作るために、小さな家に引っ越して家賃を減らし、さらに車も中古の実用的なものを買えという。できれば、勤め先に近いところに住めという。そして固定費を減らして、(例えば、携帯電話やビデオケーブルを止めるか安いプランに切り替えるとか)、貯金する。これなんかは、本田静六の「月給の4分の1は天引きする」というプランに近い。

資産ができたらできたで、どうやって守ればいいか、引退するだけの資産ができても能動的にお金を得る(働くこと)ことを止めてはいけないとか、さまざまなステージでのアドバイスが得られるようになっています。(もちろんパームビーチグループの助言に従うことが最も良いという結論にはなりますが。)

わしは読み終わったら、市の図書館に寄付して、他の人が無料で読めるようにしようと思う。そうすれば、パームビーチグループの宣伝に心が引かれた人はいつでも読めるからね。(少なくともわしの住んでいる地域のひとはだけど)。

なんかこれだけ言われると、スモールビジネスもやってみたくなる。なにかリスクが極限に限られたスモールビジネスのアイディアはないかしら? できればさほど労力のかからないもの。

★★★★☆

 


大富豪の投資術

お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する (PHP新書)

ジム・ロジャーズ PHP研究所 2019年1月17日
読書日:2019年6月8日

国際的に有名な投資家ジム・ロジャーズは、今後に期待できる国として、北朝鮮を挙げる。理由は、もしも北朝鮮が開国して韓国と統合したら、統合朝鮮はとんでもなく発展する可能性があるからという。

これには誰も異論は唱えないだろう。北朝鮮金正恩とトップ会談した米大統領のトランプも、「北朝鮮には経済発展のポテンシャルがある」と言ってたくらいだから。

単に問題は、いつ、どんなふうに開国するか、という点だけである。ジム・ロジャーズは、もうすぐにでも開国すると思ってるらしいけど、そんな確信を持てるのは彼だけである。

それに彼にしても、そんなにリスクは負っていないのである。彼が掛けているのは、大韓航空とか普通に投資してもおかしくない銘柄で、何か問題が起きたらすぐに売却すればいいだけのことだから。一方で、もしも思惑通りのことが起きたら、大儲けができる。

こういう、負けても大したリスクがなく、勝てば大儲けという、非対称な状況に投資するのがジム・ロジャーズの真骨頂なのだろう。

わしは、韓国経済の近未来に不安があるから、この賭けには乗らないが、韓国経済が外貨不足に陥って、もう一度IMF崩壊するとか、そういう状況になったら、ぜひ賭けに乗りたい。単に安く買いたいというだけですが。

ちなみに北朝鮮が魅力的という話は周期的に出てくる話で、90年代にも北朝鮮が問題を起こした時には、北朝鮮の外債に魅力ありという話が出ていた。みな、北朝鮮に不安を持って、外債が暴落していたのだ。その後、北朝鮮がデフォルトしたという話は聞かないから、北朝鮮は外貨をかき集めて返済したのではないかと思う。きっと投資した人は大儲けしただろう。この外債は日本では買えなかった。たぶんロンドン辺りで買えたのではないかと思う。

ジム・ロジャーズは日本の将来に悲観的である。

わしもあまり楽観はしていないが、個別株には日本の状況と関係なく成長する銘柄があると思ってるので、そういうところに投資すればいいのでは、と勝手に思ってる。例えば、自動車がEVになると、電池とモーターが儲かることは確実。電池メーカーはどこが勝つかさっぱり読めないけど、モーターは日本電産がかなりシェアを取ることはほぼ確実じゃない?

そういうわけで、日本の将来は知らないが、日本電産には楽観的である。

農業を押しているけど、もし農業に注目するなら、わしなら村上農園みたいな、工場生産的な所なら投資したいけど、村上農園は上場していないからね。

まあ、ジム・ロジャーズは、自分でも言ってるように、だめだと思ったらすぐに前言撤回します。でもその撤回の言葉は、たぶんわしらには届かないので、彼は逃げられても、わしらは逃げられないので、ご注意ください。

★★★☆☆


お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する (PHP新書)

マネーの魔術史 :支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか (新潮選書)

野口悠紀雄 新潮社 2019年5月22日
読書日:2019年6月5日


野口悠紀雄は信頼できる経済学者の一人だ。彼はどんな議論でもできる限り1次資料にあたり、自分の頭を使った議論を展開するからだ。こういう人はありがたい限りである。

今回のこの本の執筆動機は、もちろん日銀の異次元金融緩和にある。異次元金融緩和については、これまでの著作でも触れられていたが(もちろん批判的)、今回は歴史に目を向けたところが特徴がある。

金融緩和は現代に始まったわけではなく、歴史上、常につきまとった問題だ。国家がなにか事業を行うと、その財源をどのように手当するかというマネーの問題が発生する。特に戦争という事業は莫大なマネーが必要になり、そのファイナンスは大問題となる。

民間企業なら銀行や社債で借金を積むしかないが、国家の場合は民間企業にできないことができる。つまり通貨の発行だ。通貨の発行を野口氏は「マネーの魔術」と呼ぶ。

歴史を見れば分かるように、マネーの発行は国家に限るものではない。この本でも民間銀行が通貨を発行していた時代のことに触れているが、まあ、参考程度でいいだろう。現代では、国家以外が通貨を発行する状況は、ほとんど無視していい。

で、通貨の発行というマネーの魔術を駆使すると、インフレが生じ破綻するというのがお決まりの展開だが、うまくファイナンスができる場合もあり、けっこういろいろなパターンがある。

例えば、ナポレオン戦争当時のイギリスはGDPの2倍以上の国債を発行した。この結果、60%のインフレが起きているが、戦争が終わると物価は下落し、結局もとに戻っているという。発行した国債は償還期限のないものだったから、国債の発行残高(=通貨の発行残高)は高いままだったはずである。なのに、物価は下がっているのである。

なぜそうなったかについては野口さんは答えていない。ただ、インフレによってイギリス国民はインフレ税を収奪されたが、フランスの略奪に依存したファイナンスよりは持続可能だったと答えるのみである。ともかくインフレ状態は国民には辛いかもしれないが、持続可能らしい。

有名なドイツのハイパーインフレについても述べられているが、野口さんの説明を読んでいると、そもそもこのインフレは防ぐことができたのではないかという気になる。中央銀行の総裁がバカだっただけで。

さて、このように歴史を振り返って、いまの日銀の金融緩和について、野口さんはどうまとめているのであろうか。

国が発行した国債を日銀は民間銀行から買い集めて、事実上の日銀引受状態になっている。国債は日銀当座預金に変わり、日銀当座預金は銀行がいつでも引き出せるので、常に日銀銀行券に変わりうる。

日銀銀行券に変わった時点で、通貨(マネーストック)が増えるのでインフレが発生するという。いまはマネーが増えていないので、インフレになっていないだけである。国債が償還期限があるのに対して、日銀当座預金は瞬時に通貨が増える可能性があるわけだ。

しかし、このように批判するのはどうも変である。だって日銀はそのようにして、いまインフレをなんとか起こそうとしているのである。インフレが起こっていないのが問題なのに、インフレになるからだめというのは変である。

結局、インフレが起こるのは間違いないとして、それが目標の2%に収まると考えるか、それ以上になってコントロールができないと考えるかの違いにしかならない。

超高齢化に対応しようとして、財政が破綻するのはほぼ確実だと野口さんはいう。結局、ここに尽きる。社会福祉で破綻が確実だと信じるかどうかである。破綻すると信じるなら、ハイパーインフレが発生し、ファイナンスがなんとか可能ならそれは起こらない、ということだ。

もちろん、超高齢化社会に対するファイナンスの見通しは立っていない。しかし、わしは「確実に破綻する」と単純に決めつけるのは、どうも思考停止に思えてならない。

この辺の議論はきっと野口さんのこれまでの本でなされているだろうから、機会を見て、読んでみたい。どうも納得がいかないので。

金融緩和だけで、日本が立ち直ることはないというのはその通りだと思う。なにか創造的なものが必要だ。これだけは政府や日銀がコントロールできるものではないので、創造的な傾向を助長するようなことをするしかない。その意味でも日銀のいまの政策は、あった方がいいと思う。

★★★★☆


マネーの魔術史 :支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか (新潮選書)

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