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奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語

三崎律日 KADOKAWA 2019.8.23
読書日:2023.8.23

ニコニコ動画で配信した「世界の奇書をゆっくり解説」をまとめた、世界の奇書に関する本。

副題の通り、歴史を動かした本から、これも奇書?というような本も含まれている。たとえばコペルニクスの「天体の回転について」とか。ジュール・ベルヌの「月世界旅行」も後世に与えた影響がむちゃくちゃ大きかったということで紹介されている。これらって奇書なのかしら。有名なフェイク文献群である「椿井文書」も含まれている。

まあ、こういうのもあるけど、個人的にすごく気に入ったのは、ヘンリー・ダガーが書いた1万5000ページの小説「非現実の王国で」だなあ。なにしろ低収入の病院の清掃員をしながら死ぬまで延々と書き続けたというのだから。世界でもっとも長い小説で、いまだに全巻出版されたことがないのだそうだ。実際には30歳中頃には書き上げてしまっていて、残りは挿絵を自分で描いていたんだとか。本編はともかく、画集の方は出版されている。

この話を聞いてすぐに思い浮かんだのが、フランスの「シュヴァルの理想宮」の話。郵便配達人のシュヴァルがあるとき宮殿を作ることを思いついて、生涯をかけて延々とDIYで宮殿を作り続けた話。本も出ているけど、映画化もされているらしい。(へんてこりんな形の石につまずいたのがきっかけなんだけど、それがなんで宮殿に結びつくのか、不思議)。

どっちも低いながら安定した収入を得ていたということろが似ている。生きていけて、むちゃくちゃ長い時間をかけることができるのなら、人は自分の好きな幻想の世界で一生生きていけるのだ。

こういうのがいいよね。なにしろ、人生は長いからね。一生を通じてやることを見つけるというのは、最高の幸福でしょう。たとえだれからも認められなくてもね。

他には、ピエール・ルイスが書いたフェイク詩集の「ビリティスの歌」が面白かった。レスビアンの語源となったレスボス島で、やっぱりレスビアンの快楽に溺れたひとの詩集だそうだけど、これがフェイクとはねえ。

★★★☆☆

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