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書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで

フェルナンド・バエス 紀伊國屋書店
読書日:2019年6月16日


書物や図書館が破壊された歴史を振り返る本。分厚い本だけど、意外に面白くて、長さを気にせずに読めた。本に興味のある人には楽しめると思う。

昔、この本でも紹介されているブラッドベリの「華氏451度」を読んだことがある。本というものが否定された架空の世界で、そこでは人々は割り当てられた本を丸暗記して、未来に伝えようとする。いつか再出版できる日のために。

こんなことはSFの話かと思っていたら、世界史ではごくありふれた話だということがわかってびっくりした。秦の始皇帝焚書坑儒で有名だが、その本を燃やす焚書は徹底していたらしく、本当に全ての本を燃やしてしまった。始皇帝が死んだあと、学者たちが記憶をもとに再現したしたとのこと。(完璧に暗記していたのだ)。

生物の種が途絶えてしまうように、一冊も残さずに消滅してしまった多くの本に愕然とする。けれど、それも最初のうちだけで、あまりにも多いので、そのうちに不感症になってしまった。

だいたいパターンは一致していて、ある国が平和な時代を過ごすと、文化も発展し、図書館も充実する。ところが国が不安定になり、戦争などで負けると、図書館も壊滅状態になり、文書が燃やされ、略奪をうける。

戦争も単に勝つだけではなく、ある民族を消し去ろうという動機がある場合、意図的に図書館や行政文書の保管庫などを攻撃し、全ての民族の記憶を消し去ろうとする。日本も例外ではなく、日中戦争では多くの公立図書館を意図的に破壊したという。

現代では、本はたくさん生産されるので、一冊も残らないという本は少ないけど、行政の記録文書みたいなバックアップがなくオリジナルしかないような文書は、失われるともう取り返しがつかない。

こうしたことが、現代でも起きていることに本当にびっくりする。例えば、米国とイラクの戦争でも、多くの図書館、博物館が壊滅してしまった。21世紀になっても、何も変わっていないことに本当に驚く。

こうした事態を避けるためには、電子的に記録を取って、世界中に分散して保管するしかないのではないかと思う。だからグーグルが図書館の全ての本のデジタル化を進めるのは、とても有意義なことではないかと思う。

だが、デジタル化には弱点がある。そのシステムに何かあると、全てが一挙に失われる可能性があるのだ。この本ではテロとか核攻撃とかがあげられていたけど、わしは太陽フレアを思い浮かべた。ある日、超強力な太陽フレアが襲ってきて、地球上の全てのコンピュータやネットワークが破壊され、メモリに蓄えられた記録も消えてしまうことにならないだろうか?

最後にこの本に何度も出てきた言葉を記す。

 「本を燃やす人間は、やがて人間も燃やすようになる」  ハインリッヒ・ハイネ

★★★★☆


書物の破壊の世界史――シュメールの粘土板からデジタル時代まで

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