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日本国紀

百田 尚樹 幻冬舎 2018年11月12日
読書日:2019年6月22日

ネットからのコピペとかが話題になっているが、この本はどう見ても歴史書ではないし、たんに百田の見方を語っているだけだから、あまりその辺を強調しても仕方がないのではないか、という気がする。

たぶん百田氏の言いたいのは明治以降の現代史にあるのであって、それ以外のところはそれを説明するための前提条件程度なのではないかと思う。実際に江戸時代には3分の1程度で達して、明治以降は約半分ある。

で、現代史の中でも特に言いたかったのは、まるで無かったことのようになっている戦前の歴史をもう一度取り戻し、日本人の誇りを取り戻してもらいたいというところなのだろう。

それで、GHQの教育で日本人に罪の意識を植え付けたというところが、強調されている。(「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(WGIP:War Guilt Information Program))

しかしながら、わしがもっともうなずいたのは、日本人の言霊信仰が影響しているという説明だ。こっちの方が納得する

日本人には具合の悪いことはあえて口にしないという傾向がある。それはなぜかというに、日本人には言霊信仰があり、口にしたことが現実化するという発想があるというのだ。

これは百田氏が初めて言ったことではないだろうが、この本でとても納得することができた。

だから戦争中も悪いニュースについては語らないようにしたし、戦後も、戦前のことはあまり語らないようにしてきたように思う。まずは意識に上ること自体が良くないとする傾向だ。

都合の悪いことは意識に上らせないようにする、というのは特に日本人だけの特性ではなく、人間一般の特性の一つであるとは思うが、日本人の場合は言霊信仰と結びついていっそう強力だ、というのは、説明としてよくできていると思う。

最近では、年金だけでは2000万円足りないという金融庁が報告を出すと、じゃあどうするかという議論になるのかと思ったら、逆に炎上する結果になってしまい、報告書自体がなかったことになってしまった。これなんかも言葉にすること(=意識に上ること)事態を穢(けが)れとする、日本人的な発想だと思った。

この説明は応用範囲が広いので、とても便利だ。このような発想ができるのも、百田氏が物語を語る作家だからなのかもしれない。

この本は歴史書ではないかもしれないが、物語作家がみた日本史という意味ではよい本ではないかと思う。

★★★★☆


日本国紀

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