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日本の死角

現代ビジネス編 講談社現代新書 2023.5.20
読書日:2023.10.17

講談社ウェブマガジン「現代ビジネス」に掲載された論考16本をまとめた本。

どれもウェブマガジンに掲載されたもので、短いものだ。深く考えるには足りないけれど、新しい視点を得られて、気になった部分は読者が掘り下げてくれればいいという発想だろう。

当然、発表された時期とは状況も変わっているものもあるので、今回の出版では論者により加筆されたものもある。その最もたるものは、藤田祥平という作家が書いた2017年の中国に関する論考だろう。(『日本が中国に完敗した今、26歳の私が全てのおっさんに言いたいこと』)

1991年生まれの著者は日本でサラリーマンをしていたとき、新しい企画がまったく実行されなかったそうだ。ところが中国ではアイディアが生煮えのままどんどん実行に移されていて、著者はうらやましくてならなくなったそうだ。こうなったら日本は若者を鉄砲玉にして、中国に送り出してくれ、と叫んでいる。まだ2017年の中国は輝いていたということだろう。

もちろん、いまの中国は、思いついたことを考えもなしに何でもやっていたら当局から睨まれかねないやばい国の仲間入りをしてしまった。なので、著者の加筆は、日本でぼちぼち頑張りましょう、と真逆の結論に落ち着いている。わしが一番同情した論考である。

ほかに気になった論考は、土井隆義の『いまの若者にとって「個性的」とは否定の言葉である』かな。

家族とか職場とかの社会の拘束がなくなり流動化した現代では、安定した人間関係が貴重なものになってしまった。なので若者は局面、局面で周りと意識を合わせようとして孤立を防ごうとする。とはいっても、承認欲求はやっぱりあるので、仲間たちと集団でなにか価値あるものを作り出すということには積極的なんだそうだ。

いやー、こういう人たちはベンチャーとかスタートアップとかにぴったりの性質じゃないですか? 日本にも人材供給の面からようやくベンチャーの時代が来たのだと思いたい。

あと、畠山勝太の『日本人が大好きな「ハーバード式・シリコンバレー式教育」の歪みと闇』もちょっといいかな。

こういうアメリカの最高の教育は、低所得者の黒人やヒスパニックを徹底的に排除して、富裕層のために特化した教育を行っているからで、これを日本全体でやるには無理があるという。なぜなら、日本の平均所得は、アメリカで最低のミシシッピ州の所得よりも低いからで(ああ(;_;))、ようするに日本は貧乏なのである。貧しいけれど、平等なのが日本の教育なのでした。

まあ、分かっちゃいるけど、なんだかなあ。

★★★☆☆

 

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