秋満吉彦 幻冬舎新書 2023.5.30
読書日:2023.8.21
NHK Eテレの「100分de名著」のプロデューサーが、名著には現代に通じる視点があり、生きていくための参考になると主張するとともに、企画を進めていくためのコツのあれこれを述べた本。
「100分de名著」は毎週見ているので、読んでみようかと思ったのです。名著に予知能力があるというのは別に異論はありませんし、そもそもそういう本でないとこの番組で取り上げる意味はないでしょう。番組ではわしが聞いたことがないような本が出てくることがあり、番組で取り上げられたので読んでみようと思った本もけっこうあります。この番組で取り上げられるとたちまち図書館の予約がたくさん付いていたりして、困惑することも多いのですが。
秋満さんによると予算が少ないので、外注もなかなかできず、企画はプロデューサーの負担がかなり大きいようです。一人でやっていると、視点が固定化され、似たような作品が多くなるのが悩みだそうで、そんなときにやるのは、本棚の並び替えだそうです。本棚に入っている本を並び替えると、思いがけない繋がりが見つかり、新しい視点が得られて、番組で取り上げるための切り口が見つかるのだそうです。まあ、実物の本を所有しない方針のわしには使えない技法ですなあ。
だいたい1年ぐらい前に企画を立ち上げるのだそうで、そうすると放映予定の1年後に取り上げてもインパクトが有るかどうかを予測するのがなかなか難しい。でも、けっこう見込み通りに社会が動いているらしく、わしの目からも、インパクトを与えられているように見えるなあ。
解説者の発掘も大変なようで、あちこちで開かれているトークショーや講演会へ足しげく通って発掘するのだそう。年間50回は通っているそうだ。そうして発掘した解説者に合わせて本を選ぶこともあるのだという。
なるほど大変だなあ。
秋満さんは、ガンダム世代で、大のSFファンなんだそうだ。小松左京の特集はそのせいなんだとか。
わしも未来を知りたいという欲求が読書の動機になっているから、「100分de名著」の選択には大いに共感する。ぜひとも今後も頑張ってもらいたい。
しかし不満があるとすれば、科学系の本が少なすぎるんじゃないか? アインシュタインの相対性理論、ファーブル昆虫記ぐらいか? もっとたくさん取り上げてほしいね。
科学技術の哲学でもいいよ。ポパーとかさ。
SFで取り上げたのは「ソラリス」と「華氏451度」、小松左京特集ぐらいか。まあ、1年で10作品ぐらいだから、こんなもんですかねえ。
★★★★☆