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個人投資家目線の読書録

トヨタのEV戦争 EVを制した国が、世界の経済を支配する

中西孝樹 講談社ビーシー 2023.7.25
読書日:2023.10.25

トヨタは1000万台の車を売り上げる巨大企業であるが、EV化への事業構造転換は、過去のしがらみなく最初からEVを前提に事業を組み立てられるテスラ、BYDなどの新興企業と比べてはるかに難しく、そのEV化戦略をアナリストの立場から追った本。

トヨタがEV時代を生き残れるのかどうかというには日本経済の帰趨に直結するので、この本を手にとって見たのである。で、トヨタは生き残れるのだろうか? この本を読んで分かったのは、さっぱり分からん、ということである。EV化への道はあまりにいろんなことが不明であり、なにか下手を1回でも打てば、トヨタでもあっという間に傾いてしまうことも大いに考えられる状況なのだ。

しかも状況はコロコロ変わる。

この本でも取り上げられている、ホンダとGMの共同開発の話はこの本を読み終わったあと、解消されてしまった。

www.nikkei.com

中国で電動アクスル(EVのエンジン)を売っているニデック(旧・日本電産)は、電動アクスルが不振で、この分野が赤字になってしまった。しかも来年はもっと売上が減るという。

www.nikkei.com

というわけで、この本を読んでいる端から状況がどんどん変わっていくのである。

このような現在の状況を考えるに、EVで利益を出すというのは、とてつもなく難しそうである。テスラやBYDが利益を出していると言っても、テスラは利益率が高い高級車であり、BYDはどうやらEVではなくプラグイン・ハイブリッド(PHEV)で利益を出しているようである。

テスラは高級車ではなく、次に投入する大衆車である「モデル2」が成功して初めてEV時代が来たと宣言できるだろう。この本でも言っているが、台数が増えてソフトのアップデートでは解決できないメンテナンスの問題が発生したときに、それに対応できるのか、という問題もある。いくらマスクが自信満々だとしても、テスラもやっぱり崖っぷちなのだ。いつ傾くか分からないのである。

ということは、EV業界全体が崖っぷちなのである。最初からずっと崖っぷちだったとも言える。まあ、新しい産業が立ち上がるときにはそんなものだろう。

この本でも言っているが、EVだけでは利益は出ないので、鍵はモビリティ産業として成立するかどうかというところにあるようだ。つまり、EVは個人が所有するものというよりも社会全体で所有されて、24時間働いてもらわないととてもペイしないというものになるだろう。

これには、自動運転技術が実用化されないと無理だろう。でも、そのハードルはとてつもなく高いのである。5年前には、いまごろ街の中を運転手なしの自動運転車がガンガン走っていると予想されていたが、それは妄想だったというのがはっきりしたし、いまも妄想の域だ。

今後もEV業界は良かったり悪かったり、停滞とブレークスルーを繰り返すジグザグで伸びて行くだろう。わしは今後5年ぐらいは、EVは停滞するんじゃないかという気がする。その間に自動運転技術が確立するかどうか。

というわけで、トヨタの戦略に少々否定的な著者と違って、わしはできるだけプラグイン・ハイブリッドで引き伸ばしを図って、後出しジャンケン的に世の中のEV化についていくトヨタの戦略は、それなりによろしいような気がする。そしてEVで本気なのはプレミアムな高級車だけ、というのも理にかなっている。世間からEVに消極的と捉えられてもいいではないか。

もうひとつ、この本を読みながら考えたのは、本当にトヨタが必要なのか、ということだった。なにしろ、トヨタに大きな思い入れがあるらしい著者と違って、わしはまったく思い入れがありませんからのう。かつて、あれだけ強かった家電メーカーが存在感をなくしても、いま誰も困っていないように、トヨタもなくなっても誰も困らないかもしれない。

わしが意外に思ったのは、EVにおけるヒュンダイの存在感だった。ヒュンダイはかなりうまくやっているようだ。知らなかったなあ。

あと、ドイツ車の右往左往。EUがEV化を宣言しているのに、うまくいっていない。ドイツ経済全体が不振の方向なのに、ドイツ車がこの状況だと、ますます大変そう。

★★★☆☆

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