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超加速経済アフリカ LEAPFRPGで変わるビジネス地図

椿進 東洋経済新報社 2021.6.10
読書日:2023.7.21

爆速的に成長しているアフリカのリアルを紹介し、日本人にアフリカでのビジネスを勧める本。

近年、最も売れたアフリカの本なんだそうだ。著者はルワンダでナッツビジネスをしていて、アフリカのリアルに詳しい。そして日本の昔からのアフリカに対する思い込みは今では正しくないとして、アフリカに進出するように勧めている。

思い込みのひとつは地理で、アフリカはなんとなくそんなに大きくないように思い込んでいるが、それはメルカトル図法による錯覚で、とんでもなく大きいのだという。実際には縦8000Km、横7400Kmでアメリカと中国とインドとヨーロッパを足したよりも大きい。なるほど、このスケール感はちょっとなかったかも。

それから気候だ。赤道に近いので暑いという印象があるが、東アフリカのルワンダ辺りは高原なので、気候は涼しく、1年中軽井沢にいるような感じなんだそうだ。

アフリカの魅力のひとつは、既得権益を持っている層がいないので、いろいろな実験が可能だというところだそうだ。いちばん有名なのは携帯電話が銀行代わりになっている、MーPESAだろう。日本がまだ電子決済で普及し始めた段階なのに、アフリカではスマホ以前にすでに携帯電話で金融関係は何でも決済も送金も可能になっている。というわけで、携帯電話の普及率は100%を超えている。

他にもドローンを使った血液や薬の配送とか、AIを使った遠隔診療とか、日本でなかなか進まないものが、どんどん実用化されている。これらはもともとの既得権益を持つ層がいなくて、このような課題を解決することが求められているからこそ普及する。こういう新しいビジネスの実験ができるところがアフリカのいいところなのだという。LEAPFROG(カエル跳び)と言われるゆえんだ。

面白いと思ったのは、ウーバーだ。アフリカは公共交通は発展途上だが、ウーバーが普及しているので、昔に比べて交通は格段に便利になっているのだそうだ。安い上に、昔のようなボッタクリというものも不可能なので、非常に快適なのだという。なるほどねえ。もちろん公共交通機関の充実は必要なのだが、それには数10年という長い月日がかかる。でもそれを待たなくても、現状ですでにとても良くなっているのだ。

アフリカは格差が大きいところだが、椿さんの良いところは、このようないろんな階層の人々の暮らしを実際に見せてもらって、調べているところだ。すると、1日200円くらいの稼ぎしかない家でも、ガスコンロも使っているし、それなりに豊かだということが分かる。単に現金収入が少ないだけで、自給自足で住むところもあるから、意外に豊かなんだそうだ。住むところもないという先進国の貧しさとは違う。

日本もかつてはアフリカでそれなりの存在感を示していたが、30年の停滞時期にすっかり存在感がなくなった。

日本の代わりにまず来たのは韓国のサムスンで、サムスンのすごかったのは、駐在するひとはその国に骨をうずめることを求められていて、日本のような腰掛けの駐在では彼らに対抗できないのだそうだ。そのくらいの覚悟なので、サムスンではアフリカの事情に合った製品が作られているという。例えば、冷蔵庫は保冷剤付きだそうで、アフリカでは停電になることが多いので、保冷剤付きであれば停電になってから10時間ぐらいは冷蔵が続くという、アフリカの人には嬉しい機能がついている。

もちろん、韓国の次に来たのは中国で、中国は資源とインフラを中心にアフリカの深いところに食い込んでいる。しかし、日本にもまだチャンスはあると椿さんは力説する。

日本の企業で成功している例としては、カネカと味の素があるという。アフリカの女性は化粧よりも髪にお金を使うそうで、カネカは髪のイクステンション市場の8割を押さえているという。カネカが好まれているのは、難燃性だからだそうだ。確かに髪が燃えたら命に関わる。

日本人の個人でも成功している例があるという。ルワンダで最も成功した外食チェーン「アジアンキッチン」を作ったのは、元リクルートのシングルマザーである唐渡千紗さんだそうだ。彼女は外食産業の経験がないのに成功したという。それは日本では当たり前のことがルワンダでは当たり前ではないからで、従業員をきちんと教育して、サービスが良いレストランを作ることで成功したのだそうだ。もちろん、外食すらしたことのない従業員を教育するのは大変だが、唐渡さんはクレドを作り、毎日、朝礼をしてクレドを徹底させたのだそうだ。つまり、日本で当たり前と思っていることを実行するだけで、アフリカでは成功する可能性があるのだということだ。

うーん、なるほど。なんかルワンダに行ってみたい気がしてきた。わしってものすごく単純(笑)。

なにしろ2000年代の初めに元気だった中国に行き損ねたことを、わしは未だに悔やんでいるからなあ。でも中国はお隣の国で近いけど、アフリカはちょっと遠いよね。中東経由になるみたいだけど、わしは中東にも行ったことないからねえ。それでも、アフリカへは行ってみるべきかも。椿さんも言っているように、なんと言ってもアフリカは人類発祥の地だからねえ。

★★★★☆

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