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世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道

荒木博行 日経BP 2021.10.18
読書日:2022.2.6

会社のプロジェクトが失敗するのはなぜか、有名な失敗例からそれをさぐり、成功への近道を示す本。

という触れ込みなので読んでみたが、これは確かに失敗したけど本当に失敗なの?というものがほとんどだった。事前にそのリスクは分かっていたとしてもやっぱり実行したんじゃないか、という気がするものばかりだ。それにたいていは再チャレンジで成功している。

企業の場合、チャレンジし続けないと停滞してしまうから、チャレンジしないほうがリスクが高い。だからこれはしょうがないんじゃないのかなあ。失敗は織り込み済みでプロジェクトを進めるしかないんじゃないの?

やってはいけないことをひとつあげるとすると、そのプロジェクトに社運をかけてしまう、ということだろう。リスクの高いプロジェクトに社運をかけると本当に会社がなくなってしまうことになる。そうなると失敗を活かす道も閉ざされる。ドリームキャストで会社が傾いたセガがその例だ。失敗しても再起できるようにしておくのがコツだ。投資と同じである。

ではひとつだけ失敗例を見てみよう。

この本で最初に取り上げられているのは2017年発売のアマゾンのファイアフォン。これは普通のスマホではなくて、世の中にある商品(ほとんどの物は商品だ)を認識すると、すぐにアマゾンで注文できるというものだ。表示にも特徴があって、フロント側にユーザーの顔の位置を検出するカメラが四隅についていて、それによって見る方向により画像が変わり、3D表示ができるようになっている。

もちろん目的はユーザーのショッピング体験を劇的に変えるため。検索する手間すら省いてすぐに注文できる。「電話もできる携帯レジ端末」と言われたという。

鳴り物入りで199ドルで売り出したがまったく売れず、たった2ヶ月で99セント(100円!)に値下げしたが、それでも売れず、アマゾンプライム1年分をつけても売れなかった。それで1年後にはプロジェクトは終了したそうです。

ではなぜ失敗したか。

この本によれば、スマホでユーザーがしたいことはいっぱいあって、買い物だけがしたいわけではなかった、ということなのだという。つまり写真や動画を撮って編集したり、ゲームをしたり、SNSしたり、いろいろしたいのであって、買い物はごく一部の機能に過ぎなかった。

それに当時のスマホに関するユーザーの不満は、通信料金の高さや電池の持ち時間などで、買い物がしにくいということではなかった。なのでショッピング体験の改善は買い換える動機にはならなかったのだそうだ。

つまりユーザーの本当のニーズをつかめていなかった、というのが敗因だそうだ。自社の構想とユーザー視点のバランスを取ることの難しさ、ということを述べている。この失敗にめげずに、アマゾンは次にエコーなどを発売して成功を収めている。

これは失敗とは言えないよね。だいいち失敗しても、アマゾンの業績にはまったく影響がなかったんだから。

わしなんか今でもファイアフォンを発売してくれないかなあ、と思っている。わしはアマゾンのファイアタブレットを7インチ、8インチ、10インチと3つも持っているが大変満足している。性能はそこそこだが、なにより頑丈で壊れにくく、低消費電力で、安い。わしの持っている7インチは世代としては最初期型なんじゃないかと思うが、いまだに使えて現役だ。わしは主に外出時にファイアタブレットを持ちあるいて、これでほとんどの作業をしている。ノートパソコンはほぼ持っていかない。(こちら参照)。わしが求めるのはファイアタブレットの単純なスマホ版だ。安くて長持ちするスマホがほしい。3D表示なんていらないから。

スマホの進化が落ち着いて、1、2年で買い替えるような風潮がなくなると、また売り出してくれるのではないかなあと期待している。でも、Wi-Fiタブレットは世界共通仕様でもいいけど、スマホは各国の通信規制に準拠しなくてはならず、コスト的に厳しくなるだろうから、やっぱり無理かもね。

まあ、失敗例としてはこういうやっていい失敗、あるいは自社ではいかんともし難い環境変化に見舞われた場合がほとんどだけど、読んでいて面白かった。

★★★★☆

 

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